この記事でわかること
- 事業再構築補助金とは、中小企業の事業再構築を支援する補助金
- 2024年も実施される予定で、4月頃から第12回の公募受付が開始される見込み
この記事でわかること
コロナ禍で多くの企業が苦境に立たされるなか、2021年度の経済政策の目玉としてスタートした「事業再構築補助金」。
総予算1兆1,485億円、中小企業でも最大6,000万円もの補助金を受け取れるという、過去に類を見ない規模の補助金事業として注目を集めています。
今回は事業再生構築補助金の公募概要や指針、申請要件、ポイントなどについて詳しく解説します。
目次
事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)とは、コロナ禍による経済状況の変化に対応するために中小企業の事業再構築を支援し、日本経済の行動転換を促すことを目的に交付される補助金です。
予算額は、2022年度が6,123億円だったのに対して、2023年度は5,800億円となっています。
という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する目的で設立された制度です。
「事業再構築補助金」の公募は、2023年度中に計3回おこなわれています。2024年4月頃から、第12回の公募受付が開始する予定です。
受付状況 | スケジュール |
---|---|
第8回公募 (公募終了) |
2022年10月3日:開始 2023年1月13日:締切 |
第9回公募 (公募終了) |
2023年1月16日:開始 2023年3月24日:締切 |
第10回公募 (公募終了) |
2023年3月30日:開始 2023年6月30日:締切 |
第11回公募 (公募終了) |
2023年8月10日:開始 2023年10月6日:締切 |
第12回公募 (公募見込み) |
2024年4月頃 |
事業再構築補助金の申請にはかなりの準備期間が必要です。スムーズに申請を終えられるように、以下の準備を進めておきましょう。
事業再構築補助金は、ものづくり補助金※との併用は可能ですが、事業再構築補助金と内容が異なる別の事業でなければ補助金を受けることはできません。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
内容が異なる別の事業であれば、同じ事業者が異なる補助金を受けることは可能です。 ただし、同一事業で複数の国の補助金を受けることはできません。複数回、事業再構築補助金を受けることはできません。
他にも補助金を受ける際に注意する点がありますので、詳しくは上記Webサイトをご確認ください。
事業再構築補助金の対象者は、新型コロナウイルス感染症の影響で深刻な経営状況にある、中小企業・中堅企業・個人事業主(フリーランス)・企業組合です。
申請には、新分野展開や業態転換、事業・業種転換等といった“思い切った事業再構築”に意欲を持ち、かつ以下の条件をすべて満たす必要があります。
すべての条件を満たしていることを示す事業計画書や各種書類を提出し、審査員による審査を経て事業計画が認められれば、予算内で補助金額が決定、交付されます。
取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡
大する業種・業態に属していること。
売り上げが減っていること。申請前直近6カ月間のうち、任意の3カ月の合計売上高が、コロナ以前の同3カ月の合計売上額と比較して10%以上減少している中小企業等であること。
国が示す事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換をおこなうこと。
事業再構築補助金の支援の対象を明確化するため「事業再構築」の定義等について説明するもので、経済産業省のホームページで確認できます。
本補助金事業に申請するためには、事業再構築=新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換または事業再編の5つのうち、いずれかの類型に該当する事業計画を認定支援機関とともに策定することが必要となります。
中小企業を支援できる機関として、経済産業大臣が認定した機関のこと。全国で3万以上の金融機関、支援団体、税理士、中小企業診断士等が認定を受けており、中小企業庁のホームページで確認できます。
事業計画は補助事業終了後、3~5年で付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年率平均3.0%~5.0%以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%~6.0%以上増加の達成が見込まれるものであること。
事業再構築補助金の具体的な活用方法は、さまざまあります。
たとえば、オフィス勤務をする方に向けてお弁当販売をおこなっていた飲食店が、高齢者向けの食事宅配事業を開始する際、事業再構築補助金を活用できます。店舗のみで衣類を販売していた小売業者が、全国に向けてネット販売を開始する際にも活用可能です。
業種 | 業態 |
飲食業 | ・喫茶店経営 ・居酒屋経営 ・レストラン経営 ・弁当販売 |
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小売業 | ・衣服販売業 ・ガソリン販売 |
サービス業 | ・ヨガ教室 |
製造業 | ・半導体製造装置部品製造 ・航空部品製造 ・ロボット関連部品製造 ・医療機器部品の製造 ・伝統工芸製造 |
運輸業 | ・タクシー事業 |
食品製造業 | ・和菓子製造、販売 |
建設業 | ・土木製造、造園 |
情報処理業 | ・画像処理サービス |
事業再構築補助金は、事業の再構築にかかる費用のすべてが補助対象というわけではありません。原則として補助対象の経費は、下記の条件を満たしていることが大前提です。
補助対象となる経費の条件
下記が事業再構築補助金の補助対象となる経費の一例です。
広告宣伝費や販促費など事業資産性が低い一過性の経費は対象外ではないものの、それらが補助対象経費の大半を占める場合は、本補助金事業の対象とされないことにも注意が必要です。
下記は、事業再構築補助金の補助対象外となる経費の一例です。
事業再構築補助金の審査に通れば、具体的にどのくらいの補助金がもらえるのでしょうか?
事業再構築補助金では、申請者の事業規模や応募枠ごとに次のように補助金の金額の範囲が定められており、申請時に提出した事業計画に応じた補助金が交付されることになっています。
成長枠は、成長分野への大胆な事業再構築に取り組む中小企業等を支援します。
補助金額 | 従業員数20人以下 | 100万円~2,000万円 |
---|---|---|
従業員数21~50人 | 100万円~4,000万円 | |
従業員数51~100人 | 100万円~5,000万円 | |
従業員数101人以上 | 100万円~7,000万円 | |
補助率 | 中小企業者等 | 1/2 大規模な賃上げをおこなう場合は2/3 |
中堅企業等 | 1/3 大規模な賃上げを行う場合は1/2 |
グリーン成長枠は、研究開発や技術開発、または人材育成をおこないながらグリーン成長戦略「実行計画」に取り組む中小企業等を支援します。
補助金額 | 中小企業者等 | 従業員数20人以下 | 100万円~4,000万円 |
---|---|---|---|
従業員数21~50人 | 100万円~6,000万円 | ||
従業員数51人以上 | 100万円~8,000万円 | ||
中堅企業等 | 100万円~1億円 | ||
中小企業者等 | 100万円~1億円 | ||
中堅企業者等 | 100万円~1.5億円 | ||
補助率 | 中小企業者等 | 1/2 大規模な賃上げをおこなう場合は2/3 |
|
中堅企業等 | 1/3 大規模な賃上げを行う場合は1/2 |
卒業促進枠は、成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者を対象とした上乗せ支援です。
補助金額 | 成長枠・グリーン成長枠の補助金額上限に準じる | |
---|---|---|
補助率 | 中小企業者等 | 1/2 |
中堅企業等 | 1/3 |
大規模賃金引上促進枠は、成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、大規模な賃上げに取り組む事業者に対する上乗せ支援です。
補助金額 | 100万円~3,000万円 | |
---|---|---|
補助率 | 中小企業者等 | 1/2 |
中堅企業等 | 1/3 |
産業構造転換枠は、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の中小企業等が取り組む事業再構築を支援します。
補助金額 | 従業員数20人以下 | 100万円~2,000万円 |
---|---|---|
従業員数21~50人 | 100万円~4,000万円 | |
従業員数51~100人 | 100万円~5,000万円 | |
従業員数101人以上 | 100万円~7,000万円 | |
補助率 | 中小企業者等 | 2/3 |
中堅企業等 | 1/2 |
廃業を伴う場合は、廃業費として最大2,000万円を補助金額に上乗せされます。
最低賃金枠は、最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な中小企業等の事業再構築を支援します。
補助金額 | 従業員数5人以下 | 100万円~500万円 |
---|---|---|
従業員数6~20人 | 100万円~1,000万円 | |
従業員数21人以上 | 100万円~1,500万円 | |
補助率 | 中小企業者等 | 3/4 |
中堅企業等 | 2/3 |
原油価格や物価高騰等の影響を受ける中小企業等の事業再構築を支援します。
補助金額 | 従業員数5人以下 | 100万円~1,000万円 |
---|---|---|
従業員数6~20人 | 100万円~1,500万円 | |
従業員数21~50人 | 100万円~2,000万円 | |
従業員数51人~ | 100万円~3,000万円 | |
補助率 | 中小企業者等 | 2/3 |
中堅企業等 | 1/2 |
ここでいう中小企業とは、中小企業基本法第2条が定める事業者のことを指し、いわゆる個人事業主もこれに含まれます。一方、中堅企業は資本金が10億円未満の会社を指します。
製造業(その他) | 資本金3億円以下の会社または従業員数300人以下の会社及び個人 |
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卸売業 | 資本金1億円以下の会社または従業員数100人以下の会社及び個人資本金1億円以下の会社または従業員数100人以下の会社及び個人 |
小売業 | 資本金5千万円以下の会社または従業員数50人以下の会社及び個人 |
サービス業 | 資本金5千万円以下の会社または従業員数100人以下の会社及び個人 |
なお、収益事業をおこなう一般社団法人や一般財団法人、NPOも本補助金制度の対象に含まれますが、大企業の子会社などのいわゆる「みなし大企業」は対象外です。
事業再構築補助金は原則として後払い、つまり事業者による支出を確認した後に支払われます。設備の購入などをおこなう補助事業期間は12カ月~14カ月です。なお、補助事業期間終了後5年間は、国によるフォローアップがおこなわれ、経営状況や設備の管理状況などについて年次報告が求められます。
補助金は原則、返還不要ですが万が一、補助金の使途に関する不正行為が認められた場合は補助金返還事由となり、法令に基づく罰則が適用される可能性もあります。
事業再構築補助金の審査は、事業計画をもとにおこなわれます。前述のとおり、事業計画は必ず国の定める「認定経営革新等支援機関(認定支援機関)」とともに策定することとされています。
・補助金の審査は、事業計画を基に行われます。補助金交付候補者として採択されるためには、合理的で説得力のある事業計画を策定することが必要です。
・事業計画は、必ず事業者自身で策定してください。認定経営革新等支援機関には、申請する事業計画の確認のほか、事業実施段階でのアドバイスやフォローアップも期待されています。
では具体的にどのような事業計画を策定すれば、審査に通りやすいのでしょうか?
まず、理解しておきたいのが、本補助金事業の趣旨は「新規事業創出の支援」ではなく、あくまでも事業の「再構築の支援」であることです。つまり審査で採択されるためには、現在手掛けている事業で培ったノウハウや技術、自社の既存の強みを活かせる事業計画であることが大前提です。
まったくのゼロからのスタートが必要な事業計画の場合、新市場で勝ち残っていける理由の説明ができないと採択される可能性が低くなります。
なお具体的な審査項目は、事業実施体制・財務の妥当性、市場ニーズの検証、課題解決の妥当性、費用対効果、再構築の必要性、イノベーションへの貢献、経済成長への貢献などで、公募要領で確認することができます。
では、実際にはどのような事業計画が事業の再構築として認められ、補助金交付対象事業として採択されやすいのでしょうか。
先にも述べた通り、本補助金事業の対象となるのは、経済産業省の「事業再構築指針」の中で示されている、新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換・事業再編・国内回帰の6つのうち、いずれかの類型に当てはまる事業計画です。それぞれの具体例を、事業再構築指針の中から抜粋して紹介します。
主たる業種や事業を変更することなく、新たな製品やサービスを創り出し、新たな市場に進出する事業であること。
都心部の駅前にビジネス客向けのウィークリーマンションを営業していたが、出張客が激減して稼働率が低下したため、リモートワークの普及を見込んで、客室の一部をテレワークスペースや小会議室に改装するとともにオフィス機器を導入し、3年間の事業計画期間終了時点で、当該レンタルオフィス業の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定。
新たな製品やサービスを創り出すことにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更すること。
日本料理店が、換気の徹底をすることからコロナの感染リスクが低いとされ、足元業績が好調な焼肉店を新たに開業し、3年間の事業計画期間終了時点において、焼肉事業の売上高構成比が、標準産業分類の細分類ベースで最も高い事業となる計画を策定。
新たな製品やサービスを創り出すことにより、主な業種を変更する事業計画であること。
レンタカー事業を営む事業者が、新たにコロナ対策に配慮したファミリー向け貸切ペンションを経営し、レンタカー事業と組み合わせた宿泊プランを提供することで、3年間の事業計画期間終了時点において、貸切ペンション経営を含む業種の売上高構成比が最も高くなる計画を策定。
製品の製造方法や、サービスの提供方法を変更する事業計画であること。
店舗でのヨガ教室を経営していたが、コロナの影響で顧客が激減したため、売上げが低迷。サービスの提供方法を変更すべく、店舗を縮小し、オンライン教室を新たに開始。オンライン教室の売上高が、3年間の事業計画期間終了後、総売上高の10%以上を占める計画を策定。
会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等をおこない、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかをおこなうこと。
「国内回帰」とは、海外で製造等する製品について、その製造方法が先進性を有する 国 内生産拠点を整備することを指します。
反対に、次のような事業計画は原則として採択されない(採択されにくい)と考えたほうが良いでしょう。
申請要件を満たしておらず、不採択となる可能性が高い理由
採択されにくい理由
「事業再構築補助金」の申請には事業計画書のほかに、主に次のような書類を提出する必要があります。
詳しくは公募要領のP55~58で確認できます。事業計画書の作成に加え、必要書類を整えるにはかなりの手間と時間がかかるため、事業再構築補助金の申請は思いついたらすぐにできる類のものではありません。
公募申請の少なくとも2カ月、できれば3カ前には準備に着手しておきたいものです。
なお、事業計画の策定は金融機関やコンサルティング業者などの認定支援機関とともにおこなうことができ、専門業者に申請手続きのサポートを依頼することもできますが、申請そのものの代行は認められておらず、事業者自身がおこなう必要があることにも留意してください。
事業再構築補助金の受付や申込みに関しての相談窓口やお問い合わせ先は、以下のとおりです。
<事業再構築補助金事務局コールセンター(経済産業省)>
受付時間: 9:00~18:00(日曜・祝日を除く)
電話番号:<ナビダイヤル>0570-012-088
<IP電話用> 03-4216-4080
<事業再構築補助金事務局システムサポートセンター(経済産業省)>
受付時間:9:00~18:00(土日祝日を除く)
電話番号:050-8881-6942
「事業再構築補助金」の申請時に問い合わせが多いよくある質問について、中小企業庁がWebサイトで公表しています。
事業再構築補助金は、かつてない予算規模で手厚い補助が受けられます。その分、事業計画に求められるレベル(難易度)も高く、軽い気持ちでは採択を勝ち取ることはできません。
「補助金をもらえたら、あんな事業をやってみたい」という発想ではなく、「あの事業をやるために、ぜひ補助金を獲得したい」という能動的な姿勢で申請に取り組むことが大切です。
本業が忙しく申請にかかる事務手続きに労力や時間を割けない場合は、外部の専門業者のサポートを上手に活用し、申請受付期間中に確実に申請手続きを終えられるよう、準備を進めておきましょう。
30歳で税理士試験5科目合格(簿記論、財務諸表論、法人税、相続税、消費税)。複数の会計事務所に勤務し、個人商店から売上100億円企業まで税務顧問していた実績あり。短期的な目線で物事を判断せず、社長の頭の中をアウトプットし可視化することで、本当にやりたいことや、やるべきことを明確にし、実現するために実行支援を行っている。
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