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ourly株式会社代表の坂本良介さんにインタビュー

離職率25%減を実現!ourlyに聞く人手不足時代を乗り越える社内コミュニケーションの秘訣

監修者:労務SEARCH 編集部
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さまざまな業界において人手不足が問題となっている現在、優秀な人材の確保や離職防止のために、従業員エンゲージメントを高める施策に取り組んでいる企業も多いでしょう。

従業員エンゲージメントとは、従業員一人ひとりが会社の目標などを実現するために、自らの力を発揮しようと自発的に行動するかを示す度合いです。この従業員エンゲージメントを左右するのは、企業理念や業務内容だけでなく、「社内コミュニケーション」も重要な要素のひとつとして再認識されています。

そこで今回は、Web社内報ツール『ourly』などを運営する、ourly株式会社代表の坂本良介さんに、いま多くの企業が抱えている社内コミュニケーションに関する課題や、効果的な施策の進め方、成果を出すためにすべき取り組みなどについてお話を伺いました。

近年の社内コミュニケーションの課題は”やりがい”の低下

—まずは、御社について事業内容などを教えてください。

坂本さん
ourly(アワリー)はBtoB向け・HR領域のSaaSで、web社内報や社員名鑑(プロフィール)を通じて、クライアント企業の理念浸透や、横のつながり強化、組織文化の醸成を支援しています。

—御社はこれまでにourlyを通じて、さまざまな企業の社内コミュニケーションを活性化させてきたかと思います。近年、企業における社内コミュニケーションの課題は、どのようなものが多いと感じますか。

坂本さん
近年、人的資本経営が叫ばれるなか、従業員エンゲージメント向上に取り組む企業が増えています。エンゲージメント構成要素を”働きやすさ”と”やりがい”に分けた場合、労働環境整備などによって”働きやすさ”は改善しているが、”やりがい”は下がっているとも言われています。

自社の提供価値や未来への腹落ち、組織に対する貢献実感、目標に一丸となって向かえる組織か否かなど、やりがいを構成する要素と社内コミュニケーションは密接に関係しています。しかし、この領域は成果が可視化されづらく、またノウハウも表にでてこないため、なんとなく手探りでやっている企業がとても多いのが実態です。

—従業員のやりがいが下がると、社内コミュニケーションも次第に希薄になりそうです。これらの課題は、企業にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。

ourly株式会社代表の坂本良介さんにインタビュー

坂本さん
これからの人手不足の時代、従業員エンゲージメントが高い組織を作り、人材を集めることが、企業経営においてとても重要なテーマとなります。やりがいを高めるための取り組みを意思をもっておこなっている企業と、そうでない企業では大きな差がついてくると考えています。

上記のような社内コミュニケーションに関する課題を抱えているのは、どのような企業に多いと感じますか。

坂本さん
従業員数が100名を超えたあたりから「役員の考えが伝わらなくなってきた」、「隣の部署の人の顔と名前が一致しなくなってきた」という悩みを抱える企業様は多いです。

—従業員数が増えることで、社内コミュニケーションに課題を感じられる企業が多いということですね。では、業種によって課題の現れ方に違いはあるのでしょうか。

坂本さん
製造業、サービス業、小売業など本部と現場で拠点が分かれる業態の場合、現場従業員は情報を得る機会が少なく、会社が伝えたいことを伝えられていないというケースが多いです。

施策選びと効果測定における指標は「施策を実施する目的」に応じて設定を

—社内コミュニケーションに課題を感じる企業が多いなか、この領域で取り組みを進める際には、成果を捉えるのが難しいと感じます。そのような状況で、企業が社内コミュニケーションを活性化するためには、どのような手順やプロセスで進めていくことが望ましいでしょうか。

坂本さん
まずは、自社の経営課題・組織課題の抽出をおこない、組織課題のうち、社内コミュニケーション施策で解決したい課題を明確化します。目的・目標を定義できたら、運用体制の構築→企画立案、実行→定期的な施策振り返り→改善策の実行、といった流れでおこなうのがおすすめです。

—社内での合意形成や予算確保において、特に注意すべきポイントはありますか。

坂本さん
施策がうまくいっている企業は経営層をしっかりと巻き込んでいます。実際に運用を始めると、社内各部門に幅広く協力してもらうことが増えるので、しっかりと目的をすり合わせたうえで、経営陣の合意を得ることが重要です。また、予算は人事予算(教育費用もしくは採用費用)、福利厚生予算として検討されているケースが多いです。

—社内コミュニケーション施策は効果を可視化しづらい印象がありますが、効果測定をする際には、どのような指標や方法を活用することが効果的でしょうか。具体例があればぜひ教えてください。

坂本さん
社内コミュニケーション施策の目的に応じて設定することが大事です。

ourly株式会社代表の坂本良介さんにインタビュー

たとえば、理念浸透・横のつながり強化が目的の場合、KGIは「エンゲージメントサーベイにおける理念浸透や組織の風通しに関するスコア」、KPIは「理念浸透・横のつながり強化目的の記事それぞれの平均閲覧率xx%以上、プロフィール入力率xx%以上」に設定します。

そのほか、ボトムアップでアイデアが上がる組織づくりが目的の場合でしたら、KGIは「1年間のボトムアップ提案数」、KPI「提案活動をした人を称える記事発行数xx本/月以上、その記事の平均閲覧率xx%以上」を設定するといいでしょう。

—コスト等の面で従業員エンゲージメントサービスなどの導入が難しい中小企業でも実践できる工夫や取り組みについて、アドバイスをいただけますか。

坂本さん
会社の規模によらず施策(How)が先行しがちなので、どういった組織課題を解消したいのか、目的から立ち返って施策を検討されるのがおすすめです。

人数規模が少ない場合、オフライン(対面)で集まりやすいメリットがあります。オフラインの持つ同期的で一体感を醸成しやすい特徴と、オンラインの非同期的でストック性が高い特徴を組み合わせて、社内コミュニケーション施策を立案するのがおすすめです。

▼ストック性の高い施策は会社の情報資産として蓄積できるインターナルコミュニケーション施策の分類

ourlyで離職者数25%減・既存店売上10%増を実現した施策とは

—御社に問い合わせされる企業からは、具体的にどのような相談が多いでしょうか。

坂本さん
たとえば、「社長交代に伴って理念浸透や未来への共感を生んでいきたい」といったご相談や「多店舗業態で現場社員にキャリアパスを示して離職を防いだり、部門や店舗を超えた情報共有を通じて、店舗での販売力をより高めたりしていきたい」といったご要望が挙げられます。さらに、製造業の企業様からは、「若手からボトムアップで意見がでる風土を作っていきたく、チャレンジした人を応援する組織文化を作っていきたい」といったご相談をいただいたこともありました。

—ourlyの導入によって、具体的にどのような変化が見られ、社内コミュニケーションの改善に成功した企業の事例がありますか。

ourly株式会社代表の坂本良介さんにインタビュー

坂本さん
現場社員の離職防止が課題となっていたとある飲食店において、人事部門を中心に運用体制を構築して記事発信をおこなったことがあります。具体的な施策内容としては、

  • 2~3年後の少し先の未来にどんなものを作ろうとしているのかを伝える
  • トップメッセージを掲載してワクワク感を伝える
  • 入社数年目で活躍している社員のインタビュー記事を掲載して同じ社歴の他社員に刺激を与える

などです。その結果、離職者数が25%減少、既存店の売上が10%増加するという成果を得られました。自分はこの会社でどんなキャリアパスを描けるのか、それを会社の未来や上層部すぎない同僚の活躍から感じられたことで、やる気と自発性を引き出せたことが離職者の減少と既存店の売上増加につながったと考えています。

—そのような事例のように、企業がourlyをより効果的に活用するには、何を心がけるべきでしょうか。企業側で工夫できることがあれば教えてください。

坂本さん
複数の社内コミュニケーション施策と組み合わせて効果を最大化することがおすすめです。例を挙げるとすると、社内表彰をリアルでおこない、それをさらに深堀りするインタビュー記事を社内報で発信することで、本人への称賛と同僚へ刺激を与えられて、さらに後から入社した人に自社で推奨される行動や考え方を伝えられます。

そのほか、社内の技術交流会前に発表者のプロフィールを事前共有しておき、会話のきっかけを提供しておくことで、当日の部門をまたいだコミュニケーションの促進にもつながります。後日、発表会記事を社内報発信すれば、さらなるコミュニケーションの促進も期待できると思います。

▼社内報との組み合わせの相性がいい他施策例社内報を施策効果最大化の施策として活用する

—従業員エンゲージメントに関するサービスの導入を検討する際に、よくある障壁や、導入後の運用で注意すべきポイントはありますか。

坂本さん
費用対効果を定量的に示すことは困難なので、そこに固執しすぎないこと(離職を数名でも防止できれば採用や教育コストを鑑みれば安いが、その因果関係も示しづらいため)。いま抱えている組織課題を検討している施策で解消できるとしたら、導入に値するかどうかという観点からの検討がおすすめです。

まずは人事や広報、総務などが中心となって運用をスタートし、徐々に巻き込む部門や人(若手など)を増やしていきましょう。社内SNSを並行検討している企業様では、いきなり全社投稿型を想定されているケースが多いですが、すでにそういう組織風土でない限りはボトムアップではほぼ投稿されないため注意が必要です。

目標は、自社にとって望ましい組織文化を作っていくこと

—今後、企業は社内コミュニケーションに関してどのように対応していくべきだと考えますか。

ourly株式会社代表坂本良介さんにインタビュー

坂本さん
経営学者の入山教授は「企業がイノベーションを起こすうえでは、イノベーションが生まれる土壌となる組織文化が非常に大事」だと仰っています。日本においては終身雇用制度などの慣習によって、組織文化は放っておいてもできるものと考える経営者が多いですが、それは間違いであり、組織文化は戦略的に作っていくものだという指摘をされています。

—御社でも、今後の社内コミュニケーションの課題に向けて、新たに検討されている取り組みなどはありますか。

坂本さん
ourlyは自社にとって望ましい組織文化(=ある組織のメンバーが暗黙的に共有する思考や行動様式)を意図的に作っていく活動を「カルチャー・マネジメント」と名付けており、社内コミュニケーション施策の目的はまさにここだと考えています。

そのカルチャー・マネジメントを実現するため、新しくサーベイ機能を今秋リリースし、

  • 自社の組織状態を定期的に計測する「サーベイ」
  • 理念や未来への腹落ちや、他部門への理解を深める「社内報」
  • 顔と名前を一致させて部門をまたいだコミュニケーションを生む「プロフィール」
  • 導入企業への月次定例を通じたノウハウ共有、実行支援をおこなう「組織開発支援」

という、企画→実行→計測→改善のプロセスを一気通貫で実行できるようにしました。

—最後に、より良い社内コミュニケーションの活性化や従業員エンゲージメントの向上を目指す企業に向けて、アドバイスをください。

ourly株式会社で代表を務める坂本良介さん

坂本さん
マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは2014年に着任後、”社内で銃を向け合っている”と揶揄されていた「組織文化の変革」を最重要ミッションとして掲げ、10年かけて取り組み、部門を横断したプロダクトへの生成AI導入に大成功したと言われています。リクルート、サイバーエージェント、ホンダなど日本の優れた企業創業者も社内報を大事にされてきました。

組織文化を作ることは一朝一夕ではなく、エネルギーもかかりますが、得られるものはとても大きいです。経営層はもちろん、社員も組織を作る一員として巻き込みながら活動を楽しんでいただきたいです。

監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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