この記事でわかること・結論
- 【経営戦略】 1on1は部下との面談にとどまらず、離職防止や生産性向上に直結する重要な経営テーマである。
- 【三つの目的】 「部下の成長支援」「信頼関係の構築」「組織課題の早期発見」の3軸で組織力を高める仕組みである。
- 【投資対効果】 離職率低下や心理的安全性の向上により、採用・管理コストを抑えつつ業績改善(ROI)を実現する。

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人材・組織この記事でわかること・結論
「1on1を始めてみたものの、雑談や業務報告で終わってしまう」
「一応やってはいるが、本当に効果が出ているのか分からない」
——そんな声を、人事や管理職の方からよく耳にします。
人材の流動化が進む中で、1on1は“部下との面談の場”にとどまらず、離職防止や生産性向上、マネジメントコスト削減にも直結し得る、重要な経営テーマになりつつあります。
本記事では、1on1の本質的な目的を整理したうえで、導入がもたらす具体的な効果と、経営にどのようなインパクトを与えるのかを解説します。
1on1は、実施すること自体が目的ではありません。組織力を高めるために設計された、マネジメントのための“仕組み”です。特に重要な目的は、次の3つに集約されます。
1on1を「未来への投資」として機能させるための核心となる3要素です。
1on1は、業務や成果だけでなく、成長の方向性や日常の小さな変化に目を向け、部下の可能性を引き出す時間です。短期的な成果に偏りがちな日々のマネジメントに対し、「未来への投資」を実現するための貴重な場となります。
心理的安全性の高い職場ほど、生産性が高い傾向があることは、さまざまな研究で示されています。その土台となるのが、日常的な対話です。1on1は、評価や指示とは異なる文脈で対話を行うことにより、上司と部下の相互理解を深めます。
離職や業績低下は、突然起きるものではなく、小さなシグナルが積み重なって表面化します。継続的な1on1により、個人の課題だけでなく、組織の構造的な問題を早期に把握することが可能になります。
これら3つの目的が実現されることで、1on1は「人材の定着と活躍」を推進する経営戦略の一部として機能します。形式的に回すのではなく、明確な目的を持って設計することが成功の鍵です。

1on1は「流行だから導入する」ものではありません。近年、企業の導入が進む背景には、人材マネジメントの構造変化と、投資対効果(ROI)が明確に示されている点があります。ここでは、導入企業が重視する3つの理由を紹介します。
離職・生産性・コスト。経営指標に直結する明確なROIが存在します。
エンゲージメントが高い組織は離職率が24%低いと報告されています。当社支援企業でも、導入前は離職者の7割が「相談できない雰囲気」を理由としていましたが、導入後1年で離職率が15〜30%改善する傾向が確認されています。
Googleの研究により、心理安全性はチームの成果に最も影響することが示されています。1on1は部下の悩みや課題を早期に取り除き、情報共有の加速や改善を促進します。半年で成約率が約10%改善したケースも見られます。
トラブルが深刻化してからの対応(事後型)から、早期に察知する(予防型)へと転換します。採用1名あたり100〜150万円かかる現代において、早期に対処し離職を防ぐことの経営的価値は非常に大きいものです。
このように、1on1は「守り」と「攻め」を両立できる施策です。実態は「組織の成長率を左右する経営投資」であり、離職防止(守り)、生産性向上(攻め)、マネジメントコスト削減を同時に実現できるからこそ、多くの企業が導入を進めているのです。

1on1の導入は、単なる人事施策ではなく、“組織の収益構造”にポジティブな影響を与える経営投資です。組織・上司・部下の3つの視点から、具体的な効果を整理します。
各レイヤーにおける具体的な変化が、組織全体のアップグレードを支えます。
離職率の改善(10ポイント改善の事例あり)により「採用コスト削減」「業務品質の安定」が実現します。エンゲージメントスコアも8〜15%向上し、心理的安全性が整うことで現場の改善サイクルが早く回るようになります。
部下の価値観や強みを把握でき、支援ベースのマネジメントに移行しやすくなります。「もっと早く言ってくれれば」という状況が激減し、評価面談での不満噴出も抑えられ、マネジメント工数が削減されます。
仕事の意義が明確になり、成長実感が持ちやすくなります。特に若手にはエンゲージメント効果が顕著で、当社支援企業では早期離職が半減し、OJT期間が平均1〜2か月短縮されたという成果も見られました。
1on1は「収益性向上→再投資余力増→競争力向上」という経営サイクルそのものを強化します。短期的効果(離職防止、生産性向上)と、長期的価値(組織文化・改善体質の醸成)が同時に得られる「見えない資産」の増強こそが最大の価値です。

1on1は導入するだけでは機能しません。形骸化を防ぎ、成果を最大化するためには、次の3つのポイントが欠かせません。
属人的な面談から、再現性のある組織的な「成長インフラ」へと昇華させます。
上司と部下の双方に「何のための時間なのか」を共通認識として持たせます。短期(業務改善)、中期(成長支援)、長期(キャリア形成)を整理し、テーマをすり合わせることで雑談化を防ぎます。
議事録やアジェンダを活用し、「言語化・見える化・追跡管理」を徹底します。前回の振り返りから次回までのアクション設定というサイクルを回すことで、面談の質を継続的に高めることができます。
経営トップが「戦略施策である」と明言し、評価指標に組み込みます。社長自らが実施率を全社KPIとして管理した企業では、実施率が90%超、離職率は1年間で20%改善という顕著な成果が生まれています。
1on1は「現場のための制度」ではなく、経営戦略上の投資です。人材が辞めず、成長し、成果を出すサイクルをつくるのは日々のマネジメントの質です。1on1はその質を底上げし、組織の収益構造を長期的に強化します。
「離職防止」は採用・育成コストの削減につながり、「生産性向上」は売上改善に直結します。心理的安全性の確保により挑戦が生まれ、イノベーションの土壌が育ちます。もちろん、ただ導入すれば成果が出るわけではありません。目的の明確化・継続・経営層のコミットが不可欠です。
人材は企業にとって最大の資産です。「面談を実施した回数」ではなく、“人が成長し続ける組織をつくるための投資”として、1on1を戦略的に活用していきましょう。企業の未来をつくるのは、日々の1on1の積み重ねからです。

慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。
2007年、株式会社エッジコネクション創業。営業支援業を軸に、人事・財務課題にも対応するコンサルティング企業として展開。
経営危機を乗り越えた経験を生かし、コンサルティング業や、ラジオ・YouTube・コラムなど、各種メディアで発信中。
これまでに1700社以上を支援し、継続顧客割合は75%台。
地元宮崎でも地域振興に尽力し、延岡市立地促進コーディネーターや延岡デジタルクロス協議会人材支援委員長を務める。
2024年7月には「24歳での創業から19期 8期連続増収 13期連続黒字を達成した黒字持続化経営の仕組み」を出版。