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労務・労務安全衛生
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製造現場の安全指導が「パワハラ」と言われたら?指導との線引きと対応の注意点

金属加工を中心とする工場を運営する製造業(愛知県・従業員約1000名)の労務責任者です。先日、若手作業者から「班長の指導が高圧的でつらい」との相談が寄せられました。当該班長に確認すると、プレス機まわりの危険な行動を見過ごせば重大災害につながるため、あえて強く注意しているとのことで、本人に悪意はなさそうです。安全確保のための厳しい指導は必要と考える一方、大声での叱責が続けばパワハラと評価されるおそれもあると感じています。業務上の指導とパワハラの線引きに関する一般的な考え方と、監督者に指導方法を教育する際のポイントを教えてください。

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井上 久

井上久社会保険労務士・行政書士事務所 代表

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ご質問いただきまして、ありがとうございます。
次の通り、ご回答申し上げます。
安全確保のために厳しく注意すること自体が、直ちにパワーハラスメントになるわけではありません。製造現場では、一瞬の危険行動が重大災害につながるため、必要な安全指導を躊躇しないことも重要です。
職場のパワハラは、(1)優越的な関係を背景とした言動、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、(3)就業環境が害されるもの、の3要素をすべて満たすものとされています。したがって、班長から部下への注意であっても、業務上必要かつ相当な範囲の適正な指導であれば、パワハラには該当しません。
特に、プレス機への不用意な接近、安全装置の不使用など、生命・身体に危険が迫っている場面では、「止まれ!」「手を出すな!」など瞬間的に大声で制止することには、業務上の必要性・相当性が認められやすいでしょう。
一方、危険が去った後も大声で長時間叱責する、「何回言えば分かるんだ」「向いていない」など人格・能力を否定する発言を繰り返す、他の従業員の前で必要以上に威圧・侮辱するといった行為は、安全指導という目的が正当でも、手段が相当な範囲を超え、パワハラと評価される可能性があります。
したがって、「厳しく指導したか」だけではなく、(1)危険の程度・緊急性、(2)発言内容、(3)声量・態様、(4)場所、(5)時間・回数、(6)指導後の対応などを総合して判断することが重要です。
今回、若手作業者から相談があった以上、「安全指導だから問題なし」と直ちに結論づけるのではなく、本人、班長、必要に応じて周囲の作業者から具体的な事実関係を確認してください。班長に悪意がなかったことは一事情ですが、悪意の有無だけでパワハラ該当性が決まるものではありません。
監督者教育では、例えば「危険の瞬間は短く明確に強く制止する。その後の指導は落ち着いて行う」というルールが実践的です。「危険行動そのもの」を具体的に指摘し、「なぜ危険なのか」「次からどう行動すべきか」を伝え、人格への批判はしないよう徹底します。
また、会社には労働安全衛生法上の安全確保と、パワハラ防止の双方が求められます。両者は対立するものではありません。「安全のためならどのような叱責でも許される」のではなく、「必要な安全指導を、必要な強さ・適切な方法で行う」という考え方を班長・職長等に共有することをお勧めします。
以上です。よろしくお願いいたします。

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