平成29年を迎え、ようやくマイナンバーも利用場面が拡大し、給与計算や労働社会保険被保険者資格の得喪など、日常の業務として馴染みつつあります。
このタイミングでいまいちど、これまでの導入経過とこれからの導入予定を実務上の利用場面ごとに整理し、「何を、どこまでクリアしている(していない)のか」を振り返り、今後「何を、どうやってクリアすべきなのか」を把握して、マイナンバー対応に後れのないようにしましょう。
マイナンバー制度の開始によって実務においてマイナンバーを使用するケースが多くなります。実務においては労働保険(雇用保険、労災保険)に関しても各種手続きの際の提出書類にマイナンバーを記載することになります。
しかし、必ずしもすべての書類にマイナンバーを記載しないといけないわけではありません。例えば雇用保険に関しては、被保険者資格に関する場合、高齢者雇用に関する場合、育児・介護休業に関する場合に限られます。
また、労災保険に関しては、労災年金関係の書類にマイナンバーを記載することになっています。しかし、これらの書類の多くは本人や遺族が記入するものなので、会社側が実務において労災保険の書類にマイナンバーを使用するケースはほとんどないと言えます。マイナンバーが必要になる書類とそうでない書類は決まっているので、事前に確認しておきましょう。
マイナンバーは国民生活の利便性の向上や公平性の保証のために導入されます。このため、国民生活を保障する社会保険(医療保険、年金保険、介護保険)においてもマイナンバーが用いられます。
企業において具体的に使用されるのは、健康保険に関する書類、厚生年金に関する書類などに記載するときになります。一部の書類においてはすでにマイナンバーの記載が実施されていますが、健康保険や厚生年金保険に関しては、導入時期が平成29年1月からとなっているため、実務の際には、この変更点に注意するようにしてください。
給与を支払う場面でも、マイナンバーの影響を大きく受けることになります。もっとも関係すると考えられるのが、源泉徴収票作成における使用です。マイナンバー制度の開始によって、源泉徴収票にもマイナンバーを記載しなければいけません。
他にも、給与支払手続きにおいてマイナンバーを記載する必要がある書類があります。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」、「住民税の特別徴収税額通知書」などです。給与支払いは先ほど紹介した社会保険や労働保険の他にも税金とも大きく関わっているため、各所においてマイナンバーが必要になる場面があるので注意が必要です。
給与支払手続きにおけるマイナンバーの取り扱いのミスを防ぐためにも、事前に給与が会社から従業員へと支払われるフローを作成し、どの場面でマイナンバーを記載する書類があるのかをあらかじめ確認しておくことが大切になります。
実務の各場面において実際にマイナンバーを使用する場面が増えてきています。ここでマイナンバー実務においての注意点を紹介します。マイナンバーは重要な個人情報なので、まずは、その利用目的を伝える必要があります。利用目的外での利用は禁止されています。
また、他人のマイナンバーを使用してしまわないように本人確認の徹底も必要です。マイナンバーの本人確認に関しては確認方法が明示されているので、方法に沿って正しく確認をしてください。個人情報ということで、当然ながら漏洩などはあってはなりません。
このため、安全管理措置対策を実施する必要があります。この安全管理措置についても本人確認同様に方法が示されています。マイナンバーは委託することもできますが、この委託の際にも委託者が委託先を監督する必要があります。マイナンバーの使用範囲は広いからこそ、扱いや管理を徹底的に行わなければいけません。
マイナンバー制度は、システムへの不正アクセス事件や個人番号カード発行手続の遅延の影響などにより、当初のスケジュールから重ねて変更が生じていること、利用場面によって導入の足並みがそろっていないことなどから、付番から1年以上が経過した今なお、現場に混乱を生じています。
くわえてその取得・保管・廃棄において講じるべき措置の内容も複雑です。未対応事項と今後対応すべき事項を定期的に振り返る機会をぜひ設けてみてください。
社会保険労務士事務所 そやま保育経営パートナー 代表社会保険労務士:
楚山 和司(そやま かずし) 千葉県出身
株式会社日本保育サービス 入社・転籍
株式会社JPホールディングス<東証一部上場> 退職
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