この記事でわかること・結論
- 【原因の特定】 1on1が形骸化する最大の要因は「目的の喪失」と「業務報告会への変質」にある
- 【運用のコツ】 「2:8の法則(部下が8割話す)」を徹底し、評価の場ではなく「支援の場」として再定義することが不可欠
- 【改善ステップ】 現状の課題を可視化し、上司へのトレーニングと運用ルールの簡素化をセットで行うことで形骸化は打破できる

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人材・組織この記事でわかること・結論
「1on1を続けているが、正直あまり意味を感じない」
「時間だけ取られて、現場が疲弊している」
こうした声は、決して一部の企業に限ったものではありません。1on1は、本来であれば部下の成長支援や信頼関係構築に大きく貢献する取り組みです。しかし、運用を誤ると「形だけの制度」になり、かえって逆効果になることもあります。
本記事では、1on1が「意味ない」と言われてしまう背景を整理したうえで、現場でよく見られる失敗パターンと、その具体的な改善策を実務視点で解説します。
「1on1は意味がない」「やっても何も変わらない」と感じている現場は、決して少なくありません。実際、多くの企業で同様の声が上がっています。その背景に共通しているのは、1on1が本来果たすべき目的を見失い、形式だけが残った運用になっていることです。
定期的に時間は確保しているものの、話題は業務報告や進捗確認にとどまり、部下が抱える悩みや将来への不安、成長に関するテーマにまで踏み込めていないケースが目立ちます。さらに、上司側も「とりあえず実施すれば評価される」「制度だから仕方なく行う」といった意識で臨んでしまい、事前準備や実施後の振り返りがほとんど行われていないことも多いのが実情です。
その結果、部下は「話しても状況は変わらない」「本音を言っても意味がない」「安全に話せる場ではない」と感じるようになり、次第に1on1そのものに価値を見出せなくなっていきます。1on1が失敗してしまう背景には、制度そのものではなく、日々の“使い方”や向き合い方に問題があるのです。
1on1が「意味ない」と言われてしまう背景には、いくつか共通した失敗パターンがあります。ここでは、現場で特によく見られる7つの失敗と、その原因・改善策を整理します。
多くの失敗は「上司主導」や「目的の履き違え」から生じます。発話比率やアジェンダを工夫するだけで質は劇的に向上します。
上司が状況説明やアドバイスを延々と話すケースです。本人は指導のつもりでも、部下には“聞かされている時間”になります。「2:8の法則」を意識し、上司2割、部下8割の発話量を目安にしましょう。
「進捗はどうですか?」といった確認で終わる失敗です。業務報告は他の仕組みで代替可能です。「最近困っていること」など、内面や思考に踏み込むアジェンダをあらかじめ設定することが有効です。
ミス指摘が中心になり部下が身構える状態です。ティーチング(教える)とコーチング(引き出す)を使い分け、「次はどうしたい?」と問いを重ねることで、部下の主体性を引き出せます。
話題がなく雑談で終わるパターンです。準備不足が原因のため、事前アジェンダを設定しましょう。5分で良いので、双方が「話したいテーマ」を書き出すだけで対話の密度が高まります。
延期が続くと優先度が下がります。「時間が空いたらやる」ではなく、会議と同等の扱いでスケジュールを固定化しましょう。月1回や隔週など、予定を確保することで重要性が伝わります。
毎回その場限りで終わる失敗です。「1on1シート」を活用し、話した内容や次回までのアクションを簡単に残すだけで、継続性と上司・部下間の信頼感が生まれます。
「特にありません」で終わるケースは心理的安全性の不足です。否定しない姿勢や感謝を積み重ね、安心して話せる空気づくりを徹底することで、徐々に関係性は変わっていきます。
ある企業では、目的不明確・記録なし・上司任せという状態で現場が疲弊していました。そこで、目的の再定義、簡易シートの導入、上司向けトレーニングを実施。半年後には「相談が早くなった」「離職が減った」という変化が見え始めました。1on1は運用次第で成果が大きく変わる好例です。

「意味がない」と感じられている状態から抜け出すためには、やみくもに続けるのではなく、運用を一度立て直すことが重要です。再構築するための5つのステップを紹介します。
現状把握から始め、目的・スキル・ルール・評価のサイクルを整えることで、形骸化した1on1は価値ある場に生まれ変わります。
実施頻度や記録の有無などを整理し、形骸化ポイントを洗い出します。部下へのアンケートを行うと、上司側との認識ギャップが見えてきます。課題を曖昧にしないことが改善の第一歩です。
「育成のため」「悩みの早期発見のため」など、目的を言語化して共有します。特に、「評価や査定の場ではない」ことをはっきりさせることで、部下は安心して話せるようになります。
「傾聴」「質問」といった基本スキルを学ぶ機会を設けましょう。「やり方を知らないまま任されている」状態を放置せず、ロールプレイ等で上司自身の不安を軽減することが重要です。
頻度、所要時間、記録方法などをシンプルなルールとして決めます。特に「1on1シート」は可視化と継続性に効果的です。ルールは細かくしすぎず、「守れること」を重視しましょう。
満足度や「相談のしやすさ」を定期的に確認します。「以前より話しやすくなったか」等の定性的な変化で十分です。改善と見直しを繰り返すことで、徐々に意味のある場へと変わります。
1on1は導入して終わりではありません。設計し、運用、改善することで初めて価値を発揮します。この5つのステップを順に実践することで、形骸化した1on1を立て直すことが可能です。
自社の1on1が“意味ある場”として機能しているかを確認するための、10項目のセルフチェックです。定期的に見直すことで、形骸化の予防にもつながります。
すべてに「はい」と答えられなくても問題ありません。重要なのは、できていない項目を把握し、改善のヒントとして活用することです。1on1は完璧を目指すものではなく、少しずつ質を高めていく取り組みです。

1on1が「意味ない」と言われてしまう理由は、制度そのものに欠陥があるからではありません。多くの場合、目的が曖昧なまま始まり、運用が整わず、形だけが残ってしまっていることが原因です。業務報告や説教の場になってしまえば、部下が価値を感じなくなるのは当然と言えるでしょう。
一方で、運用次第では、組織を大きく変える力を持っています。部下の話を聴き、考えを引き出し、安心して本音を話せる場として機能すれば、課題の早期発見や成長支援につながります。そのためには、「目的の明確化」「上司の関わり方」「運用ルール」「振り返り」といった基本を丁寧に整えることが土台となります。
さらに重要なのは、運用を整えたあとも、改善を続けることです。メンバーや組織のフェーズが変われば、求められる役割も変化します。定期的に見直しと改善を重ねることで、初めて「意味ある取り組み」として定着していきます。
特別なスキルや高度な制度がなくても、1on1は始められます。小さな工夫と継続的な改善の積み重ねが、部下との信頼関係を深め、組織全体の健全な成長を支えていきます。「意味ない」と感じられている今こそ、やり方を見直す絶好のタイミングと言えるでしょう。

慶應義塾大学経済学部経済学科卒業後、シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。
2007年、株式会社エッジコネクション創業。営業支援業を軸に、人事・財務課題にも対応するコンサルティング企業として展開。
経営危機を乗り越えた経験を生かし、コンサルティング業や、ラジオ・YouTube・コラムなど、各種メディアで発信中。
これまでに1700社以上を支援し、継続顧客割合は75%台。
地元宮崎でも地域振興に尽力し、延岡市立地促進コーディネーターや延岡デジタルクロス協議会人材支援委員長を務める。
2024年7月には「24歳での創業から19期 8期連続増収 13期連続黒字を達成した黒字持続化経営の仕組み」を出版。