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その健康経営はなぜ実現しないのか?「Carely」運営企業に聞く企業の抱える課題

その健康経営はなぜ実現しないのか?「Carely」運営企業に聞く企業の抱える課題

健康診断やストレスチェックなどの健康情報を一元管理し、人事課題をクラウドシステムと専門家サポートで支援する企業向け健康管理システム「Carely(ケアリィ)」を運営する株式会社iCARE(以下iCARE)。

企業において、人という資本に対する価値の見直しが進む今、経営における健康課題への取り組み方も変わりつつあります。

今回はiCAREに寄せられる企業の悩みや課題解決方法について、カスタマーサクセス部の林浩人さんと、プロフェッショナルサービス部エンプロイーサクセスチームで産業保健師の立山紫野さんにお話をうかがいました。

企業の健康課題は規模感によって変わる

―御社サービスでは、健康診断などの結果をペーパレスで一元管理という部分が、最もイメージしやすい部分だと思います。それ以外では、どういったサービスがあるのでしょう。またご相談される企業はどのような悩みをもたれていることが多いですか。

林さん
弊社は健康診断結果などのデータ化と合わせて、「Carely専門職サポート」という、企業の健康課題に対して最適な解決策のプランニング・実行を支援するサービスをおこなっています。具体的には、産業保健師や臨床心理士によるコンサルティングになります。

専門職によるサポートが必要なのは、企業規模によって抱える悩みが変わっていくからです。従業員数が50名を超えた企業ですと、法律で義務づけられる項目が増えるため法令遵守に対する相談が多くなります。産業医や衛生管理者の選任や、報告義務を漏れなくおこなう仕組み作りをご相談いただくことが多いです。
従業員数が1000名を超えますと、企業の財産である従業員の健康管理や予防ケアについての悩みが多く寄せられます。「従業員満足度を高めるために健康課題の解決を」と言っても、自社でどういった取り組みをおこなえばよいか分からない企業が多いようです。

―企業規模が大きくなると、体制として「1対多」になるため、細やかなケアは難しそうです。

林さん
おっしゃるとおり、1000名以上の企業ですと1人の従業員で200〜300名の健康管理をおこなっているのが一般的です。管理者の人数に対して管理するデータが増えますので、どうしても細やかなケアに割く時間が足りなくなります。こうした困りごとに対して、弊社は産業保健の専門家チームが知恵を出して支援しています。
具体的には、弊社の産業保健師が優先順位をヒアリングし、施策について考えます。健康管理の再検査受診運用フローを決めたり、衛生委員会の立ち上げについてアドバイスしたりするなどです。また産業医との連携方法について、コミュニケーション面でサポートをします。
支援内容は多岐に渡りますが、前提として企業ごとの課題に合わせて優先順位をつけることや、健康診断やストレスチェックから課題を見つけるところから一緒に考えていきます。

健康管理の施策は結果が見えづらいのがネック

―健康管理の取り組みについて、いわゆる義務化の範囲で対応が止まっている企業も多い印象です。「取り組みたい、でもやれない」、こうした企業のジレンマにはなにがあるのでしょう。

林さん
経営陣の理解が得にくいという声は耳にします。上層部としても、従業員の健康ケアは大事であるという認識はあっても、成果が見えづらいため許可を出しにくいようです。そこから派生して、現場ではタスクの優先順位が下がり、成果を得るための情報収集といったアクションが取りにくくなります。手が空いた際に取り組むようになり、いつもまでも課題はあるけれど本格的に取り組めないというジレンマに陥ってしまうのです。

―そうした現状を踏まえて、御社から見て「あ、この会社はまずそうだ」と感じる企業に共通点などあるでしょうか。

立山さん
特定の相手に任せてしまう会社は心配になるケースが多いです。上層部が現場スタッフに丸投げだったり、弊社の導入を決めたら弊社に任せきりだったりする企業です。弊社サービスの導入は、あくまでもスタートです。自社の結果がデータ化され、それを見てなにができるかを考え、実行することで初めて成果が出始めます。データの見方や実行部分でサポートはおこないますが、「あとはよろしく」といったスタンスだと、これらも難しくなります。

林さん
また、こうしたスタンスですと、経営陣から「本当にこの取り組みは必要なの?」と聞かれたとき、担当者が背景を説明できなかったりします。そうなるとサービスの導入だけでなく、継続した取り組み自体も難しくなります。そもそも自社の課題を理解しきれているのか、弊社としても疑問を覚えます。

立山さん
健康管理のサポートは、1年で劇的に改善するのが難しい分野です。健康診断の結果が悪かったから企業側が指導をしたとして、翌年改善するものではありません。また改善したとしても、本人の意識や行動面の影響が大きく、時間も要します。こうした特性があるため、ポイントポイントで数値を共有しながら適切なサポートをおこなっていきます。3〜5年たったとき、「こんなに良くなっている」という意識改革になることを弊社は目指しています。
だからこそ、担当者の方には課題感を明確に持っていただき、継続して取り組んでいただくことが大事になります。

まずやれることは自社の把握から

―「Carely」導入企業のなかで、課題感の改善・解決ができた事例があれば教えてください。

林さん
「ストレスチェックの結果を踏まえてアドバイスが欲しい」というオーダーをいただいた企業の事例をご紹介します。その企業では、ストレスチェックは義務だからおこなっているものの、結果の分析を踏まえた改善施策はできていない状態でした。そもそもストレスチェックは部署単位での実施が一般的なため、部署単位以外の分析ができていないことが多いです。
弊社では結果を性別や年齢、社歴や役職などで区切って分析の支援もおこなっています。その企業では、30代の働きがいのスコアが、社歴10年目を目処に下がっていることが分かりました。役職でさらに見ていくと、一般職以上で部長以下の中間管理職層でストレス度合いが特に高く出ていました。この要素を組み合わせ、社歴10年目で30代の中間管理職の働きがいが低下し、離職が進んでいるのではないかとフィードバックさせていただきました。
企業担当者はそれを受け、社歴10年目の人材へのキャリア支援や、自社で長く働く意義といったものを改めて示すことで、ストレスチェックを起点に改善を図っていく取り組みをおこなっていただいています。これは健康データを使った弊社のサポートが、企業の働きがい改善に寄与した事例です。

―ほかにも従業員の定着率に悩む企業は多いと思いますが、まずはなにから取り組めば良いでしょうか。

立山さん
自社の把握をしっかりするということに尽きると思います。福利厚生など施策があっても、従業員ニーズとずれては良い成果につながりません。先ほどの事例は「働きがいの低下」が理由でしたが、離職理由はモチベーションの問題だけではないですよね。業務量や人間関係、賃金の問題などいくつか考えられます。施策をおこなったことが自社にフィットしているのかは、現状把握をすることでしか答えは見えてきません。

林さん
補足すると、業界によって課題の傾向はある程度分かれているように思います。製造業は体が資本であるため、フィジカル面の課題。IT系は長時間労働になりがちであるためメンタルの課題がよくあがります。こうした前提知識も、担当者の方が持っていると自社の把握も進みやすいです。

立山さん
よくある落とし穴として、施策ありきで課題をこじつけてしまうケースもお伝えしておきます。「働きがいが下がっているから、オフィスをいい感じにしよう!」といった感じです。でも現場では、賃金に不満があるだけだったなんて話はよくあります。
最初からマッチする施策を打つのは難しいかもしれませんが、まず上層部から「従業員のことをちゃんと考えている」と発信し、同時に状況を把握していくことが大切です。現場社員もそれを受け、「ちゃんと考えてもらっている」という信頼が生まれ、心理的安全性も高まっていくのではないでしょうか。

人が資本と言われる今の時代、健康課題に対する企業の考え方も変わりつつあります。
まずは自社の課題はどこにあるのか、すでにある結果から振り返ってみるだけで見えてくる情報は変わっていくかも知れません。

会社概要

会社名 株式会社iCARE
代表者名 山田 洋太
所在地 〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿1丁目23-23恵比寿スクエア5階
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