従業員のマイナンバーは、法律などの規定や周知した目的以外に利用できません。利用しなくなった場合は速やかに削除・廃棄しなければなりません。
マイナンバーについては所定の管理が必要なだけでなく、経理・税務関係の書類にマイナンバーを利用したならば、国税通則法により一定期間の保存義務があるのです。マイナンバーを廃棄するまでの円滑な管理と廃棄のコツについてお話します。
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マイナンバー情報は、いずれ個人の私有財産とも結びつくとされていること、一生番号が変わらないことから、重要な個人情報になります。従業員のマイナンバーを収集し、様々な手続きに利用する会社には遵守しなければならない事項が法律により定められているのです。
それではどのようにマイナンバーを管理していけばいいのでしょうか?マイナンバーなどの取り扱いのポイントをみていきましょう。
まず、マイナンバーを不必要な社内管理資料に記載しないことがポイントです。そもそも会社は従業員のマイナンバーを、法律や条例で定められた社会保険や労働保険の手続き、税法上の手続き以外に利用してはいけません。
社員番号の代わりや勤怠管理の識別番号として使うことも許されないのです。労働者名簿などに基礎年金番号や雇用保険番号と並べてマイナンバーを記載することも避けましょう。余計なところに記載してしまうとその資料自体についても管理が必要とされるため、結果的に事務処理上の手間がかかってしまうのです。
労働者名簿に記載できないとなれば、従業員のマイナンバーはどのように管理すべきなのでしょう。具体的には各個人のマイナンバーを記載したデータベースは単独で作成・管理しておき、他の個人情報と分けることがポイントとなります。
マイナンバーを取り扱う事業者は、漏洩、滅失、毀損を防止するために適切な管理のための措置を講じる必要があります。従業員のマイナンバーを取り扱う会社も、同じく事業者なのです。
マイナンバーと他の個人情報が一緒に漏洩してしまうと、個人情報の流出が広範囲となり、悪質に利用されるリスクが高くなってしまいます。このような被害拡大防止とともに、管理をしっかりと行う体制づくりが必要となります。
マイナンバーのガイドラインによると、使用しなくなったマイナンバーについてはできる限り速やかに廃棄または削除しなければならないとされています。使用しなくなった場合というのはどのようなときなのでしょうか?
まず、個人番号について事務処理する必要がなくなったとき、そして書類を一定期間保存しなければならない法定保存期間を経過したときが該当します。従業員が退職した場合、マイナンバーは不要になりますが、書類には法定保存期間がありますので、即座には削除することができないということです。
マイナンバーを削除・廃棄するというのは、復元不可能な状態にすることです。具体的には紙の書類の場合は溶解や焼却をすること、データの場合は削除ソフトによるデータ削除や、データを記録している記録媒体そのものを物理的に破壊することになります。
本人と家族のものなど複数のマイナンバーが記載された書類について、一部のマイナンバーだけを削除・廃棄する場合にはマスキングすることもできますが、該当部分は復元不可能な状態まで塗りつぶすことが必要です。
そもそもマイナンバーの取り扱いについては、記録に残しておくことが要求されています。マイナンバーの取得・手続きでの利用から、廃棄にいたるまですべて記録に残しておきます。これをマイナンバー取扱い記録簿やマイナンバー管理台帳と呼びます。
この記録簿・管理台帳は任意の書式で構いませんが、マイナンバーを記載することは避けましょう。マイナンバーを記載すると記録簿・管理台帳まで厳密な管理が必要となってしまい、事務作業も煩雑になってしまいます。
社内でのマイナンバー管理が難しいという会社では、管理を外部委託することができるようになっています。しかし、外部に委託するということはそれだけ漏洩のリスクが高まるため、防止する必要があります。
そこで、委託に際しては、関係各法を満たした業務委託契約を締結するとともに、会社は委託先が適切にマイナンバーを管理しているかどうか監督する義務を負っています。管理区域・データのセキュリティなど基本設備の状況確認はもちろんのこと、利用や廃棄の履歴についても管理監督が必要です。
設備状況や事故の有無といった基本事項は、年1回程度時期を決めて報告書を求めるとよいでしょう。廃棄については廃棄の証明書を発行させ、廃棄の時期と方法を確認していきましょう。
従業員のマイナンバーの取扱いについて会社に課せられた厳密な管理体制は、紙資料・デジタルデータを問いません。マイナンバーそのものの管理とともに、どのように取り扱ったかの履歴を記録することが義務づけられています。
特に廃棄については、マイナンバーそのものが削除されている状態ですから、履歴の記録が重要となるのです。
また、思わぬところにマイナンバーが残っていた、といった事態にならないよう、労働者名簿などの既存の従業員管理台帳とマイナンバーのデータベースを明確に分離し、利用時からマイナンバーの転記を必要最小限にするといいでしょう。
1995年:宮﨑社会保険労務士事務所 開設
1997年:税理士・社労士 西木事務所 開設
1997年:有限会社東京ファイナンシャルプランナーズ高松 設立、取締役就任
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