マイナンバー制度は徐々に事業活動に浸透してきました。マイナンバー記載文書やマイナンバーを含む各種のデータベースなど、日常保管・管理が必要になるケースも増えてくることでしょう。
いわゆる「マイナンバー法」では、その保管・管理の方法にも高度なセキュリティが求められ、事務的な負荷や管理リスクは高まる一方です。本稿では、特に退職者のマイナンバーについて、適切な保存や廃棄の方法について解説します。
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マイナンバー制度が導入されて以降、さまざまな書類にマイナンバー情報を記載しなくてはならなくなりました。しかし、従業員が退職後は、そのマイナンバー情報も廃棄することが義務づけられています。加えて、退職後にすぐ廃棄してもいいわけではなく、一定期間の保存が必要となるケースもあるようです。また、その期間も書類によってさまざまです。
書類を提出してから○○年というように、退職日から数えるわけでもありません。また、マイナンバー情報を削除した際は、その「削除した記録」を残しておかなければならないのも要注意ポイントでしょう。
マイナンバー情報が必要な書類として代表的なのは、雇用保険関係の書類でしょう。主要な書類には、マイナンバー情報の記入欄があります。
しかし、原本をハローワークで管理しているため、実は事業主の方でその控えを保管しておく必要はありません。そのため、保存期間などに気をつける必要もありません。ただし、自身の判断で手元に控えを残しておく場合は、また少し話が変わってきます。
特に、雇用保険法施行規則第143条では、「雇用保険の書類の控えは、書類の提出から二年間(被保険者に関する書類は四年)保管しなければならない」と定められているからです。そのため、もし保管するのであれば、細心の注意を払ったうえで二年間しっかりと保管してください。そして、廃棄後は削除の記録を残しておくことも忘れないようにしましょう。
労災保険関係書類においても、マイナンバー情報が必要になります。必要となるのは障害補償給付支給請求書や遺族補償年金請求書などです。労災の補償金に関する請求書では、ほとんどの場合にマイナンバー情報が必要です。
しかし、このような書類は原則として給付を受ける本人が提出を行うため、事業主がその管理を行う必要はありません。本人の委託により、事業主や社会保険労務士が代理で書類の作成・提出を行うこともありますが、その場合でも手続きが完了次第、マイナンバー情報を廃棄しても構いません。
また、書類を保管する場合でも、マスキング処理などをして、番号が分からないようにすれば問題ありません。
社会保険関係書類の場合も、マイナンバー情報の扱いは雇用保険関係書類と同様になります。健康保険や厚生年金に関する書類も、その原本を健康保険組合や日本年金機構の方で管理するため、事業主の方で控えをとっておく必要はありません。
また、こちらも事業主の判断で控えを保管することができます。健康保険法施行規則第34条や厚生年金保険法施行規則第28条において、それらに関する書類を完結から二年間保存しなければならないと定められています。
さらに、企業年金に関係する書類も同様の扱いとなります。公的年金支払報告書や源泉徴収票などにはマイナンバー情報が必要となりますが、原則として控えをとっておく必要はありません。
ただし、控えを残しておく場合は、税務における更正決定等の期間制限に鑑みて、最長でも七年が限度と考えられています。これは、最低保存期間ではなく最長の保存期間であることに注意してください。七年を過ぎる前に廃棄してもかまいません。しかし、七年を過ぎてしまった場合は速やかに廃棄しましょう。
本人確認のために、従業員のマイナンバーカードのコピーを提出してもらうこともあるでしょう。その場合は、コピーを保管することは認められていますが、法令によって義務づけられているわけではありませんし、保存期間に関して定められているわけでもありません。
むしろ、マイナンバーが導入されてから本人確認の際にトラブルなども発生しているため、それを避けるためにも、番号が確認でき次第すぐに破棄することが推奨されています。また、これは従業員の扶養親族についても同様です。
このように、実はマイナンバー情報が記載された書類というのは、その控えすら事業所で保管することが義務づけられていないことがほとんどです。マイナンバー制度は始まったばかりなので、把握しきれていなかったという方も多いのではないでしょうか。
もし、保管する場合でも、その安全性に細心の注意を払い、法令で定められた保存期間中はしっかりと保管するようにしてください。
社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー 代表社会保険労務士:
楚山 和司(そやま かずし) 千葉県出身
株式会社日本保育サービス 入社・転籍
株式会社JPホールディングス<東証一部上場> 退職
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