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人材開発支援助成金(特定訓練コース)とは?対象者や注意点を解説

監修者:加藤 一徹 加藤社会保険労務士事務所
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平成29年4月より「キャリア形成促進助成金(雇用型訓練コース)」は「人材開発支援助成金(特定訓練コース)」へと名称が変更されました。人材育成は、そもそも企業としても疎かにできない部分なのですが、近年はそこがわかっていても、なかなか手が回らない分野でした。

そこで企業の発展と従業員のレベルアップのためにも、この人材開発支援助成金(特定訓練コース)のご一考をおすすめします。

人材開発支援助成金(特定訓練コース)の目的とは

人材開発支援助成金とは、職業訓練などを実施する事業主に対して訓練にかかる経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成し、労働者のキャリア形成を効果的に促進することを目的とした助成金制度です。

人材開発支援助成金が助成するメニュー

訓練関連

労働生産性の向上に直結した訓練実施について助成する「特定訓練コース」や、助成率や賃金助成額は特定訓練コースよりも低下しますが、特定訓練コース以外の訓練に対して助成する「一般訓練コース」があります。

制度導入関連

セルフ・キャリアドック制度や教育訓練休暇等制度を導入して実施した場合の「キャリア形成支援制度導入コース」や、技能検定合格奨励金制度などに助成される「職業能力検定制度導入コース」などがあります。

今回は、訓練関連の特定訓練コースについて詳しく説明したいと思います。

特定訓練コースの内容

OFF-JTのみの訓練

特定の施設が行う訓練等に対する「労働生産性向上訓練」、雇用契約締結後5年以内かつ35歳未満の若年者を対象とした「若年人材育成訓練」、熟練技能者の指導力強化や技能承継のための訓練等の「熟練技能・育成承継訓練」、海外関連業務に従事する従業員に対する「グローバル人材育成訓練」に分かれます。

OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練

建設業、製造業、情報通信業のいずれかに該当する45歳未満の従業員に対して「特定分野認定実習併用職業訓練」、それ以外の事業で45歳未満の従業員については「認定実習併用職業訓練」、45歳以上の従業員に対しては「中高年齢者雇用訓練」が設定されています。

また、特定訓練コースはOff-JTにより実施される訓練であること、訓練時間が10時間以上であることが助成の条件となります。

人材開発支援助成金(特定訓練コース)の対象従業員・対象経費と対象企業とは

人材開発支援助成金(特定訓練コース)の対象となる従業員

訓練実施計画届時に提出した「訓練別の対象者一覧」に記載があり、訓練実施期間中において、雇用保険の被保険者である従業員が対象となります。そして、訓練を受講した時間数が実訓練時間数の8割以上であることが必要とされています。

そして、支給対象となる経費と支給対象の事業主は、以下のものを対象としています。

支給の対象となる経費

事業主が企画や主催をする「事業内訓練」の経費

  • 社外の講師への謝金や手当、社外の講師の旅費
  • 教室などの施設や訓練で使用する設備の借上費(助成対象コースのみに使用したことが確認できるものに限る)
  • 学科や実技訓練に必要な教科書などの購入・作成費(助成対象コースのみに使用するものに限る)

事業主以外の人が企画し主催する「事業外訓練」の経費

国や都道府県から補助金を受けている施設が行う訓練の受講料や受講生の旅費などを除いた、受講の際に必要となる入学料・受講料・教科書代など、あらかじめ受講案内などで定めているもの

グローバル人材育成訓練において「海外で実施する訓練」の経費

海外の大学、大学院、教育訓練施設などでの訓練の際に、必要となる入学料・受講料・教科書代等。その住居費、宿泊費、交通費

「事業主団体が実施する訓練」の経費

  • 部外講師の謝金
  • 部外講師の旅費
  • 施設・設備の借上げ費
  • カリキュラム開発作成を外部委託した場合にかかった経費
  • 構成事業主が社会保険労務士などに支払う手数料
  • 外部の教育訓練施設などに支払う受講料、教科書代等

職業能力検定やキャリアコンサルティングにかかった経費や消費税についても支給の対象になります。

支給対象の事業主

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること
  • 労働組合などの意見を聴いて事業内職業能力開発計画や、これに基づく年間職業能力開発計画を作成し、その計画の内容を労働者に周知していること
  • 職業能力開発推進者を選任していること
  • 支給対象経費を事業主が全額負担していること

支給対象の事業主に関しては、上記のほかにもいくつかの要件を満たしていることが条件となります。下記の厚生労働省ホームページを確認してください。

参考:厚生労働省ホームページ

特定訓練コースの助成額と助成率・経費助成の限度額

得点訓練コースで受けられる1人1時間あたりの助成額と助成率は以下のとおりです。
※()内は中小企業以外の場合の数値を表しています。

Off-JTの助成額と助成率

資金助成
760円(380円)
生産要件を満たす場合
960円(480円)
経費助成
45%(30%)
生産要件を満たす場合
60%(45%)

OJTの助成額と助成率

実施助成
665円(380円)
生産要件を満たす場合
840円(480円)

次に、Off-JT に限る1人1コースあたりの経費助成の限度額は、訓練の時間に応じて以下のとおりになります。

中小企業、事業主団体等の場合

20時間以上、100時間未満で15万円(10万円)
100時間以上、200時間未満で30万円(20万円)
200時間以上で50万円(30万円)

特定訓練コースの訓練計画とは

受給手続きの中で重要になってくるのが訓練計画です。

訓練計画とは

事業主が雇用する労働者の職業能力の開発と向上を段階的かつ体系的に行うために「事業内職業能力開発計画」を策定し、それを基に事業主は「年間職業能力開発計画」を、事業主団体では「訓練実施計画書」を策定することが必要になります。あわせてこの企画、訓練の実施に関する権限を持つ者として、「職業能力開発推進者」を選任します。これらをまとめたものを訓練計画と呼びます。

そして、各訓練計画の作成をする上での要件と、作成後の大まかな流れは下記のとおりです。

特定分野認定実習訓練、認定実習併用職業訓練、中高年齢者雇用訓練を除く場合

  • 訓練計画の作成

    【要件】
    (1)特定訓練コースは1コースの訓練時間が10時間以上必要、一般訓練コースは1コースの訓練時間が20時間以上必要
    (2)訓練形式がOff-JTであること

  • 事業内職業能力開発計画の策定と職業能力開発推進者の選任する
    この場合の申請手続きは、雇用保険適用事業所単位となります。

特定分野認定実習訓練、認定実習併用職業訓練の場合

  • 従業員に対して実施する訓練計画を作成

    【要件】
    (1)企業内におけるOJTと教育訓練機関で行われるOff-JTを効果的に組み合わせて実施する訓練であること
    (2)実施期間が6ヶ月以上2年以下であること
    (3)総訓練時間が1年当たりの時間数に換算して850時間以上であること
    (4)総訓練時間に占めるOJTの割合が2割以上8割以下であること

  • 実習併用職業訓練(実践型人材養成システム)の申請と認定をする

中高年齢者雇用訓練の場合

  • 従業員に対して実施する訓練計画を作成

    【要件】
    (1)企業内におけるOJTと教育機関でおこなわれるOff-JTを効果的に組み合わせて実施する訓練であること
    (2)実施期間が3ヶ月以上6ヶ月以下であること
    (3)総訓練時間が6ヶ月当たりの時間数に換算して425時間以上であること
    (4)総訓練時間に占めるOJTの割合が1割以上9割以下であること

  • 事業内職業能力開発計画の策定と職業能力開発推進者の選任する

各訓練計画の作成後の大まかな流れ

  1. 各訓練計画の提出
  2. 訓練計画に則った訓練の実施
  3. 支給申請書の提出
  4. 助成金の受給

訓練計画の提出と注意点

各訓練計画の提出についてと、提出する際の注意点を見ていきましょう。
訓練計画の作成は各コースによって条件が異なりますので、前項を参考にしてください。

特定訓練コース、中高年齢者雇用訓練(特定分野認定実習併用職業訓練、認定実習併用職業訓練を除く)

訓練開始日の前日から起算して1ヶ月前までに、訓練実施計画届を労働局へ提出する必要があります。また、訓練計画届を提出したあと、訓練の内容やOff-JTに係る予定日や実施日などに変更があった場合は、変更等が生じた日から訓練開始後7日以内までに、訓練実施計画変更届を新たな年間職業能力開発計画を添えて提出します。この変更届の提出がなく、実施された訓練については助成対象外となるので注意が必要です。

特定訓練コース(特定分野認定実習併用職業訓練及び認定実習併用職業訓練)

上記と同じく訓練開始日の前日から起算して1ヶ月前までに、訓練実施計画届を労働局へ提出しますが、訓練実施計画届を提出する前に「実践型人材養成システム実施計画」等を申請し、厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。手順を間違えないよう、注意が必要です。

まとめ

人材開発支援助成金(特定訓練コース)の受給要件は、労働者のキャリア形成を効果的に促進することを目的とした助成金のため、職業能力開発推進者の選任や、訓練計画の策定・実施などが必要とされます。

また、訓練コースによって、訓練時間の条件などが細かく設定されています。多少申請書の作成が大変なところもありますが、制度導入助成の金額も大きいため、一度検討をしてみてください。

加藤社会保険労務士事務所 監修者加藤 一徹

日本大学卒業後、医療用医薬品メーカーにて営業(MR)を担当。その後人事・労務コンサルタント会社を経て、食品メーカーにて労務担当者として勤務。詳しいプロフィールはこちら

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