平成27年10月からマイナンバーの通知が始まって、約1年半が経過しました。従業員のマイナンバーはさまざまな書類に記入することになるので、取り扱いになれてきたという事業主の方も多いかと思います。
しかし、マイナンバーは従業員だけでなく、取引先、特に個人事業主の方から提出してもらうこともあります。今回は、法定調書のなかから、支払調書に焦点を当ててマイナンバーの取得および取り扱いについて確認していきましょう。
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現時点において59種類ある法定調書のうち、そのほとんどが支払調書や源泉徴収票になるのですが、提出の際にマイナンバーを必要とする書類はかなり多いです。
そのため、事業主の方は従業員のマイナンバーを必ず控えておくようにしましょう。そして、意外と見落とされがちなのが、個人事業主の方へ報酬を支払うときです。
講演会の講師役を個人事業主の方に依頼した場合、当然その報酬を支払う必要があります。そして、その報酬金額が一定額を超えていれば「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を作成し、税務署に提出することとなります。
その際、報酬を受けとった側、この例で言えば個人事業主の方のマイナンバーを、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」に記入する必要があります。
そのため、書類を提出する時期に慌てないためにも、あらかじめ先方からマイナンバーを確認できる書類を提出してもらいましょう。法人へ報酬を払う場合は、公開されている法人番号を記載すれば大丈夫なのですが、相手が個人の場合はきちんと本人から確認を取る必要があります。
先方にもさまざまな事情がありますので、時期によってはスムーズにマイナンバーの提出を受けられない場合もあるかもしれません。しかし、そういった場合でも、まずは個人事業主の方にマイナンバーの記載が義務であることを伝え、提出の要請を行いましょう。
それでも先方がその要請に応じてくれない場合、要請を行った期間や経緯などを記録・保存し、業務違反でないことを明確にしておきます。
税務署では、マイナンバーが記載されていない書類でも受け取ってはくれます。ですが、無記入の理由を尋ねられますし、その理由が正当でない場合は、提出が認められない可能性があります。そのため、正当な理由を示すためにも、要請を行ったという事実を記録しておくことが非常に重要となります。
また、書類を提出した後でもマイナンバーの提供を要請し続けなければなりません。要請し続けた後に、マイナンバーを取得することができれば、原則として書類の再提出が必要となります(ただし、マイナンバー以外の項目が正確に記入されているのであれば、再提出が必要ない場合もあります)。
従業員本人に交付する源泉徴収票には、基本的にマイナンバーを記入する必要はありません。当初は従業員に交付する源泉徴収票にも、マイナンバーを記入するとしていたのですが、所得税法施行規則等が改正された際に個人情報漏洩のリスクやコストの問題といった観点から、マイナンバーは記入しないこととなりました。
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」のように、本人への交付が義務づけられていないような調書を本人に交付する際、個人マイナンバーを記入してしまうと「特定個人情報の提供制限」に抵触する可能性まで出てきます。
法人との取引において、先方に交付する調書に法人番号を記入しても問題ありませんが、個人事業主の方との取引では、本人に交付する調書にマイナンバーを記入することは禁止されていますので注意しましょう。
マイナンバーの提供を受けるには、なりすましを防ぐため番号法において厳格な本人確認が義務付けられています。
マイナンバーカードを直接提出してもらった場合、それ1枚でも大丈夫です。マイナンバーカードには身元を証明できる機能も付与されていますので、これだけで番号確認と身元確認の両方が可能となります。
しかし、マイナンバー通知カードやマイナンバーが記載された住民票の写しを提出してもらった場合、これらだけでは身元確認ができません。その場合は併せて運転免許証や保険証といった身元確認のための書類が必要です。
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の場合でも前述と同様です。個人事業主の方においても、マイナンバーカードの提出を受けられたのであればそれで問題ありませんが、もし通知カードや住民票の写しを提出してもらった場合は、身元確認書類が必要になります。
ここまで紹介してきたように、マイナンバーは自分の事業所の従業員からのみ提出してもらうのではなく、仕事を依頼した個人事業主の方にも提出してもらわなければなりません。
また、書類に不備があると、余計に手間が増えてしまうため、事前に提出してもらうことが望ましいでしょう。何度も手間をかけてしまうのは、お互いのためにも良くありません。きちんと確認して、スムーズに書類を提出できるように努めましょう。
山田大悟税理士事務所