この記事でわかること・結論
- 首都直下地震とは、南関東地域を震源とするM7クラスの地震で、今後30年以内に70%の確率で発生すると言われている
- 首都直下地震が起きると都内で最大震度7が発生し、大きな被害が起きると想定
- 東京都は事業所向けに災害時の緊急情報等が届く「事業所防災リーダー」への無料登録を推奨している
この記事でわかること・結論
首都圏に甚大な被害をもたらすと危惧されている「首都直下地震」。2024年1月1日に発生した能登半島地震による被害状況を知り、防災対策の重要さを再認識した方も多いのではないでしょうか。
首都直下地震が発生した場合、東京都における死者数は6,148人に及ぶと想定されています。
この記事では、首都直下地震が起きたらどのような被害が想定されているのか。また、今から取り組むべき防災対策、東京都がおこなう企業や事業所の防災に役立つサービスについて解説します。
目次
首都直下地震とは、東京都などを含む南関東地域を震源として起こるM(マグニチュード)7クラスの巨大な直下型地震のことです。
国の地震調査研究推進本部では、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県、及び茨城県と山梨県の一部の地域のどこかを震源とするM7クラスの地震発生確率について、「今後30年以内に70%程度」と評価しています。これを一般に「首都直下地震」と呼んでいるのです。
「首都直下地震」と聞くと東京都で起きる地震のように思われがちですが、実際には南関東地域においては、いつ、どこで大規模な地震が起きてもおかしくないということです。
2022年5月、東京都は約10年ぶりに「首都直下地震等による東京の被害想定」を見直し、公表しました。このことによって、首都直下地震への注目がさらに高まっています。
東京都では、この中で、首都直下地震の類型として5つの異なる震源の地震について検証し、被害想定を行っています。
想定地震 | 規模 | 発生確率 | |
---|---|---|---|
都心南部 直下地震 |
M7.3 | 今後30年以内に70% (南関東地域におけるM7クラスの地震) |
首都中枢機能等に大きな影響を与える被害について想定 |
多摩東部 直下地震 |
多摩地域に大きな影響を与える被害について想定 | ||
都心東部 直下地震 |
都内のどこでも地震が起こりうることを示すため、震度分布を提示 | ||
都心西部 直下地震 |
|||
多摩西部 直下地震 |
上記の表の中でも、特に被害が大きくなるのが「都心南部直下地震」です。この記事では「都心南部直下地震」についての被害想定を記載しています。
都心南部直下地震が発生した場合、都内の一部地域(江東区、荒川区、江戸川区など)では最大震度7の揺れが想定されるほか、区部を中心に震度6強の範囲も広がるとされています。
震度6強以上の地震が発生した場合、立っていることができず、這わないと動けなくなります。また、固定していない家具が倒れたり、耐震性の低い木造家屋は倒壊したりする恐れがあります。
首都直下地震のなかでも最大規模の被害が想定される都心南部直下地震において、都は以下のとおり被害想定を詳しく公表しています。
最大被害想定 | |
---|---|
死者数 | 6,148人 |
負傷者 | 9万3,435人 |
建物被害(全壊・焼失) | 19万4,431棟 |
帰宅困難者 | 453万人 |
冬、夕方 風速8m/秒のケース
地震が起きたとき、想定される被害は揺れによる建物の倒壊だけではありません。首都直下地震では、火災が同時に多発し、市街地において延焼火災が引き起こると想定されています。
首都直下地震に伴う火災による被害想定は、建物被害が最大11万2,232棟、死者は最大2,482人です。つまり、東京都における想定死者数のうち約40%の方は、火災により命を落とすと予測されているのです。
そのほか、電力・上下水道・通信・ガス・交通機関などさまざまなインフラ・ライフライン等に大きな影響を及ぼすと想定されています。
首都直下地震が発生した場合、断水や停電が発生すると想定されています。地域によっては、復旧に数週間を要するでしょう。冬・夕方(風速8m/秒)の場合の被害想定は、以下のとおりです。
断水が起こると手洗いや入浴が十分にできず、下水道の被害があるとトイレも大幅に利用が制限されます。そのため、被災地は不衛生な状況になりやすく、感染症の発生・流行も懸念されます。
道路ではガレキ等による不通区間が大量に発生し、深刻な交通麻痺となることが考えられます。道路や鉄道のおおよその復旧までの動きは、下記のとおりです。
なお交通機関の寸断により、消火活動・救命救助活動・物資輸送などに支障が生じる可能性があります。港湾も被害を受けると、物流の停止や工場における生産機能の停止も予測できるでしょう。
また都心には、郊外や他県からの通勤者・通学者も多いため、平日日中に発災した場合、多くの帰宅困難者が発生することが想定されています。東京都における想定帰宅困難者数は453万人で、もし対策をしなければ、下記のような状況になることが考えられます。
発災後は多くの帰宅困難者が一斉に帰宅しようとすると、救命救助活動に支障をきたすほか、余震などが発生した際に帰宅困難者自身の安全が脅かされるなど、さまざまなリスクが生じます。
このように首都直下地震の被害想定は、非常に甚大で深刻なものです。そして地震はいつ発生するのかわかりません。
もし職場や学校などに滞在しているときに発災した場合、企業・事業所側は従業員やお客さんを守るための行動が必要です。日頃から適切な備え・防災対策をとれば、被害を大きく減らすことが可能でしょう。
しかし、具体的にどんな防災対策をすれば良いのかわからない事業所も多いようです。弊サイトでは事業所の防災対策に関するアンケート調査をおこなったところ、多くの事業所が下記のような悩みを抱えていることがわかりました。
東京都では上記のような悩みを抱える事業所向けに、災害に備えるための支援をおこなっています。
東京都がおこなう事業所向けの支援の一つに「事業所防災リーダー」というサービスがあるのをご存じでしょうか。
事業所内の防災対策を推進する人のことです。東京都では、各事業所における防災対策や消防訓練の担当者などを事業所防災リーダーに登録することを推奨しています。
登録をすることで、東京都から防災情報や発災時の災害情報が直接届きます。実際に登録をしている利用者に『事業所防災リーダーをおすすめしたい理由』を聞いてみたところ、下記のような結果になりました。
アンケート調査から、事業所防災リーダーに登録すると「平時も災害時も役立つ防災コンテンツが配信される」「東京都が発信する信頼度の高い情報が入手できる」ことがわかります。
首都直下地震が発生した場合、被害が大きいと予想される東京都における企業・店舗等は、日頃から防災対策を強化しておく必要があります。事業所防災リーダーへの登録は、その防災対策の一つとしておすすめです。
ここからは、事業所防災リーダーに登録するとどんなメリットがあるのかを、さらに詳しく見ていきましょう。
事業所防災リーダーに登録をすると、リーダーひとりずつに専用のウェブページ(オフィスページ)が用意されます。
その理由は、災害情報をより早くわかりやすく伝えて、事業所での防災対策に活用してもらうため。ページにアクセスすると、現在の重要な緊急情報・災害情報が一目でわかるようになっています。
この緊急情報はリアルタイムで配信されています。最新の災害情報を受信できる点は利用者からも評判が高く、アンケート調査では事業所防災リーダーに登録してよかった点として以下の声が挙がっています。
災害・緊急時以外の平時には、事業所防災に役立つコンテンツが配信されます。定期的に配信される「事業所防災リーダー通信」は、登録者が最もよく閲覧・活用しているコンテンツです。
事業所防災リーダー通信では、防災知識や防災に関するお知らせなどが配信されます。たとえば家具などの転倒防止方法や、火災発生時の消火器の使い方などです。
地震の揺れによる被害は建物の全壊だけではありません。家具の転倒や火災など、その他の被害が原因で命を落としたりけがをしたりするケースも考えられるでしょう。
東京都は、首都直下地震発生時の家具などの転倒・落下・移動による被害は、防止対策を実施することで減少できると発表しています。防止対策の実施率を現状の57.3%から75%まで上げれば死者数は約4割減少、100%まで上げれば死者数は約8割減少する想定です。
家具などの転倒・落下・移動の防止対策は、家庭だけでなく事業所内でもおこなうべき防災対策の一つです。オフィスや店舗の災害リスクを事前にしっかりと認識し、対策することで被害を着実に減らすことができます。
また事業所防災リーダーに登録をして、定期的に防災に関する情報を収集することで、防災意識を高めることができるでしょう。事業所防災リーダー通信のメリットとしては、以下のような声が挙がっています。
なお、定期的に配信されるコンテンツは事業所防災リーダー通信のほか、年に2回程度、防災に関する内容をわかりやすく解説した漫画もあります。これらの防災情報は、オフィスページで確認できるほか、登録したメールやLINEにも配信されます。
アンケート調査において、事業所防災リーダーに登録して得た情報を事業所内でどのように活用しているのかを聞いてみたところ「事業所内の情報共有・意識向上のために活⽤している」といった意⾒が多数集まりました。
そのほかには資料作成や防災訓練時など、具体的な場⾯で活用している方もいるようです。
災害時に正確な情報を入手できるだけではなく、平時から事業所の防災対策に生かせることにあります。
事業所防災リーダーで配信される情報は、事業所防災における情報を広く、わかりやすく掲載しています。そのため、各事業所の業種・業態、担当者の担当する領域、事業所ごとの特徴などにあわせて活用できるでしょう。
事業所防災リーダーの具体的な情報活用方法
このように事業所防災リーダーには登録するだけでさまざまなメリットがありますが、登録は無料です。PCやスマホから数分で登録を完了することができ、アンケート調査では多くの回答者が、登録方法について「簡単だった」と回答しています。
事業所防災リーダーの具体的な登録方法は、下記のとおりです。
店舗のオーナーや個人事業主の方は、自身を情報管理者として登録すれば終了です。また事業所内で複数の事業所防災リーダーを登録したい場合は、登録後に発行される専用のウェブページ(オフィスページ)から登録ができます。
事業所防災リーダーへの登録は、特設ページからたったの3ステップで完了するため、本来の業務で忙しい防災対策の担当者も手間をかけずに防災情報を取り入れることが可能です。
事業所防災リーダーのコンテンツは、今後も随時機能の拡張を予定しています。たとえば、防災教育や研修機能の追加などです。現在の利用者からは、
などを追加してほしいといった声が挙がっており、これらの声をもとに改良されれば、さらに有益なコンテンツとなることが期待できるでしょう。
M7クラスの巨大地震である首都直下地震は、今後30年以内に70%の確率で発生すると言われています。万が一発生した場合、首都中枢機能に甚大な影響を与えることが予想され、被害想定は深刻なものとなっています。
首都直下地震はいつ発生するのかわかりません。もし勤務中に地震が発生した場合、企業や店舗等は従業員などの安全確保のために、一斉帰宅の抑制など正しい判断をする必要があります。
災害による被害をなるべく抑えるために、万が一のときの災害リスクを理解し、日頃から防災対策・災害への備えをしっかりとおこないましょう。
事業所としての防災対策には、東京都が運営する「事業所防災リーダー」への登録がおすすめです。災害時に信頼できる情報を素早く入手でき、従業員の安全確保や事業継続がしやすくなることが期待できます。