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改正労働派遣法が平成27年9月30日に施行されて、すでに2年が経過しました。ここでもう一度、改正されたポイントをおさらいすることは労務担当者としてミスをなくすためにも大切だと言えます。順を追って解説していきましょう。
目次
改正法では、従来の特定労働者派遣事業・一般労働者派遣事業という区別が廃止され、すべての労働者派遣事業は新たな許可基準に基づく許可制へと一本化されました。施行後の経過措置として、次の3つのケースを例に確認しましょう。
平成30年9月29日まで、引き続き特定労働者派遣事業を営むことができます。
現在の許可の有効期限内までは特に変更なく、一般労働者派遣事業を営むことができます。
施行日時点に決定がなされていないものに関しては、改正後の法律に基づく申請として扱われます。よって、施行日後に改めて申請を行う必要はありません。
また、冒頭でも述べましたとおり、許可制へと一本化されたことによって、労働者派遣事業に新たな許可基準が設けられました。そのなかでも注目すべきは、派遣労働者のキャリア形成支援制度を有していなければならない点です。
これまで派遣期間が終了すると、次の職場へ派遣されるというサイクルで働いており、派遣労働者の長期的なキャリア形成を行うことは簡単ではありませんでした。しかし、改正法では派遣労働者のキャリア形成を目的に、段階的かつ体系的な訓練の実施計画が定められています。
労働者派遣に関して期間制限の見直しが行われたことにより、派遣元事業主が同一の派遣先に派遣できる期間について、原則3年が限度となりました。この3年を超えて派遣を継続する場合は、派遣先の過半数労働組合等から意見を聴取しなければなりません。
同一の労働者の派遣に関しても限度は原則として3年ですが、同じ労働者を別の部署に派遣するのであれば、引き続き同じ派遣先に派遣することはできます。ここで注意して欲しいのは、同じ課内に派遣して別の業務を担当するというのは認められていないという点です。あくまでも、別の部署等に派遣する場合となります。
なお、経過措置として改正前に締結された派遣契約に関しては、改正法が適用されず改正前の期間制限が適用されます。そして、次の場合は例外として期間制限は設けられていません。
最初の項目で述べたとおり、改正法では派遣元事業主が派遣労働者のキャリアアップを行うことが定められ、キャリア形成支援にあたっては教育訓練計画を立てたうえで行わなければなりません。この教育訓練計画を策定する際は以下の点に注意しましょう。
また、登録型派遣や日雇派遣の場合でも、段階的かつ体系的な教育訓練等は、労働契約が締結された状況で実施する必要があるとされています。
派遣労働者と、同種の業務に従事する派遣先の労働者との間において、待遇に均衡を図るため派遣元事業主と派遣先にそれぞれ責務が課されることになりました。派遣元事業主が行うべき具体的な責務は以下のとおりです。
一方、派遣先が行うべき責務としては以下のものがあげられます。
これらは派遣労働者が気持ち良く、不満を抱えることなく働けるように派遣元事業主と派遣先へ新たに課せられた措置です。
最後に、派遣先にも大きくかかわる「労働契約申し込みみなし制度」について解説します。この制度は、下記の「違法派遣」を派遣先が受け入れた場合、受け入れた時点で派遣労働者に対して派遣事業元と同じ労働条件で直接の労働契約を申し込んだ、とされるものです。
ただし、派遣先が違法派遣に該当することを知らず、かつ知らなかったことに過失がなかった場合は除きます。この「労働契約申込みみなし制度」についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。(https://romsearch.officestation.jp/jinjiroumu/haken/318)
今回は労働者派遣法の改正事項を改めて確認してきました。派遣労働者にとって法改正後は自身のキャリアを築いていける可能性が高まるほか、より働きやすくなったことでしょう。
一方、派遣元事業主や派遣先にとっては期間制限の設定や「労働契約申込みみなし制度」といった、注意しなければいけない項目がいくつかあります。労務担当者はぜひ、今回おさらいしたことを中心に改正事項を復習するようにしてください。
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