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就業規則・労働条件の不利益変更手続きの注意点!個別同意は必要?合理性や要件は?

監修者: 社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー
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労働契約法において、労働契約の締結にあたり「労使対等の合意原則」がうたわれています。個々の労働条件は労働者および使用者の双方が、対等な立場での合意によって決すべきという、きわめて重要な原則です。

したがって、合意によることなく使用者から一方的に、または告知することなく、もしくは不実を告げ、就業規則を労働者の不利益に変更してはなりません。変更するためにはそれ相応の「ルール」に従う必要があります。

労働契約法第9条~変更ルールの一般原則~

企業側は、労働者と合意せずに労働条件を労働者の不利益に変更することはできないように定められています。そして、会社が一方的に労働者の不利益に就業規則を変更したとしても、社員全員の合意が得られないときについては、就業規則は適用されないようになっています。したがって、会社が社員の意見を無視して無理やり就業規則を変えようとしても、それは原則として無効ということになります。

そのため、最初に就業規則を作るときは慎重に検討しなければいけません。しかしながら、この全員合意の前提はあくまで原則であり、例外的に一定の要件を満たせば、全員と合意することなく労働者の不利益に就業規則を変更することができます。詳細は次の項で説明します。

労働契約法第10条~周知と合理性の5要件~

労働契約法第10条は、就業規則の変更により労働条件が労働者の不利益に変更される場合に、当該変更に合理性があると判断され、周知がなされる場合には、変更後の就業規則に定める労働条件が有効なものとみなされます。具体的には「労働契約の内容である労働条件が、当該変更後の就業規則に定めるところによる」という条文に表れています。

さらに、合理性の判断としては、1.労働者の受ける不利益の程度、2.労働条件の変更の必要性、3.変更後の就業規則の内容の相当性、4.労働組合等との交渉の状況、5.その他の就業規則の変更に係る事情が重要視されます。

ただし例外も存在します。労働契約において、労働者及び事業主が、就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意を得ていた部分は、労働契約法第12条(就業規則違反の労働契約)に該当する場合を除きこの限りでない、と義務付けられています。

なお、就業規則に定められている項目であっても労働条件に当てはまらないものは残念ながら第10条が適用されませんので注意が必要です。

労働契約法第12条~個別の合意がある場合~

労働契約法第12条は、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする」と定められています。

この場合は、無効となった部分については就業規則で定める基準によります。労働契約法第12条は、就業規則を下回る労働契約は、その下回る部分に関しては就業規則で定める基準まで引き上げられることを規定しています。

ただし、就業規則の内容と異なる労働条件を合意したときには、それぞれ第7条、第10条のただし書きによって、その合意が優先される仕組みになっています。しかし就業規則に定める労働条件を下回る個別の合意がある場合は、就業規則の内容に合理性を求めている第7条と第10条の規定の意義が失われ、後のトラブルにつながりかねません。

労働基準法第90条~意見聴取と労基提出も忘れずに~

労働基準法第90条では、「就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない」という規定があります。

意見聴取を行うことが重要です。就業規則を施行する前に従業員の中で代表の方に就業規則の内容を確認してもらって、その人の意見を聴くことは法律で義務付けられています。

この従業員代表は会社側が選ぶことはできません。投票、挙手などによって従業員の過半数の支持を得た人に意見聴取を行います。従業員代表は就業規則の内容を確認し、異議の有無および異議ありの場合の内容を署名または記名押印した意見書に記入する流れになっています。

そして、労働基準監督署へ書類を提出しましょう。「就業規則作成届」「従業員代表の意見書」「就業規則」をそれぞれ2部ずつ準備のうえ、提出します。賃金規程や退職金規程を作成している場合にはそれも届け出ます。

まとめ

以上が例外的に就業規則の(労働者にとっての)不利益変更が認められるためのルールです。したがって、ひとたび労働者の有益に就業規則を変更すればその不可逆性が高まるので、同様に慎重な判断が必要です。

とはいえ、例えば将来の労働者の負担増を最小限にとどめるために不利益変更に踏み切る決断も、時には必要です。また、いちど変更した後も常に規則と乖離した不利益な労働実態がないかどうかのモニタリング体制も、重要であることは言うまでもありません。

監修者 社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー

社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー 代表社会保険労務士:
楚山 和司(そやま かずし) 千葉県出身
株式会社日本保育サービス 入社・転籍
株式会社JPホールディングス<東証一部上場> 退職
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