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解雇トラブル事例に学ぶ、企業側で備えるべきこと


解雇は労使間のトラブルにおける相談事項の退職、職場内いじめと並ぶ3大相談のうちの1つです。

現状として再就職にあたり、希望の企業や職種につくことができると言い切れる状況ではないことに加え、これまで勤務してきた、解雇対象者のプライドにもかかわる問題にもなりますので、解雇をおこなう場合は、企業側もトラブルになることを常に頭に入れておく必要があります。

この点について、事例を踏まえながらご紹介いたします。

解雇の種類とルールについて

一口に「解雇」といっても、実は大きく3種類の解雇があるということをご存じでしょうか。「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」のそれぞれの違いについて、ここで確認をしておきましょう。まず、一つ目の「普通解雇」です。普通解雇は、後述の整理解雇、懲戒解雇以外の解雇のことを指します。

たとえば、「勤務成績が著しく悪く、指導を行っても改善の見込みがないとき」「健康上の理由で、長期にわたり職場復帰が見込めないとき」「著しく協調性に欠けるため業務に支障を生じさせ、改善の見込みがないとき」など、労働契約の継続が困難な事情があるときに限られて行われる解雇です。

次に、「整理解雇」です。整理解雇は、会社の経営悪化により、人員整理を行うための解雇 のことです。ただし、事業主の都合できめられるものでなく、次の4点をいずれも満たすことが必要となります。

一つ目が、「整理解雇することに客観的な必要があること」、二つ目が「解雇を回避するために最大限の努力を行ったこと」、三つ目が「解雇の対象となる人選の基準、運用が合理的に行われていること」、そして最後が「労使間で十分に協議を行ったこと」です。

最後に、「懲戒解雇」です。懲戒解雇は、従業員が極めて悪質な規律違反や非行を行ったときに懲戒処分として行うための解雇で、この解雇を行うための要件を就業規則や労働契約書に具体的に明示しておくことが必要となります。

解雇事例1 普通解雇

それでは、それぞれの解雇の種類による解雇の事例を見ていきましょう。普通解雇の事例としては、「セガ・エンタープライゼス事件(H11.10.15東京地決)」です。

この事例では、Y社に平成2年に大学院卒の正社員として採用された従業員Xが、労働能率が劣り、向上の見込みがない、積極性がない、自己中心的で協調性がない等として解雇されたことに対して、解雇を無効として地位保全・賃金仮払いの仮処分を申し立てた事例となります。

結果としてこの事例では労働者が勝訴し、「XがYの従業員として平均的な水準に達していなかったからといって、直ちに本件解雇が有効となるわけではない」ということ、そして「Yは、就業規則19条1項2号の「労働能率が劣り、向上の見込みがない」に該当するとして本件解雇を行っているが、同号に該当するといえるためには、平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能力が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならず、相対評価を前提とするものと解するのは相当でなく、右解雇事由を常に相対的に考課順位の低い者の解雇を許容するものと解することはできない」といった判断が行われました。

さらに、事業主が適切な教育を行うことで労働者の能力向上の余地はあった、という判断も下りました。

解雇事例2 整理解雇

次は、整理解雇による事例、「東洋酸素事件(S54.10.29東京高判)」です。

特定事業部門の閉鎖に伴い、管理職以外の全従業員の整理解雇が行われたという事例ですが、事業部門の閉鎖に企業運営上やむをえない合理的理由があったこと、解雇実施後に相当数の新規採用が行われたものの、大部分は被解雇者らの従前の職種と異なる職種に従事させるためであったことなどの事情によって、解雇当時閉鎖事業部門の労働者をほかに配置転換させる余力が会社にはなかったと判断され、整理解雇の「やむを得ない事業の都合」による解雇と認められた事例です。

解雇事例3 懲戒解雇

最後に、懲戒解雇の事例「日本鋼管事件(S49.03.15最二小判)」です。

Yの従業員であったXらは、昭和32年のいわゆる砂川事件に加担し、日米安全保障条約に基づく行政協定に伴う刑事特別法上の罪により逮捕、起訴されました。そして、労働協約および就業規則所定の懲戒解雇事由、「不名誉な行為をして会社の体面を著しく汚したとき」に該当するとし、Xらを懲戒解雇および諭旨解雇したという事例です。

就業規則の事由として明示されている内容であったこと、企業イメージのマイナスという事業主にとって避けたい事態となってしまったことが懲戒解雇に結びついた事例といえるでしょう。

解雇の際の会社側に求められる対応項目

以上、ここまでに「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」の3つについてと、その具体的な事例を確認してきました。ポイントをまとめてみると、解雇の基準は第3者による客観的な判断においても、解雇の必要性、やむを得ない事業の都合があること、解雇は最後の選択肢であること、就業規則等に解雇規定がきちんと定められていることが挙げられます。

さらに、解雇のトラブルをさけるためには、解雇を選択せざるを得ない状況であることをしっかりと書面で従業員に示し、説明・説得をする必要があります。また、解雇は突然行うことができるものではありません。解雇を行うときには従業員に対して、「30日前までに」解雇の予告をする必要があります。

解雇予告は口頭でも有効ですが、前述のとおり口約束では後々のトラブルの原因となります。解雇日と具体的理由を明記した「解雇通知書」を作成すると良いでしょう。また、従業員から求められた場合には、解雇理由を記載した書面を作成して本人に渡さなければならないということも覚えておきましょう。

また、予告をせず解雇する場合には「解雇予告手当」として最低30日分の平均賃金を支払う必要がありますので、このことも覚えておきましょう。

まとめ

従業員の力なくしては企業は成り立ちませんが、ときには解雇をする必要があるかもしれません。思い通りにならないからといって解雇をすぐさま言い渡せるものではなく、事業主と従業員がお互い努力をしたうえで、どうしてもという場合に行われるのが解雇です。

いずれにせよ、事業主は就業規則の確認とともに、常に法律によって定められた内容を見直していくことが重要でしょう。

加藤社会保険労務士事務所

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