
「とりあえず正社員」にしていませんか?
〜会社に合った雇用形態の選び方〜
採用のとき、雇用形態を深く考えていますか?
毎日暑いですね!
私はホームパーティーが好きで、月に1回くらい友人を家に招いて、たこ焼きパーティーやサムギョプサルパーティーを楽しんでいます。
でも、この暑さだと外でキンキンに冷えたビールを飲みたくなります~!
今年もビアガーデンにも行きたいなと思っています!

さて、今回は少し真面目なお話です。雇用形態についてお話させていただきます。
「とりあえず正社員で採用しよう」「みんな正社員にしているから」そんな理由で雇用形態を決めていませんか?
雇用形態の選択は、採用後のトラブルに直結する重大な判断です。正社員、契約社員(有期雇用)、パートタイム労働者。それぞれに法律上の違いがあり、後から「こんなはずじゃなかった」となるケースを、社労士として何度も目にしてきました。
今回は、雇用形態の基本的な違いと、それぞれのメリット・デメリット、そして現場でよくある勘違いについてお伝えします。
試用期間と有期雇用は違う
まず押さえてほしいのが、「試用期間(正社員)」と「有期雇用契約(契約社員)」は、全く別のものだということです。
試用期間とは、最初の一定期間で「この仕事や会社に適性があるか」を見極める期間のことです。
よく「試用期間中なら、合わなければ簡単に辞めてもらえる」と思われがちですが、これは誤解です。
試用期間中であっても、すでに雇用契約は成立しています。そのため、会社側から辞めてもらう場合は「解雇」となり、合理的な理由が必要です。
一方、有期雇用契約(契約社員)は、最初から「3か月」「6か月」など、働く期間を定めて雇う契約です。ここが大きな違いです。
有期雇用契約は、契約期間が満了すれば、原則として雇用契約は終了となります。これは「解雇」ではなく、「契約期間の満了」です。
注意してほしいのは、契約期間の途中で辞めてもらうケースです。
実は、有期雇用契約の期間途中の解雇は、正社員の解雇以上にハードルが高くなることがあります。
なぜなら、会社自身が「この期間は雇います」と約束しているからです。
たとえば6か月契約を結んでいるのに、途中で「やっぱり合わないから辞めてほしい」となれば、「なぜ契約期間の満了まで雇えなかったのか」「改善の機会を与えたのか」「指導や研修は行ったのか」といった点が問われます。
つまり、有期雇用契約は「途中で簡単に辞めてもらえる契約」ではありません。むしろ、契約期間の途中で終了させるのは難しい。ここは非常に重要です。
大切なのは、長く働いていける関係づくり
……と、ここまで「辞めてもらいたい場合」の話ばかりしてしまいました。
社労士という仕事柄、どうしても「もし採用がうまくいかなかったら」「万が一トラブルになったら」と、ついリスクヘッジの話が多くなってしまいます。
面接だけでは、どうしても分からないことがあります。
会社側から見れば、仕事の進め方や周囲とのコミュニケーション、実際の業務との相性。
働く人の側から見ても、職場の雰囲気や上司との相性、仕事内容が自分に合っているかどうかは、実際に働いてみて初めて分かることがあります。
有期雇用契約は、そんなふうに「会社が人を見極めるため」だけではなく、「働く人も会社を見極めるため」の期間として設計することができます。
大切なのは、「辞めてもらうため」に有期雇用契約を使うのではないということです。
会社と働く人の双方が、無理なく、気持ちよく、長く働いていける関係をつくるために、緊張感をもって雇用契約をどう設計するか。
私は、そこまで考えて採用の仕組みをつくることが、本当の意味でのリスクヘッジだと思っています。
私が正社員採用に踏み切った理由
実は私自身、事務所のスタッフを採用する際に、最初は有期雇用での採用を考えていました。
でも、採用を進める中で、ふと気づいたんです。私の中にはすでに、「この人と一緒に頑張っていきたい」という気持ちがある。
それなのに、「もし合わなかったら」「もしかしたら契約を終了するかもしれない」「売上が落ちたらどうしよう」と、リスクばかりを考えて有期雇用にするのは、今の私の本当の気持ちとは違うのではないか、と。
そして、その迷いは、きっと相手にも伝わってしまうと思いました。
そこで私は、本人に謝りました。
「あなたと一緒に頑張っていきたいと思っているので、正社員に変えさせてください」
そう伝えて、正社員として採用することに決めました。
もちろん、これは「正社員採用が正解で、有期雇用が間違い」という話ではありません。会社のフェーズや従業員数、売上の状況、そして何より、これから働いてくれる方との信頼関係によって、最適な雇用形態は変わります。
ただ、私の場合は、その時点ですでに「この人と長く一緒に働きたい」という気持ちがありました。だからこそ、自分の本当の気持ちにきちんと向き合い、リスクばかりを考えるのではなく、正社員として迎えることを決めました。
雇用形態は、単なる契約上の区分ではありません。会社がその人とどう向き合うのか。そして、働く人がその会社でどう働いていくのか。双方の気持ちや覚悟を形にするものでもあるのだと、そのとき実感しました。

キャリアアップ助成金の「落とし穴」
一定の要件を満たせば、有期雇用の契約社員から正社員へキャリアアップする際に「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」を活用できる可能性もあります。
この制度は、中小企業の経営者からもよく相談を受ける助成金の一つです。要件を満たせば、正社員化にあたって一定額の助成を受けられるため、「せっかくなら活用したい」と考える会社も多いでしょう。
私自身も、要件に合うのであれば、ぜひ上手に活用してほしい制度だと思っています。
ただし、ここで絶対に知っておいてほしいことがあります。それは、「助成金をもらうために、とりあえず有期雇用にしておこう」という考え方は危険だということです。
たとえば、採用時点から正社員として採用することが決まっているにもかかわらず、助成金を受けるためだけに、形式上いったん有期雇用契約を結ぶ。これは不正受給です。絶対にやってはいけません。
不正受給と判断されれば、助成金の返還だけでなく、企業名が公表されることもあります。数十万円の助成金のために、会社の信用を失っては本末転倒です。
最初から助成金ありきで雇用形態を決めるのではなく、まずは「この人と、どのような形で働いていきたいのか」を考える。その上で、結果として活用できる制度があれば活用する。この順番がとても大切です。
必ず知っておいてほしい「無期転換ルール」
一有期雇用を活用する上で、必ず知っておいてほしいのが「無期転換ルール」です。
同じ会社との間で有期雇用契約を繰り返し更新し、通算の契約期間が5年を超えた場合、本人が申し込めば、会社は無期雇用契約に転換しなければなりません。
つまり、会社が「ずっと契約社員として、半年ごとに更新していけばいい」と考えていても、5年を超えれば、本人に無期転換を申し込む権利が発生する可能性があるということです。
もう一つ注意してほしいことがあります。
「契約社員なら、契約期間が満了すれば必ず終了できる」とは限らないということです。
契約更新を何度も繰り返していたり、会社側の言動などから「次も更新されるだろう」という合理的な期待が生じていたりする場合には、会社が一方的に雇い止めをすることが認められないケースがあります。
つまり、形式上は有期雇用契約であっても、その契約実態によっては、会社が自由に「今回で契約終了です」と言えるわけではないのです。
だからこそ、有期雇用を活用する場合は、「何年くらい更新するのか」「どのタイミングで正社員化を検討するのか」「無期転換後の処遇をどうするのか」まで、あらかじめ考えておくことが、会社にとっても、働く人にとっても大切です。
「この人と、どう働いていきたいか」から始めよう
ここまで、正社員、試用期間、有期雇用、キャリアアップ助成金、無期転換、雇い止め、と、いろいろな制度についてお話ししてきました。
お互いを知る時間が必要なら、有期雇用から始めるのも一つ。最初から「この人と一緒に頑張りたい」と覚悟が決まっているなら、正社員として迎えるのも一つ。
そして、キャリアアップ助成金などの制度は、その後です。助成金に雇用の形を合わせるのではなく、自分たちに合った雇用の形を決めた上で、使える制度があれば正しく使ってください。
最後に、これだけは言わせてください!
採用は、会社にとっても、働く人にとっても大きな決断です。だからこそ、法律だけでも、助成金だけでも、リスクだけでも決めてほしくない。
「この人と、どう働いていきたいか」
迷ったときは、ぜひ社労士にご相談ください。会社の今と、これから働く人の未来、その両方を見ながら、一緒に考えましょう。
母である社会保険労務士・奥村広美とともに法人を運営。約8年の社労士実務経験を持ち、人事労務セミナー講師、労務DD、IPO支援などを手がける。2026年4月には「一般社団法人士進会」を設立し、代表理事に就任。
2024年12月には電子書籍『20代開業社労士~人生を変えた社会保険労務士として生きる道~』を出版。「迅速かつ丁寧な対応」をモットーに、社労士業界の活性化に取り組んでいる。