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ついつい忘れがち!人事異動にともなう諸手続とは?~雇用保険編~

人事異動は労働者にとって非常に大きな出来事です。それだけに、使用者側が行わなければならない手続きもかなり多くなります。その中でも、転勤時の雇用保険に関する手続きには注意しなければなりません。

転勤といっても、辞令を発令して労働者へ伝えておしまい、というわけではないのです。入退社によって人の入れ替わりが多いこの時期だからこそ、転勤に関する手続きをもう1度確認しておいてはいかがでしょうか。

転勤に当たって必要な手続きと必要書類とは?

労働者に転勤を命じた場合には、「雇用保険被保険者転勤届」を提出する必要があります。転勤発令の翌日から起算して10日以内に、この転勤届およびその他の書類を、転勤後の事業所の所在地を管轄する公共職業安定所に提出してください。

その他の書類としては、離職した際に雇用保険を脱退させるための「資格喪失届」などが代表的でしょう。また、「資格取得届」は提出不要です。

ほかには、労働者名簿や辞令など転勤の事実を証明するための書類、当該企業の組織図といった転勤前と転勤後の事業主が同一であることを証明するための書類などがあります。とはいえ、これらは精査する必要がある場合を除いて、省略して差し支えないものとされています。公共職業安定所の指示に従うとよいでしょう。

転勤の定義とは?転勤として取り扱う場合とは?

雇用保険において転勤とは被保険者を同一事業主のもと、ほかの事業所へと配属することをいいます。ですが、少しやっかいなことに2~3ヶ月ほどの短期間であれば転勤ではなく単なる「出張」、あるいは「駐在」となるケースもあり、出張や駐在では届出などの必要ありません。

しかし、出張のつもりで被保険者を派遣したところ、それが転勤と判断されてしまった場合、届出漏れとなりトラブルになってしまう可能性もあります。そうならないためにも、しっかりと転勤であるかないかを区別しなければなりません。

その判断が難しいときは、「辞令が交付されているか」「労働者を直接指揮する監督者に変更があったか」「給与の支払場所が変更になったか」などを総合的に判断して決定する必要があります。

建設業に従事する労働者が異動した場合の取り扱いとは

実は建設業においては、転勤の扱いが少し異なっています。というのも、建設業は現場で作業を行う労働者が多いこともあり、他の事業所で長期間にわたって就労することが日常的にあるからです。もともと建設業の労働者は、本社採用である「基幹要員」と、現場で作業を行う「現場雇用労務者」に大別されます。

そして現場雇用労務者の異動があった場合、それは転勤ではなく元の事業所を離職して、新たな事業所に改めて雇用されるという扱いになります。そのため、原則として「資格取得届」および「資格喪失届」両方の提出が必要となります。

また、こちらでも転勤か、新たな雇用かの判断が難しい場合もあるかと思います。その場合、旅費や休業手当支払いで判断しましょう。すなわち、事業所から事業所へと異動した際、その旅費や休業手当(事業所間の移動に休日が充てられていた場合)の支払いが行われた場合は転勤という扱いになるため、資格取得・喪失届いずれも提出は不要です。

しかし、支払いがない場合は先ほどお伝えしたように、新たな雇用として扱われますので資格取得・喪失届の提出が必要になります。

転勤や異動として取り扱わないケースとは?

転勤や異動というのは、あくまで同一の事業主の事業所において、所属が変わることを言います。しかし、企業の合併などによって、形式上(書面上)の事業所が変更になってしまう場合もあるでしょう。単に事業所が変わるだけならまだ良いのですが、これに伴い事業主も変更になってしまった場合、その扱いはどうなるのでしょうか。

実は、企業が合併しても事業主は同一として認められます。また、事業主の名称が変わっていても、扱いとしては同一です。書面上で事業所や事業主が変更になったとしても、今までと同じ事業主、同じ事業所で働いていることになります。

これは吸収合併や新設合併でも同様です。合併でなくても、事業を譲渡や賃貸借、分割したケースや、個人事業が法人事業に、法人事業が個人事業になった場合でも、新旧両事業に同一性が認められさえすれば、同一の事業主として認められます。

そのため、事業主の氏名・事業所名称変更に伴う手続きや、事業譲渡等により雇用関係に明確な変動が生じる場合のほか、特別な手続きは不要です。

まとめ

年度末は人の異動も多くあるかと思います。様々な書類の提出や手続きなどに追われることもあるかもしれませんが、転勤に関する書類の管理もしっかりと行っておきましょう。

特に転勤と出張・駐在の違いは、この時期でなくとも頭に入れておくべき知識だと思います。思わぬところで書類不備になってしまったということがないよう、事前にきちんと確認しておくとベターです。

社会保険労務士事務所そやま保育経営パートナー

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