労務の課題を解決するメディア労務SEARCH(サーチ)

長時間労働で労災判定!?労災の認定基準とは

現在、長時間労働による様々な問題が話題となっています。政府の「働き方改革」の動きや労働局の「カトク」(過重労働撲滅特別対策班)での調査、摘発等、ニュースで毎日登場する程注目を浴びています。しかし、実際にどれくらいの時間の労働が長時間労働とみなされ、「労災認定」される精神障害になるかというような「基本事項」をご存じない方も多いのではないでしょうか?今回は、考え方や判断基準のポイントを挙げて解説していきます。

どのような精神障害であると認定される?発病の考え方

精神障害でも、認定基準によって労災となるかどうかが変わってきます。具体的にどのような際に認定基準に合う精神障害とされるか、確認していきたいと思います。

仕事がつらくて覚せい剤や危険ドラック等に走ったときはどうなるのでしょうか?また、同じようにお酒(アルコール)で日々の辛さを紛らわせたためにアルコール依存症にかかった際は、労災と認定されるのでしょうか?

実は、上記のような精神障害は仕事の辛さが原因だとしても、労災認定基準になる精神障害からは除かれています。また、認知症や頭部外傷等による障害も同じく対象外となります。
主に、業務に関連して発病する主なものとしては、うつ病や急性ストレス障害などです。

「特別な出来事」や「出来事」となる「極度の長時間労働」とは?

次にどのような、長時間労働が精神障害を引き起こす可能性があるのか、見ていきましょう。主に発病前の概ね6か月の間に業務による強い心理的負荷が認められることを言います。長時間労働による強い心理的負荷というのは、次のようなことを指します。

「特別な出来事」とされる極度の長時間労働

特別な出来事とは、発病直前の1か月間、概ね160時間以上の時間外労働を行っていた場合をいいます。また、それより短い期間でも同程度の時間外労働を行っていた場合も当てはまります。
例えば、発病直前の3週間、概ね120時間以上の時間外労働を行っていた場合などです。このような長時間の時間外労働は、心理的負荷が強と判断されます。

「出来事」としての長時間労働

出来事とは、発病前の1か月から3か月間に長時間労働を行っていた場合をいいます。
例えば、発病直前の2か月間、連続1か月あたり概ね120時間以上の時間外労働を行った場合などです。

このような長時間労働は判断力を奪いますし、最悪の場合は自殺、過労死となる例も少なくありません。長時間労働は、労働者にうつ病などの精神障害を引き起こす要因でもあります。よって、労災認定の際に、業務による強い心理的負荷と認められる要件となります。このような状態が続いた結果により精神障害が認められた際は、労災認定の判断基準となる総合評価の判定材料となります。

ここでは、週40時間を超える労働時間を「時間外労働」とする。

パワハラやセクハラ、退職勧奨の心理的負荷強度は?

「特別な出来事」とされる長時間労働が無い場合でも、パワーハラスメントや、セクシャルハラスメントによって精神障害が発病する場合もあります。そういったとき、労災認定基準の心理的負荷強度の「強」になる条件にも一定の基準があります。

パワーハラスメントでしたら、部下に対する上司の言動が、部下の人間性を否定したり執拗に悪口を言ったりなどしていた場合や、酷い暴力を受けた場合などです。

セクシャルハラスメントでしたら、胸や腰などへの執拗な接触や、会社に相談しても全く改善されない、むしろ職場での人間関係が悪い方向へいってしまった、などという場合です。

精神障害の労災認定のフローチャートとは?

労災認定されるための基準として、心理的負荷の割合を「強」・「中」・「弱」の三段階にて判定していきます。判断の材料としては仕事以外での心理的負荷も含まれます。

労災の認定判断の流れは「精神障害の労災認定フローチャート」というものが用意されており、そちらで判定されます。認定基準の対象になる精神障害を発病していると認められなければこのフローチャートには当てはまりません。

次に業務による心理的負荷があったかどうかがチェックされ、「特別な出来事」がある場合と無い場合でも判定が違ってきます。

「特別な出来事」がある場合では、さらに業務による心理的負荷が強とされます。加えて、業務以外の心理的負荷や個体側要因によって発病したのかどうかが最終的に判断され、労災認定されるか否かが決定されます。「出来事」がある際には、他の心理的負荷の強度により総合判定されます。

心理的負荷が強に当てはまる事例とは、退職を強要される、ひどい嫌がらせやいじめ、暴行を受ける等です。

まとめ

精神障害による労災認定を受けることで、労災保険から病院にかかる費用が療養補償給付として支給されます。また、会社を休んだ期間に応じて休業補償給付が支給されます。人事労務担当者としては、従業員本人から「精神障害の労災認定がしたい」と言われると、戸惑うものだと思います。

しかし、今まで述べたようなポイントを基に、冷静に対応しましょう。まず、労災申請の様式には事業主証明欄がありますが、労災申請を行うのは従業員本人(または、代理人)です。

また、最終的に労災かどうかを判断するのは労働基準監督署です。資料収集等を出来る限り手伝うとともに、手続きを妨害したと言われないように注意しましょう!

岡 佳伸|社会保険労務士 岡 佳伸 事務所

Facebookページにぜひ「いいね」をお願いします!