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人材・組織アジリティとは、「素早さ」や「機敏さ」を意味する単語で、ビジネスでは、激しい変化に即時に対応するための経営や組織運営における「敏しょう性」という意味で扱われています。
今回は、アジリティの定義や特徴、アジリティの活用によって組織力を高める方法を解説します。
目次
アジリティとは、もともと犬の障害物競技である「ドッグ・アジリティ(dog agility)」として使われてきた歴史があります。ビジネスでは、変化が著しい環境変化に機敏に対応することを表します。アジリティは、素早い意思決定やスピードが求められる現代の企業においては、欠かせない経営概念のひとつです。
スポーツの分野においても、アジリティの概念は活用されています。対戦相手を振り切る、素早く反応するプレイが必要な球技や格闘技でもアジリティの向上が重視されており、スポーツにおけるアジリティの定義は、「刺激に対して素早く反応し、方向・速度を変換する能力」とされています。
ビジネスにおけるアジリティの定義は、「状況に応じて素早く判断し、行動できる機敏性や敏しょう性」といわれています。組織にもアジリティは求められており、目まぐるしい環境の変化に即時に対応できる意思決定の速さや適応能力をアジリティと定義しています。また、個人では、「常にフレキシブルに対応し、複数の選択肢から自ら適切な判断ができる能力」をアジリティと定義されています。
アジリティの概念を理解するうえで、混乱しがちな用語として「スピード」と「クイックネス」との意味の違いがあります。スピードは速度の速さ、クイックネスは物事に対して行動する速さである「俊敏性」を意味します。一方で、アジリティには判断の適格性に加えて、行動の速さである「敏しょう性」を意味します。
【「スピード」、「クイックネス」、「アジリティ」の意味】
用語 | 意味 |
---|---|
スピード | 速度の速さ |
クイックネス | 物事に対して行動する速さ(俊敏性) |
アジリティ | 判断の的確性と行動の速さ(敏しょう性) |
【参考】世界で伸びている企業の共通点「LFP」とは何か?遠藤 功(ローランド・ベルガー日本法人会長)/THE21 ONLINE
現代の企業の経営環境や個人のキャリアを取り巻く環境は不確実性が増しており、「VUCA(ブーカ)時代」と表現されます。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの言葉の頭文字から取った造語であり、頭文字である4つの要因により、ビジネス環境の変化が激しく、将来の見通しが難しくなった状況を表します。
【VUCAの概要】
用語 | 意味 | 例 |
---|---|---|
Volatility (変動性) |
物事が大きく変わり動く | 「mixi」や「Facebook」、「Twitter」などの登場によるSNS市場の大きな変化 |
Uncertainty (不確実性) |
これから起きる事象が予測できない | イギリスのEU離脱やアメリカの保護主義などによる、株価・為替市場の予測困難な状況 |
Complexity (複雑性) |
いろいろな要素がからみ合ってわかりにくい | システム化や細分化が進み、ビジネスにかかわる人材や技術の把握が難しい状況 |
Ambiguity (曖昧性) |
はっきりせず不明瞭である | テクノロジーの進化により、業界を超えた競争が活性化し、業界区分が曖昧になっている状況 |
ビジネスにおいても、テクノロジー化や細分化によってさまざまな要因が複雑にからみ合い、不確実で不明瞭な世の中になった現代だからこそ、スピード感を持った経営戦略が重要になります。しかし、スピードだけではこのVUCA時代を乗り切ることはできません。
そこで、スピードに加え的確な判断が求められるアジリティに注目が高まっています。
アジリティの高い組織には、いくつかの共通点があります。今回は4つのポイントに分けて、それぞれの特徴を解説します。
アジリティの高い組織では、将来的なビジョンが明確という共通点があります。曖昧で先の見えないVUCA時代の今だからこそ、組織の将来を見据えた明確なビジョンを持つことが重要です。想定外の事象が起きたとしても、しっかりとしたビジョンがあれば柔軟に対応することができます。
目まぐるしい変化が続く現代では、最適な判断能力と、それを即座に実行できる行動力が必要です。適切な判断には、組織の置かれている状況を把握しておかなくてはなりません。アジリティの高い組織の多くは、常にコミュニケーションが活発で情報共有も徹底されています。
あらゆる事象に対して対応できる発想力は、アジリティの高い組織に必要不可欠です。刻一刻と変化する時代の流れに組織全体が柔軟に適応できる体制を整えておくことで、どのような状況にも対応することができます。
最新情報を敏感に拾い上げる能力があれば、激しい変化にもすぐに対応できるようになります。そのためには、常に情報網を広く張って、競合他社以外の業界や微妙な消費者ニーズの変化など積極的に情報収集をすることが大切です。
変化し続ける時代に取り残されないためには、組織レベルでのアジリティの向上が必要です。アジリティを向上させるために有効な方法を3つご紹介します。
「ラーニングアジリティ(学習機敏性)」とは、組織・人事コンサルティング会社であるコーンフェリー社が2010年代初めに生み出した組織・人事コンセプトのひとつです。
コーンフェリー社の研究によると、「優れたリーダーは、経験から素早く学び、その学びを初めての状況にも応用することで高い成果をあげていく」ことを重視しており、学習機敏性は、企業の経営者にとって重要な資質のひとつと位置付けています。
同社がまとめたラーニングアジリティの調査結果は、次のとおりです。
【参考】当社が生み出した 組織・人事のコンセプト/コーンフェリー
ラーニングアジリティは現在、世界中で注目を集め、多くのグローバル企業が採用時に最も重視する項目のひとつになっています。企業全体のアジリティを高めるためには、まずは経営者が率先してラーニングアジリティを取り入れることが重要です。
自社のアジリティを向上させるためには、企業内の意思決定プロセスの迅速化が必要です。これまで時間がかかっていた紙による決裁申請は、社内決裁システムの導入により情報が迅速に集約され、意思決定プロセスが簡略化・効率化できるため、仕事の機敏性が高まります。
ITツールは企業理念や経営方針、将来に向けた明確なビジョンを従業員に浸透させることにも効果的です。テレビ会議システムは国内外の支社に同じ時間帯に経営者から直接メッセージを伝えることを可能とします。
従業員のアジリティを高めるためにも、社内SNSの活用やメッセージチャット、タスク管理システム、ファイル共同編集・バージョン共同管理、データの遠隔操作機能を備えたファイル管理システムはコミュニケーションの促進や情報共有手段を一元化することに効果的です。
「エンパワーメント」とは、企業の従業員が「能力や裁量権を持つ」ことで、個人のパフォーマンスを最大限に引き出すという意味として使われています。
エンパワーメントの実施により、社員一人ひとりのリーダーシップの育成や自立性・主体性の促進、能力開発に役立ち、アジリティの向上にもつながります。
労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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