労務SEARCH > 人事労務管理 > 人事労務管理の業務/手続き > インボイス制度をわかりやすく解説|事業者登録・発行方法も網羅

インボイス制度をわかりやすく解説|事業者登録・発行方法も網羅

この記事をシェアする

2016年の税制改正において、正確な消費税額と消費税率を把握することを主な目的としてインボイス制度の導入が決まりました。

インボイス制度の導入にはメリットもある一方で、企業に大きな影響を与えることも想定されています。

そのため、インボイス制度についてよく理解したうえで、入念に対策を講じておくことが重要です。

本記事では、インボイス制度の概要やメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。

監修者
労務 SEARCH

労務SEARCH(サーチ)は、労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディアサイトです。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。

インボイス制度の概要をわかりやすく解説

インボイス制度の概要をわかりやすく解説

まずはインボイス制度の概要や導入の目的について解説します。

インボイス制度の概要をわかりやすく解説

  • インボイス制度とは
  • 適格請求書の記載項目
  • インボイス制度はなんのために導入されるのか

インボイス制度とは

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、適用税率や消費税額などの要件を記載した「適格請求書(インボイス)」を発行・保存する制度です。

インボイス制度の導入後は、適格請求書を発行・保存しなければ消費税の仕入税額控除を受けられません。

インボイス制度の導入は2016年の税制改正で決定され、2023年10月より開始が予定されています。

また、インボイス制度の導入後に適格請求書を発行するためには、「適格請求書発行事業者」に登録する必要があります。

適格請求書の記載項目

適格請求書の記載項目は以下のとおりです。

従来の請求書から追加された項目は、「登録番号」「適用税率」「税率ごとに区分した消費税額等」となります。

また、不特定多数の者に対して請求書を発行しなければならない一部の業種では、適格請求書に代えて「適格簡易請求書」を発行することが許可されています。

適格簡易請求書では、「税率ごとに区分した消費税額等」と「適用税率」は、どちらか一方のみを記載するだけで問題ありません。

インボイス制度はなんのために導入されるのか

インボイス制度の導入は、正確な消費税額と消費税率を把握することを目的としています。

日本では2019年10月より、消費税の軽減税率が導入されました。

そのため、取引において8%と10%の2種類の消費税が混在するようになりました。

そこで消費税額と消費税率を明記する適格簡易請求書を発行・保存することで、不正や記載ミスを防止しています。

インボイス制度導入によるメリット

インボイス制度の導入によるメリットは以下のとおりです。

インボイス制度導入によるメリット

  • 電子インボイスを導入できる
  • 消費税額を正確に計算できる

電子インボイスを導入できる

電子インボイスとは、適格請求書を電子化したものです。

インボイス制度の導入後は、適格請求書発行事業者であれば電子インボイスの発行・保存が認められます。

電子インボイスを導入することで、これまで郵送・印刷にかかっていたコストを削減し、業務の効率化を図れます。

また、請求書を紙で保存する必要がなくなることも、電子インボイスの導入によるメリットのひとつです。

消費税額を正確に計算できる

インボイス制度の導入によって使用される適格簡易請求書では、消費税額と消費税率を明記します。

これまでは軽減税率が導入されたことにより、消費税額の計算ミスがよく起きていました。

消費税額の計算ミスは、自社の信頼の低下を招きかねません。

しかし、消費税額と消費税率を明記することによって、今後は消費税額の計算をより正確におこなえます。

インボイス制度導入によるデメリット

インボイス制度の導入によるデメリットは以下のとおりです。

インボイス制度導入によるデメリット

  • 新たな経理作業が発生する
  • 仕入税額控除を受けられない場合がある

新たな経理作業が発生する

インボイス制度の導入後は、新しい様式の請求書を作成しなければなりません。

また、送られてきた請求書が適格簡易請求書かどうかを確認する作業も必要です。

これまでになかった新たな経理作業が発生するため、経理部門の負担が増加することが考えられます。

あらかじめ経理部門への負担を想定したうえで、適切な対策を講じておきましょう。

仕入税額控除を受けられない場合がある

インボイス制度の導入後は、適格請求書を発行・保存しなければ消費税の仕入税額控除を受けられません。

適格請求書を発行するためには適格請求書発行事業者に登録する必要があります。

しかし、適格請求書発行事業者になるためには、消費税課税事業者(選択)届出書の提出が必要です。提出しない場合は、免税事業者として仕事しなければなりません。

そのため、免税事業者と取引する場合は仕入税額控除が受けられず、消費税の負担が増加します。

インボイスを発行する方法

インボイスを発行する方法

ここからは、消費税の仕入税額控除を受けるために必要となる、適格請求書(インボイス)発行の方法を解説します。

インボイスを発行する方法

  • 課税事業者に転換する
  • 適格請求書発行事業者に登録する

課税事業者に転換する

現在、免税事業者である場合は、まず課税事業者に転換する必要があります。

課税事業者に転換するためには、税務署に「消費税課税事業者(選択)届出書」を提出しましょう。

消費税課税事業者(選択)届出書は国税庁のWebサイトからダウンロードできます。

ただし、インボイス制度の経過措置によって、2023年10月1日から後述する適格請求書発行事業者に登録する場合は提出が免除されます。

適格請求書発行事業者に登録する

適格請求書発行事業者へ登録する際は、登録申請書を作成・提出します。

登録申請書も国税庁のWebサイトからダウンロードできます。

なお、インボイス制度の経過措置で消費税課税事業者(選択)届出書の提出免除を受けたい方は、「免税事業者の確認」の欄の上部をチェックしてください。

登録申請書の提出後、問題がなければ登録通知書が交付されます。

インボイス制度はなぜひどいと言われるのか

インボイス制度はなぜひどいと言われるのか

インボイス制度はひどいと言われることがあります。

批判されている主な理由は以下のとおりです。

インボイス制度はなぜひどいと言われるのか

  • 個人事業主やフリーランスの負担が増加する
  • 中小事業者の倒産を招く恐れがある

個人事業主やフリーランスの負担が増加する

インボイス制度の導入は、個人事業主やフリーランスなどの免税事業者に大きな負担を招く恐れがあります。

免税事業者を選んだ場合は、個人事業主やフリーランスから適格請求書を発行できません。

そのため、仕入税額控除を受けられないことによる消費税の負担を避けるために、取引先が免税事業者との取引を中止する可能性があります。

また、適格請求書発行事業者に登録するため課税事業者に転換した場合は、これまで免除されていた消費税の納税義務が発生します。

どちらにしても免税事業者の個人事業主やフリーランスにとっては大きな負担となるため、インボイス制度はひどいと言われることが多いようです。

中小事業者の倒産を招く恐れがある

上述のとおり、個人事業主やフリーランスを含む中小事業者はインボイス制度の導入によって負担が増大し、最悪の場合倒産を招く恐れがあります。

なお、免税事業者の負担を軽減するために、政府はインボイス制度の経過措置を設けています。

免税事業者からの仕入れでも、制度開始後6年間のうち、2023年10月1日から3年間は80%、2026年10月1日から3年間は課税仕入れ額の50%の仕入税額控除が可能です。

また、インボイス制度に対応した補助金も設けられているため、よく確認して自社への負担をできる限り抑えましょう。

まとめ

インボイス制度の概要やメリット・デメリットについて解説しました。

インボイス制度の導入には電子インボイスを導入できることや、消費税額を正確に計算できるといったメリットがあります。

一方で、いくつかのデメリットも想定されているため、あらかじめ入念に対策を講じておくことが重要です。

まずはインボイス制度の概要をよく理解したうえで、今後の自社における対応を検討しましょう。

労務SEARCH > 人事労務管理 > 人事労務管理の業務/手続き > インボイス制度をわかりやすく解説|事業者登録・発行方法も網羅