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過労死防止大綱とは?変更内容と見直しを踏まえた企業側の対策を解説

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人事労務管理職場づくり(環境改善)

仕事で過重な負荷がかかることによって起こる「過労死」は、日本が抱える社会問題のひとつです。
この過労死をゼロにするために作られたのが、過労死防止大綱です。
今回は、過労死防止大綱の概要から、2018年の過労死防止大綱見直しに伴う変更点、さらに企業が行う対策などについて解説します。

【引用】過労死等の防止のための対策に関する大綱
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/30_TAIKOU_HOUDOU_BETTEN2.pdf

過労死防止大綱とは

過労死防止大綱は、正式には「過労死等の防止のための対策に関する大綱」といい、2015年7月の閣議で決定されました。
過労死防止大綱には、長時間労働の削減やワークライフバランスの確保など、過労死を防ぐための対策などが記載されています。

この過労死防止大綱は、2018年7月24日の閣議で見直しがされています。
見直し前の段階では、過労死防止に向けた対策を行ううえで、以下のような課題を抱えていました。

  • 週労働時間が60時間以上の人の割合は減少傾向にあるものの、依然として10%を超えている
  • 勤務間インターバル制度の導入の予定はなく、検討もしていない企業が92.9%となっている
  • 勤務間インターバル制度の導入の予定はなく、検討もしていない企業のうち、当該制度を知らなかった企業が40.2%となっている
  • 有給休暇取得率は微増しているものの、2016年で49.4%と、近年5割を下回る水準で推移している

このような課題を背景として、過労死防止大綱の見直しが行われました。

「過労死等」の定義・意味

過労死防止大綱には「過労死等」という言葉が使われていますが、これには以下のような意味合いが含まれています。(過労死等防止対策推進法第2条)

  • 業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
  • 業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
  • 死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害

【引用】過労死等防止対策-厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000053725.html

つまり過労死等とは、業務で過度な負荷がかかることで起こる、脳や心臓の疾患、精神障害などを原因とする死亡および疾患のことです。

対策の目的

過労死は、1980年代になって注目を集めるようになった社会問題であり、日本だけでなく世界的にも「karoshi」として知られています。
近年ニュースなどで過労死の問題が報道されることが少なくなく、その度に劣悪な労働環境の存在が明らかにされています。
過労死は、人権を侵害するような問題といっても過言ではありません。
過労死防止大綱は、このような問題をなくし、健康で働き続けられる社会の実現を目的としています。

見直しに伴う変更内容

続いては、過労死防止大綱の見直しの内容について解説します。

具体的な数値目標

将来的な過労死ゼロを目指して、以下の項目に関して目標とする数値および達成期限を設定しています。

  • 労働時間
  • 勤務間インターバル制度
  • 有給休暇
  • メンタルヘルス対策

具体的には以下のとおりです。

達成期限:2020年まで

  • 1週間の労働時間が60時間以上の人の割合を5%以下にする
  • 勤務間インターバル制度について、労働者30人以上の企業のうち、
  • (1)制度を知らない企業の割合を20%未満にする

    (2)制度を導入している企業の割合を10%以上にする

  • 有給休暇の取得率を70%以上にする

達成期限:2022年まで

  • メンタルヘルスの対策に取り組む事業場の割合を80%以上にする
  • 仕事の悩みや不安に関する相談先が職場にある人の割合を90%以上にする
  • ストレスチェックの結果を集団分析し、その結果を活用している事業場の割合を60%以上にする

国が取り組む対策

過労死防止大綱では国が取り組む対策に関しても見直しが行われています。

労働行政機関などの対策

労働行政機関には、長時間労働の削減や過重労働に伴う健康障害の防止、有給休暇の取得促進、メンタルヘルスに関する予防およびハラスメント防止の推進などに向けた取り組みが求められています。

中でも、以下の3点は、重点的に取り組むものとされています。

  • 長時間労働の削減に向けた取り組み
  • ・過重労働の疑いのある企業等に対する監督指導を徹底

    ・「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を踏まえ、労働時間の把握について指導

    ・地方公務員の勤務条件について、過重労働の疑いがある場合は人事委員会等が監督指導を徹底

  • 過重労働に伴う健康障害の防止対策
  • ・「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置」について、周知指導を徹底

    ・過労死等のリスクが高い状況にある労働者を見逃さないための産業医による面接指導等の確実な実施

  • メンタルヘルス対策、ハラスメント防止対策
  • ・傘下事業場においておおむね3年程度の期間に精神障害に関する労災支給決定(認定)が2件以上行われた場合は、本社事業場に対しメンタルヘルス対策にかかる指導を実施

    ・過労死等に結びつきかねないハラスメント事案が生じた事業所に対し、再発防止のための取り組みを指導

調査・分析・研究

過労死等に関する各種調査、分析、研究に関する取り組みの必要性についても過労死防止大綱で触れられています。

具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

  • 過労死等に関する労災支給事案等や公務災害認定事案に関する調査・分析
  • 過労死等のリスク要因を明らかにする疫学研究
  • 過労死等の多い重点業種の企業や労働者に関する継続的な調査の実施

また、これらの調査、分析、研究の結果は、国が白書や各種ホームページで情報提供をします。

周知・啓発

国は、労働者や学生、企業などに対して各種情報の周知および啓発を行う必要があります。
たとえば、以下のような内容があります。

  • 国民に向けたシンポジウムの実施など各種周知・啓発
  • 大学生・高校生に向けた労働条件などに関する啓発
  • 長時間労働の削減のためのガイドラインや時間外労働の限度などの周知・啓発
  • 助成金の周知などを通して勤務間インターバル制度の推進
  • メンタルヘルス対策に関する総合的な情報の周知・啓発
  • 職場における各種ハラスメントの予防・解決に向けた対策や関係法令の周知・啓発

相談体制の整備・研修の実施

過労死防止大綱では、国には過重な労働や精神的な苦痛を受けている労働者に対する相談体制を整える必要性があることが記載されています。

具体的には、以下のような対策が挙げられます。

  • 労働条件や健康管理の問題を抱えている労働者に対して、メールや電話、さらにはSNSの相談窓口を設置する
  • 労働者からの相談に対して各都道府県の労働局が迅速に対応する
  • 相談窓口は、一般企業だけでなく公務員が利用できるものも整備する
  • 産業保健スタッフや人事労務担当者が、産業保健総合支援センターなどでメンタルヘルスなどに関する研修を受ける

民間団体の活動への支援

過労死等の防止対策は民間団体などでも行われます。
国はそのような対策を行う民間団体の活動に対し、各種支援を実施することが求められます。
具体的には、「過労死等防止対策推進シンポジウム」のようなシンポジウムの開催や、「過労死遺児交流会」のようなイベントの開催、民間団体の活動内容の周知などがあります。

過労死防止大綱を踏まえた企業側の対応

企業は過労死防止大綱をもとに過労死等の防止に取り組まなければなりません。
続いては、企業側がすべき対応について解説します。

【関連】過労死等防止対策推進法が求める事業主の責務と過労死防止対策のトレンド

トップダウンでの取り組み推進

過労死等の防止は、従業員が個人でできるものではありません。
会社全体で取り組まなければならない課題であるため、経営幹部により、トップダウンで取り組みを推進する必要があります。

たとえば、部署内で有給休暇が取得しにくい場合や残業が多い場合などは、現状を聞き取り、原因を究明し、有休取得や残業削減を推進することで、働きやすい環境が作れるでしょう。
過労死等の防止のためには、経営幹部が「過労死等を発生させない」という強い意志を示し、全社的に取り組んでいくことが大切です。

産業保健スタッフの活用

体に異変をきたしている従業員や、不安や悩みによってメンタルが弱っている従業員などに対して、産業保健スタッフを活用し、相談先を用意することが有効です。
産業保健スタッフを設置する場合は、従業員に対して周知徹底し、せっかくの取り組みが形骸化しないようにしましょう。
現時点で産業医がいない企業は、産業保健総合支援センターを活用し、体制の整備を図ることが有効です。

【関連】産業医の機能強化!働き方改革による変更点や企業の対処方法を紹介

従業員の労働時間の管理

過労死等の防止のためには、長時間労働の削減に加え、休みを確保することが重要です。
そのため、企業側は従業員の労働時間を把握・管理する必要があります。
労働時間の把握・管理にあたっては、タイムカードやICカードなど客観的な情報によって確認し、必要に応じて指導を行うようにしましょう。

【関連】2019年4月法改正で労働時間の把握が義務化|管理ポイントは?

また、労働時間の管理に加え、職場環境や勤務体制から、どのような過労死等の発生要因があるのか把握することも重要です。

企業としての対策まとめ

  • 過労死防止大綱が2018年7月に見直しが行われたことにより、既存の目標に加え、新たに具体的な数値目標が設定された。
  • 企業は、産業保健スタッフの活用を図るよう努めると共に、労働時間の把握・管理を行う必要がある。
ソビア社会保険労務士事務所 代表社労士/ホワイト財団 代表理事|五味田 匡功

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