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フルリモート社員が定期健康診断を受けない、会社の義務と受診時間の賃金の扱い
毎年秋に実施している定期健康診断の運用で困っており、ご相談します。東京に本社を置くIT企業(従業員50名)の労務担当です。当社は原則テレワークで、地方に居住する社員も1割ほどいるため、健診は各自が近隣の医療機関で受診し、費用を会社が精算する方式にしています。ところが毎年、締切を過ぎても未受診の社員が数名残り、督促しても「業務が忙しい」「予約が取れない」と後回しにされてしまいます。受診は本人の義務でもあると理解していますが、拒否が続く場合、会社としてどこまで求めることができるのでしょうか。また、受診に要した時間を労働時間として扱うべきか、平日の勤務時間中に中抜けして受診することを認めるべきかについても、考え方を教えてください。
おちゃっぱさんの相談
東京都/IT・インターネット
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1.会社の義務とリモート社員
労働安全衛生法66条1項、労働安全衛生規則44条により、事業者は「常時使用する労働者」に1年以内ごとに1回、定期健康診断を実施しなければなりません。テレワーク勤務者にも安全衛生法令は通常どおり適用され、厚労省のテレワークガイドラインも「必要な健康診断とその結果を受けた措置」を求めています。したがって地方在住者も対象です。
各社員が近隣の医療機関で受診し、会社が費用を精算する方式自体に問題はありません。ただし、法定健診項目を満たしていること、会社が結果を把握し、健康診断個人票を作成・5年間保存し、異常所見者について医師の意見聴取・必要な事後措置を行える体制が必要です。したがって、単なる受診案内と費用負担だけで完結する運用は不十分です。
健診費用については、昭和47年9月18日基発602号で、法が事業者に実施義務を課しているおり事業者負担とされています。
2.未受診社員への対応
労働安全衛生法66条5項は、労働者にも会社が行う健康診断を受ける義務を課しています。ただし、会社指定医を希望しない場合は、別の医師による相当する健診を受け、結果を会社へ提出することができます。
したがって会社は受診を指示できます。未受診者には、理由確認→受診可能な医療機関・日程の提示→期限再設定→書面による受診指示、という段階的な対応が必要と思います。
特に「業務が忙しく受けられない」という状況を会社自身が作っているのであれば、業務量や勤務時間を調整して受診機会を確保すべきです。「予約が取れない」場合も期限延長や別医療機関の利用を認めるのが良いでしょう。
正当な理由なく受診命令に従わない場合、就業規則上の根拠があれば注意・指導や懲戒を検討し得ますが、いきなり重い懲戒処分をすることは避けるべきです。会社側が十分な受診機会を提供したか、拒否理由、過去の指導状況、処分の相当性を個別に検討する必要があります。
3.健診時間の賃金
ここは一般健康診断と特殊健康診断を分ける必要があります。
今回の通常の定期健康診断について、厚労省は「業務遂行との直接の関連において行われるものではない」とし、受診時間の賃金は当然に事業者が負担しなければならないものではなく、労使で定めるとしています。ただし、円滑な受診のため、会社が賃金を支払うことが望ましいとされています。
したがって、勤務時間中の中抜け受診を認めても法律上必ず有給にしなければならないとはいえません。会社が「健診時間は勤務扱い」とすることはもちろん可能です。
休日や勤務時間外に本人が一般健診を受けても、原則としてそれだけで時間外・休日労働になり、割増賃金が発生するわけではありません。移動時間も通常は同様です。
これに対し、法定の有害業務に伴う特殊健康診断は受診時間そのものが労働時間とされ、時間外に実施すれば割増賃金が必要です。
4.対応について
現在の「近隣医療機関で受診+会社精算」方式は問題ありません。ただし、1.法定項目を満たす健診内容を指定、2.受診期限・結果提出期限を設定、3.未受診者を管理して個別督促、4.業務都合なら勤務調整、5.健診結果の記録・5年保存、6.異常所見者について医師意見聴取・事後措置、まで会社側で管理する必要があります。
なお、常時50人以上を使用する事業場では、定期健康診断結果を所轄労基署へ遅滞なく報告する義務もあります。今回の「50名」が同一事業場の常時使用労働者数に該当するか確認が必要です。
50人以上」は会社全体ではなく原則として事業場ごとに判断します。フルリモート社員も除外されず、地方在住でも東京本社所属で本社の指揮命令・人事管理下にあれば、通常は本社の人数に含めます。したがって、各社員の所属事業場を確認し、テレワーク社員を含めて常時使用する労働者が50人以上かを確認することとなります。

