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人材・組織会社経営を行うにあたり、経営陣が企業の将来を担う決定を経営戦略といいます。類似のビジネス用語に「事業戦略」や「人材戦略」などがありますが、今回はそれぞれの用語の違いと、経営戦略として今後の人事労務管理のあり方について詳しくご紹介します。
目次
経営戦略とは、企業としての長期的、持続的な成長、生き残りのための基本的な方針や戦略を指します。
会社の経営資源とは人材、プロダクト(サービス)、お金などが該当します。経営資源をいかに有効活用し、目標やKPIを達成するかという筋道が経営戦略といえます。
特に深刻な人手不足といわれる現在では、優秀な人材を活用し、企業への定着率をあげながら、最大パフォーマンスで働いてもらうための経営戦略が必要です。
近年では消費者ニーズの多様化や、AI・インターネットによるグローバル化、ビジネス課題(サービス)の高度化・複雑化により、競争が激化しており、優れた経営戦略が求められています。
こうした社会的情勢の中でも、経営戦略や経営方針が示されていれば、社員の意思決定基準や組織全体の統一が明確になり、迅速な企業活動が可能となり、経営者による組織マネジメントも容易になります。
今後、経営戦略を考えることの重要性はさらに増してくるといえるでしょう。
経営戦略とよく似たビジネス用語として「事業戦略」があげられます。しかし、この二つの概念は全く異なります。
経営戦略は企業の持続的な成長の方針そのものを指し、事業戦略とは、経営戦略に基づき、部署や事業ごとに分けて細分化した戦略を指します。
近年では、一つの企業の中で市場やターゲットが異なる複数の事業を運営することも珍しくないため、経営戦略と事業戦略の概念をそれぞれしっかり理解しておくことが重要です。
従来の人事の役割は、社員の管理業務が中心でした。しかし、人手不足や労働市場の流動化の影響から、人材の定着を図るための制度づくりや採用活動に力を入れる必要性が高まっています。
人材の採用や育成に必要な費用を考慮すれば、自社に長く定着してくれる社員を雇用できることが理想です。
また、雇用した人材をその能力を最大限に引き出せる部署や業務に割り当て、従業員のパフォーマンスを最大化することが人事戦略の目的でもあります。しかし、こうした人事戦略における業務には社員や外部の人材との密なコミュニケーションが発生し、必ずしも効率化できるものではありません。
そのため、人事業務の中でも多くの時間を割いてきた管理業務をできる限り、自動化・効率化して時間を短縮化することが、人事担当者に優秀な人材の定着や確保のためのコア業務に注力してもらうことにつながります。
従業員が退職する理由として、内閣府が発表している「子供・若者白書」の平成30年版では、「仕事が自分に合わなかったため」という項目が最多となっていますが、「人間関係がよくなかったため」に次いで「労働時間、休日、休暇の条件が良くなかったため」、「賃金がよくなかったため」、「ノルマや責任が重すぎたため」、「自分の技能・能力が活かせなかったため」など人事労務関連による理由が含まれています。
【出典】特集 就労等に関する若者の意識|平成30年版子供・若者白書(全体版) – 内閣府
ほとんどの離職原因は人事部が主導して施策を講じ、防ぐことができます。特に仕事が自分に合わないと感じる離職は、入社の時点だけではなく、勤務期間に細かく面談の機会を設け、相談ができる体制を構築していれば防ぐことができたはずです。
「従業員が正当な賃金をもらっている」と満足感を得られるような給与形態を見直しや福利厚生を補うだけでは不十分であり、やりがいを生み出す効果もあるピア・ボーナスや副業の解禁、従業員の労働状況の把握と目標達成率を高める人材育成の一つである1on1ミーティングを設定することも検討しましょう。
タレントマネジメントとは、社内の人材の能力やスキル、評価や特性などを人事で一元的にまとめ、組織内で横断的に活用することを指します。
経営者には、新規事業の立ち上げや既存事業の改善をする際に迅速で適切な人材配置を可能にするメリットがあります。労働者には、自分の能力や適性にあった業務を担い、モチベーションや従業員エンゲージメントの向上につながります。
戦略人事とは、アメリカの経済学者であるデイブ・ウルリッチ氏が提唱した概念で、経営戦略を達成するために人材活用の面で積極的にかかわっていく戦略を指します。
従来の人事部は労務管理が中心であり、これまでの業務のみでは流動性の高い労働市場での、優秀な人材の確保・定着が難しくなっています。
たとえば、事業の海外展開が会社の方針として決まったとしても、従来の労務管理中心の人事では、海外事業を実現できる人材がそもそも社内にいるかどうかも把握できません。
タレントマネジメントにより従業員の特性や能力、スキルを一元管理し、社内の経営戦略を実現できる人材を発見できれば、最短の教育・指導で事業実現を担う人材へと成長させることができます。
一方、タレントマネジメントの結果、社内に適切な人材がいないとわかれば、採用活動に入らなくてはなりません。激変する世界経済に対応するためには、意思決定と行動の速さが重視されます。
そのため、戦略人事は企業の未来を担う重要な経営戦略の一つとして認識しなければなりません。
戦略人事が重要な経営戦略に位置づけられている以上、人事労務管理も経営戦略としてとらえて、実践していく必要があります。ここでは人事労務管理を経営戦略として実現するための手法をご紹介します。
シェアードサービスとは、グループ会社や社内の事業部ごとに存在する間接部門を集約化し、コスト削減や効率化を図る経営手法です。
たとえば、グループ会社A社、B社、C社のそれぞれに人事部、総務部、法務部などの部署が存在していた場合、A社、B社、C社すべての人事部、総務部、法務部を一か所に集中させます。
一方で、自社の間接部門をすべてアウトソーシングする手法をBPO(Business Process Outsourcing)と呼びます。
シェアードサービスを導入すれば、共通する定型業務を集約化でき、人件費や設備、施設などにかかるコストを削減し、ノウハウ共有による業務内容の品質向上が可能となります。
近年では、多くのソフトウェア会社がさまざまな特徴を持った労務管理システムを提供しており、労務管理業務を自動化・効率化することができます。
人事の業務は幅広く、社会保険の加入・脱退申請や給与計算、入社・退社に伴う法定手続きなど煩雑で時間が必要な定型業務が多数存在します。定型業務に多くの時間を費やすことは、人事担当者がコア業務に注力する時間を圧迫します。
労働管理システムの導入は定型業務を自動化・効率化でき、今後、重要となるコア業務(採用活動や職場環境の整備、従業員との面談や多様な働き方を実現するための制度検討・導入など)に集中させる機会を生み出し、人事業務を生産性の高い業務へと変化させることができます。
労働者保護や業務効率化の観点から法改正が進んでおり、人事労務における経営課題が増えています。
2020年4月から行政手続きにかかるコスト削減を目的に、特定の法人に対して、申請業務の一部を電子申請することが義務化されます。
2020年4月からの施行ですが、該当する場合はすぐに移行できるように、電子申請の準備を進めましょう。
働き方改革や社会的潮流を受け、労働管理に関する規制が厳しくなっています。
中でも残業時間の規制や社会保険・雇用保険の適用範囲の拡大は、労務管理に大きな影響を及ぼします。
従来は、特別条項付き36協定を結ぶことで長時間の残業も可能でしたが、残業時間の上限が設けられました。
また、社会保険、雇用保険の範囲拡大についても以下の記事で詳しく解説を行っています。
労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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