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ドライバーが起こした事故の修理費、本人への弁償請求や給与天引きは可能ですか
社有トラックの物損事故への対応で悩んでいます。物流会社(従業員120名、埼玉)で労務を担当しています。先日、ドライバーがバックの際に車両を建物に接触させ、修理費が数十万円かかりました。社内では「本人にも一部を負担させるべきだ」という意見があり、就業規則に弁償のルールを定めることや、修理費の一部を毎月の給与から天引きすることが検討されています。ただ、労働基準法では賃金の全額払いの原則や損害賠償額の予定の禁止があると聞きました。従業員に負担を求められる範囲や手続きの注意点について、一般的な考え方を伺えますでしょうか。
さんとてさんの相談
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1.本人への弁償請求
労働者の故意・過失によって会社に実損害が発生した場合、会社が損害賠償を請求すること自体は禁止されていません。労働基準法16条が禁止するのは、事故前に「事故1回○万円」「修理費の50%」などと賠償額をあらかじめ決めることです。実際の事故後に損害額・責任を個別に検討することは可能です。
ただし、実損害をそのまま本人負担額とはできません。最高裁「茨城石炭商事事件」(昭和51年7月8日)では、事業の性格・規模、業務内容、労働条件、勤務態度、事故態様、事故防止策、保険等による損失分散などを考慮し「損害の公平な分担」の観点から会社の請求を制限し同事件では損害の4分の1までとしました。
したがって、今回のような通常業務中のバック事故で、単純な不注意程度であれば、数十万円の修理費全額を請求するのは慎重であるべきです。故意・重過失、事故の反復、安全教育の実施状況、会社側の車両・安全管理、保険加入状況などを総合判断します。労働局は軽微な過失では請求できない場合があり、重大な過失でも公平な分担が必要との考え方を示しています。
なお、保険金で補填された部分まで二重に従業員へ請求できるとは通常考えにくく、会社に最終的に残った損害を基礎に検討すべきです。
2.就業規則での「弁償ルール」
「事故1回5万円」「修理費の30%を本人負担」などの一律ルールは労基法16条の損害賠償額の予定に該当するおそれが高く避けるべきです。
就業規則には事故時に事実関係を調査し、実損害、故意・過失の程度、安全管理状況、保険補填等を考慮して個別判断するという基本的な考え方にとどめるのが適切です。
3.給与天引き
損害賠償請求権があることと給与から天引きできることは別問題です。
労基法24条は賃金全額払いを原則としており、会社が「本人に○万円の賠償義務がある」と判断して一方的に給与と相殺することはできません。厚労省は損害賠償責任が生じる場合でも一方的な賃金控除は認められないとしています。
労使協定があれば何でも控除できるわけでもなく、厚労省は協定控除について、購買代金・社宅費等の「事理明白なもの」としています。事故賠償金を包括的に控除対象とすることはできません。
一方、最高裁「日新製鋼事件」(平成2年11月26日)は労働者が自由な意思で相殺に同意し、その自由意思を認める合理的理由が客観的に存在する場合には合意相殺を認めています。ただし、その判断は「厳格かつ慎重」に行う必要があります。
したがって、事故後に負担額・分割額を具体的に説明し、強制せず、本人が自由意思で書面同意した場合には給与から分割控除できる余地がありますが、会社から事実上強制する運用はできません。
4.ご相談のケース
ご相談のケースでは下記となります。
・修理費全額請求:避けるべきです。重大な過失等がない限り、全額転嫁は認められにくい。
・一部負担:条件付きで可能。事故原因、過失、会社の安全管理、保険補填等を個別検討する。
・毎月給与から天引き:一方的には不可。自由意思による個別の合意を慎重に確認する。
・就業規則への規定:可能。ただし一律金額・割合を定めず、個別判断型とする。
また、実務としては事故報告・本人聴取→過失程度と会社側の安全管理状況→修理額・保険金・免責額等→会社の実損害→公平な負担額、の順で検討するのが適切です。
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