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エンゲージメントとは?歴史や調査方法、施策から成功事例まで徹底解説!

更新日:

経営・戦略

「エンゲージメント(engagement)」とは、もともとマーケティング部門で使用されてきた用語で、近年では、企業経営や人事部門など、幅広い分野で活用されるようになっているビジネス用語です。今回は、人事におけるエンゲージメントの定義や調査方法、施策、成功事例を解説します。

エンゲージメントとは

エンゲージメントとは、「婚約する、結婚の約束をする」という意味でつかわれることが多い単語ですが、現在では経営用語としてもさまざまな意味で活用されています。最近では、人事領域でもエンゲージメントへの注目が高まっています。

エンゲージメントの歴史

日本の人事制度は長年、終身雇用・年功序列が採用されてきましたが、少子高齢化が進み、働き方も多様化していくなかで終身雇用・年功序列の維持が難しくなっており、能力主義や成果主義が問われる時代へと変化しています。

そのため、優秀な人材が、キャリアアップやスキルアップにつながる職場に流出するリスクが高まっており、優秀な人材の流出リスク防止の手法として、エンゲージメントに注目が高まっています。「企業と従業員が対等で、互いが成長しあう」という関係が築ければ、人材流出のリスクを最低限にとどめることが期待でき、企業の成長につながります。

人事におけるエンゲージメントの重要性

人事におけるエンゲージメントとは、従業員が企業に対する「帰属意識」や「愛社精神」、「働きがい」を意味します。従業員が企業に対してやりがいや愛着を感じ、お互いの絆を深めるために「エンゲージメント」という概念が人事領域で重要視されるようになりました。

従業員満足度との違い

エンゲージメントに似た意味に「従業員満足度」という用語があります。どちらも企業経営にとって重要な概念ですが、それぞれ意味が異なります。

エンゲージメントは、「従業員が企業に対して抱く帰属意識や愛社精神」と定義され、企業と従業員との信頼関係が築けている「状態」を指しますが、従業員満足度は、「従業員の企業への満足度」を表す「指標」です。

エンゲージメントの評価測定

人事におけるエンゲージメントの評価測定手段の多くには、「アンケート調査」が採用されています。アンケート調査の概要は以下のとおりです。

手段 頻度 設問数 回答数値
コンピューター 月1回~半年に1回 2~10問 0~10段階もしくはフリーコメント

【アンケート調査の質問例】

  • 上司や同僚は、自分を気にかけてくれている
  • 1週間の間に、仕事への内容や取り組みを褒められた、認められた
  • 職場で自分がなにを求められているか知っている

このアンケート調査の実施は比較的容易に行えるため、多くの企業が取り入れています。

パルスサーベイの実施

アンケート調査は、「パルスサーベイ(意識調査)」ともいわれ、従業員満足度調査にも用いられています。パルスサーベイは、設問一つに対して1分程度で回答ができ、短時間で終了できる点が特徴です。

また、アンケート結果をリアルタイムに把握できるため、従業員が抱えるさまざまな問題に対して迅速かつ柔軟に対応できます。たとえば、企業全体で転職リスクが高まっているとの調査結果が出れば、労働環境の整備や公正公平な人事制度の策定、福利厚生・待遇の改善といった対策を講じることができます。

エンゲージメントのKPI

エンゲージメントのアンケートには、さまざまなKPI(重要業績指標)が含まれています。主なKPIである、次の3つの指標「エンゲージメント総合指標」、「エンゲージメントレベル指標」、「エンゲージメントドライバー指標」をご紹介します。

KPIの名称 概要 設問例
エンゲージメント総合指標 従業員が現在の企業を総合的にどのように評価しているのか、総合満足度、企業に対する期待度などを把握するための指標 eNPS(従業員ロイヤルティ)がどのくらいあるか
エンゲージメントレベル指標 従業員が仕事に対して、どの程度熱意や価値、活力、仕事への意欲などを見出しているかを知るための指標 自分の仕事に熱意や価値を感じているか
エンゲージメントドライバー指標 組織とのかかわり方、職務の難易度、業務上必要な資質、業務への没頭度合など、エンゲージメントを向上させる最終的な要因となるものの指標 企業に対して貢献できているという感覚があるか

調査結果の関係性を分析

パルスサーベイによるエンゲージメントのアンケート調査結果を得たら、それぞれの調査結果を基に「因果関係」と「相関関係」を分析し、エンゲージメントと因果関係のある内容から、どのような施策が適当かを検討します。

因果関係と相関関係は、混同してとらえてしまいがちなため、誤った分析とならないように注意しましょう。たとえば、以下の図では、「転勤」と「昇進」は相関関係があるといえます。また、「昇進」と「エンゲージメント」については、因果関係があると判断できます。しかし、「転勤」と「エンゲージメント」は因果関係があるかどうかは疑問が残ります。

調査結果の関係性を分析

「転勤」と「昇進」に強い相関関係があれば、「転勤」と「エンゲージメント」にも因果関係があるように考えられますが、転勤の辞令を行えば、エンゲージメントが上昇するとは考えにくいといえます。このように誤った分析は、不適切なエンゲージメントの施策につながりかねないため、エンゲージメントの分析には注意が必要です。

分析ミスを防ぐためにも、従業員の人事情報(家族構成やキャリアプラン)や過去の調査結果(モチベーションや従業員満足度をヒアリングした結果)と組み合わせたうえで慎重に分析を行わなければなりません。

エンゲージメント向上施策

エンゲージメントを向上するための施策内容はいくつも存在し、企業文化や従業員のヒアリング結果に応じて、さまざまな形で実施されています。

価値観を尊重した働き方の提案

多様な働き方が広がる近年、企業から従業員に向けて、一人ひとりの価値観を尊重した柔軟な働き方を提案し働きやすさを実感してもらうことが、従業員の働きがいにつながっています。

時短勤務

時短勤務とは、育児・介護にかかわる従業員の1日の労働時間を短縮する制度です。少子高齢化が進む日本社会で、育児・介護を理由とした離職は企業にとって大きな痛手となっています。育児・介護と仕事を両立できるような柔軟な働き方が提案できれば、従業員の仕事への意欲も高まります。

在宅勤務・テレワーク

在宅勤務とは、自宅で働きながら企業と雇用契約・請負契約を結ぶ労働形態です。モバイル端末やインターネット通信を利用して自宅やサテライトオフィス、その他企業が認めた就労場所での勤務形態をテレワークといいます。在宅勤務・テレワークを導入することで、従業員の仕事とプライベートとの両立が期待できます。

管理職へのコーチング・1on1ミーティング

コーチングとは、相手に問いかけて傾聴し、対話を通して相手からさまざまな考え方や行動を引き出す人材育成方法です。コーチングには、自分自身で新しい気づきを導き出す、視点を広げる、考え方や行動の選択肢を増やすなどの効果があります。

また、コーチングに不可欠な1on1ミーティングは、上司と部下の1対1の個人面談を行い、部下の課題や悩み、目標を上司と共有します。上司は面談内容をフィードバックし、部下の成長を促し、お互いの理解を深めます。

エンゲージメントの向上にも、コーチングや1on1ミーティングの導入は効果的です。しかし、コーチングや1on1ミーティングが失敗する要因に、管理職自身がコーチングや1on1ミーティングの経験がないという点が挙げられます。管理職が役員クラス、人事部からコーチング・1on1ミーティングを受けることで、部下に寄り添った、効果的な施策となります。

タレントマネジメントの実施

タレントマネジメントとは、企業目標達成のために、従業員が持つスキルを分析し、能力や成果を最大限に引き出すために最適な人員配置や育成、評価、採用活動を行う人事戦略です。

タレントマネジメントの実施

タレントマネジメントを通じて、従業員が自身の成長や企業に評価されていると実感できれば、仕事への意欲や活力へとつながり、エンゲージメント向上に高い効果が得られます。

エンパワーメントの実施

エンパワーメントとは、企業の従業員一人ひとりが「能力・権限を持つ」という意味です。企業経営においては、パフォーマンスを最大化するために個人や現場に裁量権を与え、成長を促す支援活動を指します。

従業員に裁量を与えることは、結果的に個人の自立性の促進や能力開発につながるため、エンゲージメント向上にも活用できます。

360度評価の実施

360度評価とは、360度フィードバックとも呼ばれ、従来の上司が部下を評価するものではなく、同僚や部下も含めた多方向からの視点を総合的に取り入れた評価方法です。360度評価は、これまでの上司から部下への一方的な評価でなく、各方面からの多角的な視点が得られるため、コミュニケーションの強化にも役立ちます。

リーダーシップの育成

リーダーシップの育成は、多くの企業が重要な経営課題と位置付ける人材育成です。企業におけるリーダーシップとは、「指導力」や「統率力」と表現され、企業目標達成のために個人やチームに対して行動を促します。

リーダーシップを育成することで、目標達成のための明確なビジョンが生まれ、組織やチーム内で信頼関係が構築されます。また、モチベーションアップも期待できます。

エンゲージメント向上に効果的な人事施策

エンゲージメント向上には、人事による施策が欠かせません。今回はエンゲージメント向上に効果的、具体的な人事施策をご紹介します。

ガイドラインの作成

エンゲージメントの基盤となる企業理念や企業目標を従業員と共有するためには、ガイドラインの作成が効果的です。企業が従業員に期待している成果や能力を明確に提示するガイドラインは「企業が従業員になにを期待し、どうすれば会社に貢献できるか」をイメージさせ、企業が望む人材の採用にもつながります。

社内公募制度・社内FA制度の実施

社内公募制度とは、会社が公募した職種や役職に対して、応募した従業員のなかから要件に合った人材を登用する制度です。一方で、従業員自ら経歴や能力を売り込み、異動や転勤につなげる仕組みを社内FA制度といいます。

従業員自ら仕事や職種を選択できることで、従業員の主体性が高まり、モチベーション向上の効果も期待できます。ガイドラインの活用と組み合わせて運用すると、従業員は「どんな業務を経験し、実績を残せば、自分が望むキャリアパスにつながるか」というイメージをすることができます。

ピア・ボーナス

ピア・ボーナスとは、従業員同士がお互いの成果や貢献に対し、感謝のメッセージを送るとともに少額のボーナスを送りあう制度です。ピア・ボーナスは、お互いの仕事内容への理解が進み、交流や信頼関係が生まれるメリットがあります。

ピア・ボーナスの活用は、企業への帰属意識が高まり、結果的にエンゲージメントにもつながります。

職場環境の整備

エンゲージメントを向上させるには、職場環境の整備も考慮する必要があります。オフィスデザインは会社の顔であり、企業理念の象徴とも呼ばれ、社内の活性化にもつながる重要な要素といえます。

最新のオフィスデザインには、従業員同士の交流にもつながる「リフレッシュルーム」や、集中して仕事を進めたいときに利用できる「集中作業スペース」、作業効率が高い「スタンディングルーム(立ったまま会議を行えるスペース)」などがあります。ほかにも、ダーツやビリヤード台を設けた従業員の創造性を高めるオフィス空間は、気分転換を促し、豊富なアイデアが生まれるオフィスも人気です。

【参考】オフィス移転のノウハウを学ぶ あしたのオフィスJOURNAL/株式会社ボルテックス

エンゲージメントの向上に成功した伊藤忠商事株式会社

エンゲージメント率の向上に成功した企業事例として、伊藤忠商事株式会社のアクションプランをご紹介します。

同社は「働き方改革を通じた業務効率化と長時間労働の是正」を課題としており、メリハリのある働き方を推進し、総労働時間を削減することで労働生産性およびエンゲージメントの向上を目指すアプローチを行っています。

具体的な対応アプローチ例として

  • 社員の勤務状況の定期的なモニタリングを実施
  • 定期的なローテーションによる多様なキャリアパス・職務経験の付与
  • モバイルワークを活用することでの柔軟な働き方の推進

などがあります。

その結果、エンゲージメントサーベイによる「社員エンゲージメント」項目の肯定的回答率が70%以上との実績が得られました。この取り組みは、厚生労働省「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」の職業安定局長賞(奨励賞)大企業部門にも選出されました。

【参考】アクションプラン/伊藤忠商事株式会社

【参考】働きやすく生産性の高い企業・職場表彰 平成28年度/厚生労働省

まとめ

  • 人事におけるエンゲージメントとは、従業員が企業への「帰属意識」や「愛社精神」、「働きがい」を意味する
  • エンゲージメントの向上には、「パルスサーベイ」を利用したアンケート調査で得た結果を分析し、施策の検討が有効である
  • 企業から従業員に向けて、一人ひとりの価値観を尊重した柔軟な働き方を提案し、働きやすさを実感してもらうことが、エンゲージメントの向上につながる

Growthix Capital 株式会社 取締役 CSO|田坂 伸一(ホームページ:https://growthix.co.jp/

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