2016年1月に始まったマイナンバー制度ですが、事業主の方からは「マイナンバー制度への対応が十分に進んでいない」「きちんと対応できているか不安」という声も聞かれます。しかしマイナンバー制度に関する事業主の義務は意外とシンプルです。
きちんとおさえることで、従業員の雇用や社会保険等への手続きにも不安なく対応できるでしょう。そこで今回は、事業主なら知っておきたい、マイナンバーに関する5つの義務をご説明します。
目次
事業主が従業員から取得したマイナンバーの利用目的は、社会保障、税および災害対策に関するもののうち、法令で定められた場合に限られます。
法令で定められた場合とは、事業主が従業員に代って税金や健康保険料、厚生年金保険料などの徴収・納付手続きをする際や、雇用保険関係の手続き時に必要な場合などです。
また、従業員からマイナンバーを取得する際は、マイナンバーの利用目的を従業員にきちんと明示する必要があります。提出されたマイナンバーが違う人のものであるというようなことが起きないように、取得時に厳格な本人確認が必要です。
本人確認には「身元確認」と「番号確認」の両方が必要ですが、従業員が個人番号カードを持っている場合は、身元確認と番号確認がカード1枚で可能です。個人番号カードを持っていない場合は、運転免許証やパスポートなどで身元確認をし、通知カードやマイナンバー付きの住民票などで番号確認をするようにしましょう。
事業主は従業員に代って税金や社会保険の徴収・納付手続きをする際、マイナンバーを手続き書類に記載して行政庁に提出する必要がありますが、事業主が従業員のマイナンバーを利用・提供するのは法令で定められた場合に限ります。
具体的に、税金に関しては源泉徴収票、支払調書、給与支払報告書などの作成時に、雇用保険関係では雇用保険被保険者資格取得(喪失)届の作成時などに利用・提供することができます。
また健康保険・厚生年金保険関係では健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得(喪失)届の作成時などにマイナンバーを利用・提供することができます。マイナンバーは上記のような税・社会保障・災害対策以外の目的(例えば業務上の便宜を図るための社員番号として)などに使うことはできませんので、注意しましょう。
従業員のマイナンバーを保管または廃棄する際にも、事業主が守るべき義務があります。事業主は法令で明記された場合を除いてマイナンバーを保管してはなりません。
また継続的に保管できる場合を除いて、手続書類の作成事務処理などが済んだ段階で速やかに廃棄する義務を負います。
継続的に保管できる場合とは、雇用関係を翌年度以降も継続する予定があり、翌年度以降も手続書類の作成などでマイナンバーの情報が必要なときなどです。
また従業員が休職していて復職が未定の場合でも、雇用関係が継続しているためマイナンバーの情報を継続して保管することが可能です。
マイナンバーの情報を保管するには鍵をかけられる棚を用意する、ウイルス対策システムを導入する、担当者のみが情報にアクセスできるパスワードを設定するなど、保管方法も事前に検討しておきましょう。
従業員のマイナンバーが漏えいしたり、毀損したりすることのないよう、事業主は4つの安全管理措置を講じる義務があります。そしてそれらの安全管理措置に先立って、マイナンバーを取り扱う事務の範囲や事務取扱担当者などの明確化を行い、取扱規程等を策定しなければなりません。
安全管理措置の1つ目はマイナンバーを扱う部署の決定や、情報を管理する体制の整備などを行う、組織的安全管理措置です。
2つ目はマイナンバーを取り扱う担当者を監督したり、従業員に対してマイナンバーの適正な取扱いについて周知や教育を行ったりする、人的安全管理措置です。
3つ目は個人情報の漏えいを防ぐため、シュレッダーやパーテーションの設置などの物理的安全管理措置です。
4つ目は外部からの不正アクセスを防止するためのソフトウェアの導入や、情報漏えいの防止に対する措置である、技術的安全管理措置となります。
社会保障や税に関する手続き書類の作成事務などを外部業者に委託する際は、委託先に対してマイナンバーが適切に管理されるよう、監督をする必要があります。
具体的には業務を委託する適切な業者選定、委託先が果たすべき安全管理措置を遵守させるための契約締結、委託先が適切にマイナンバーや個人情報の管理・取扱いをしているかどうかの監督となります。
また委託先の情報管理システムや管理環境、管理設備など、技術的、物理的、人的にも安全管理措置が遵守される経営環境にあるか、あらかじめ確認した上で委託契約を結ぶ必要があります。
今回は事業主が知っておきたいマイナンバーに関する義務を5つご紹介しましたが、これらの義務を果たすためには経営者だけでなく、組織としての対応が大切です。
まずはマイナンバーを取り扱う担当者や部署を決定した上で、適切なマイナンバーの管理・監督方法を精査する必要があります。マイナンバーに関する義務を守ることで、今後は従業員の雇用や社会保険等への手続きにも不安なく対応できるでしょう。
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