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改正安衛法で高年齢労働者の労災防止が努力義務に、製造現場は何から始めるべき?
製造業の労務責任者です。当社は従業員約1000名で、定年後再雇用の60歳以上の社員が年々増え、現在は現場作業者の1割強を占めています。2026年4月の改正労働安全衛生法で高年齢労働者の労災防止対策が事業者の努力義務になったと知り、対応を検討中です。実際、ここ数年は段差での転倒や重量物運搬による腰痛など、ベテラン層の労災が目立ちます。ただ、努力義務と言われると、設備改善、作業配置の見直し、体力チェックや健康面談など、どこまで取り組めばよいのか線引きが分かりません。限られた予算の中で優先すべき対策の順番と、本人のプライドに配慮しながら作業転換を進める際の留意点について、一般的な考え方を教えていただけますか。
こまち77さんの相談
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ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
2026年4月1日施行の改正労働安全衛生法62条の2により、事業者には、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業管理その他の労災防止措置を講ずることが努力義務となりました。厚生労働省も新たに「高年齢者の労働災害防止のための指針」を公表しています。
「努力義務」ですので、すべての設備を直ちに更新したり、60歳以上の全員に一律の就業制限を設けたりする必要はありません。重要なのは、自社の災害実態を把握し、リスクの高いところから計画的に改善することです。
御社の場合、まず過去3~5年程度の労災・ヒヤリハットを年齢、職場、作業別に分析し、「転倒」「腰痛」「墜落・転落」「重量物取扱い」「機械へのはさまれ・巻き込まれ」等について、高年齢者にどのようなリスクが生じているかを洗い出すことをお勧めします。指針も、リスクアセスメントを行い、優先順位を決めて対策することを求めています。
優先順位としては、次のように考えるとよいでしょう。
第1順位:設備・作業環境の改善
段差の解消、床の滑り止め、手すり、照度の確保、重量物のリフト・台車利用など、「本人の注意力」に頼らず危険そのものを減らす対策を優先します。指針でも身体機能の低下を補う設備・装置の導入を最優先としています。
第2順位:作業方法・配置の見直し
重量物の取扱量、作業速度、連続作業時間、夜勤等を見直し、必要に応じて負担の小さい作業への転換や複数人作業とします。
第3順位:健康・体力状況の把握
健康診断に加え、転倒リスク等の体力チェックを活用し、本人にも自身の身体機能を認識してもらいます。ただし、結果を単純に「できる・できない」の選別に利用するのではなく、安全な作業とのマッチングに活用することが重要です。健康・体力情報の取扱いについても、本人の同意やプライバシーへの配慮が必要です。
特に注意したいのは、「60歳になったから重量物作業は禁止」といった年齢だけによる一律の配置転換を避けることです。身体能力には大きな個人差があります。本人と十分に話し合い、必要に応じて産業医等の意見も踏まえ、「能力が落ちたから外す」のではなく、「長く安全に働いてもらうための作業調整」と説明することが望ましいでしょう。指針も、業務軽減等に際して本人と十分に話し合い、了解が得られるよう努めることを示しています。
1000名規模の製造業であれば、まず安全衛生委員会で「高年齢労働者対策」を正式な議題とし、災害分析→リスクアセスメント→優先順位付け→設備・作業改善→効果検証というPDCAを毎年回す体制を作ることが、最も現実的な第一歩と考えます。
以上です。よろしくお願いいたします。