相談内容
投稿
エンジニアに専門業務型裁量労働制は適用できる?本人同意と対象業務の注意点
受託開発を中心とするIT企業(東京・従業員50名)で労務を担当しております。エンジニアから「打ち合わせ以外は自分のペースで働きたい」「時間ではなく成果で評価してほしい」という声が上がっており、専門業務型裁量労働制の導入を検討し始めました。ただ、対象業務にはシステムの分析・設計が含まれる一方、プログラミングのみを担当する社員は該当しないと聞き、設計から実装まで一人が担うことが多い当社でどう線引きすべきか迷っています。本人の同意が必要になったとも聞きました。導入までの手順と、みなし労働時間制でも必要となる深夜・休日労働の割増賃金や健康確保措置について、注意点をご教示ください。
おちゃっぱさんの相談
東京都/IT・インターネット
他の専門家からの回答
投稿
ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
専門業務型裁量労働制は、エンジニアであれば一律に適用できる制度ではなく、各社員が実際に従事する業務内容で判断することが重要です。
対象業務の一つに「情報処理システムの分析又は設計の業務」があります。具体的には、ユーザーのニーズ・業務を分析して処理方法を決定したり、入出力・処理手順等のシステム設計を行ったりする業務です。したがって、SEとして要件分析・基本設計等を主体的に行う社員は対象となり得ます。
一方、既に設計されたものに基づきプログラムを作成することが中心のプログラマーは、原則として「分析又は設計」には該当しません。「設計もするが実装もする」という社員については、職種名ではなく、分析・設計業務とプログラミング等の非対象業務との関係を実態から確認します。対象業務の遂行手段や時間配分について、使用者が具体的な指示をする必要がある社員にも適用できません。
導入に当たっては、過半数労働組合または過半数代表者との労使協定に、対象業務、みなし労働時間、健康・福祉確保措置、苦情処理措置、有効期間等を定め、所轄労働基準監督署へ届け出ます。
さらに2024年4月からは、対象社員本人の個別同意が必要です。同意しないことを理由とした不利益取扱いは禁止され、同意を撤回する手続も労使協定に定めなければなりません。制度概要だけでなく、適用・非適用の場合の賃金・評価制度等について十分説明したうえで、書面による同意を得る運用が適切です。
また、「裁量労働=労働時間を管理しなくてよい」という理解には注意が必要です。実労働時間にかかわらず協定で定めた時間を労働したものとみなしますが、法定休日労働や深夜(22時~翌5時)の割増賃金規定は適用されます。したがって、休日・深夜労働を把握できる勤怠管理は必要です。健康確保の観点からも、勤務状況を把握し、労使協定で定めた健康・福祉確保措置を実施します。
御社のような受託開発会社では、まずエンジニアを「SE」「プログラマー」という肩書で分けるのではなく、(1)要件定義・分析、(2)基本・詳細設計、(3)プログラミング、(4)テスト・保守運用などに業務を分解し、社員ごとに対象業務への該当性と裁量の実態を確認することをお勧めします。
特に、顧客や上司から作業時間・手順・進捗を細かく指定される受託案件では、制度との相性が悪い場合があります。「成果で評価したい」という目的だけで導入するのではなく、業務そのものに時間配分や遂行方法を本人に委ねる性質があるかを最初に確認することが重要です。
以上です。よろしくお願いいたします。

