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リスクマネジメントの視点から見直す、人事異動の”伝え方”とは

人事異動は通常、使用者からトップダウンという形で「発令」され、労働者への通知が行われます。労働契約上、使用者側には「人事権」という経営に欠かせない権利が認められていると解されているからです。

しかしながら、使用者の自由裁量のもと、無制限に労働者の異動を決定づけて良いわけではありません。踏まえるべき”伝え方”のルールについて、配転・出向・転籍のケースに分けて確認していきましょう。

人事権が認められる根拠と制限されるケース

そもそも人事権とは、労働者の地位や処遇に関しての決定を行うための権利です。採用から配置・異動、昇給・降給や昇格・降格など、これらの決定権は基本的に使用者側にあります。

しかし、このような権限があるからといって、労働者の地位や処遇のすべてを決められるというわけではありません。人事権はあくまで労働契約に基づくものであり、この範囲を超えての行使は認められていません。

特に注意しなければならないのは、「権利濫用法理に基づく制限」「法律などによって定められた制限」そして「労働契約(就業規則や労働協約など)によって定められた制限」です。次項で詳しく解説します。

人事権が制限される3つのケース

人事権は以下の3つのケースによって制限されています。

権利濫用法理による制限

権利濫用とは、その権利を正当な範囲を逸脱して行使してしまうことをいいます。人事権はその権利濫用が起きないよう、法律で制限されています。もし配転や出向を命じたことによって、労働者が著しく不利益を被ってしまう場合、その通知は無効となります。

法律などによって定められた制限

法律では労働者の性別や国籍、あるいは社会的身分を理由に労働条件を差別することは禁じられています。女性だから、外国人労働者だからなどという理由で、昇格の基準を他の労働者より厳しくすることなどは認められません。

労働契約によって定められた制限

人事権は、労働契約によって定められた範囲を超えて行使することはできません。就業規則や労働協約によって定められている条件は守らなければなりません。また、労働者と個別に勤務時間や勤務地などに関しての取り決めがある場合も、それを超えての命令を出すことができません。

配転が適法に行われるための2つの要件とは?

配転を適法に行うために重要になってくるのは、「労働契約上の根拠があること」「権利濫用に当たらないこと」の2つです。

労働契約上の根拠があること

配転を行うためには、配転がありうることを就業規則上で明記しておく必要があります。ただし先ほど説明したように、雇用の際に使用者と労働者の間で勤務先を限定することに対して合意がある場合、それを無視して配転を命ずることはできません。

また、この発令は業務上で労働者を配転させる必要がある場合のみ出すことができます。仮に労働者の合意や就業規則に明記していたとしても、正当な理由がなければ配転を行うことはできません。

権利濫用に当たらないこと

こちらも先ほど紹介したように、発令によって労働者が著しく不利益を被ってしまう場合、その通知は無効となります。配転の場合、これに当てはまる可能性が高いケースとしては、労働者が病気の家族を介護・看護している場合などになります。逆に単身赴任や子の転校を伴うケースでは当てはまらないことが多いなど、判断が分かれます。

出向が適法に行われるための2つの要件とは?

出向(いわゆる在籍出向)とは、元の企業とは雇用関係を残したまま、別の企業(同一の事業主ではない企業)に就労することをいいます。出向の要件は配転とよく似ており「労働契約上、出向を命じることができる」、「出向命令権の行使が権利濫用に当たらないこと」の2つです。上記で確認しておいてください。ただし、出向には配転にはない独自の注意点が必要になるので、そこはしっかりと押さえておきましょう。

出向の場合、「労務給付請求権」は出向先の会社に譲渡されます。労務給付請求権とは、簡単にいえば労働者に働いてもらうことを求めるための権利です。つまり出向になった場合、単純に労働者の働く場所が変わるだけでなく、このような権利ごと譲渡していることになります。

そのため、このような権利を譲渡する際には労働者への配慮として、本人の承諾が必要になります。ただし、出向規程(出向期間や出向先での地位、労働条件など)の内容が労働者の利益にきちんと配慮されているのであれば、個別の同意は不要とした判例があります。

「出向」と「転籍」の発令上の取扱いの違いは??

転籍(いわゆる移籍出向)とは、元の企業との労働契約関係が終了し、新たにほかの企業との労働契約を結ぶことを言います。転職と異なる点は「使用者からの命令による他企業への異動」ということになります。

しかし、基本的には、転籍には労働者の同意が必要となります。労働者にとって利益となるような規程があれば、同意は不要の出向(いわゆる在籍出向)とは違い、転籍の場合は必ず同意が必要です。また、使用者側が一方的に定められるものではありません。

まとめ

配転や出向、転籍はやはり労働者にとっても一大事です。それだけに使用者側としても、きちんとルールを把握しておき、トラブルの起きないようにしたいものです。労働者の方には、新しい環境で気持ちよく働いてもらいましょう。

4月は人の入れ替わりが激しく、ドタバタしてしまうことも多いかと思いますが、このような時期だからこそ、念入りに確認するようにしてください。

社会保険労務士事務所そやま保育経営パートナー

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