【社労士監修】最低賃金額とは? 引き上げに伴う企業の課題・対策、助成金を解説

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毎年10月1日に発表される最低賃金の引き上げ額は、最低賃金制度に基づいて発表されます。
最低賃金については、2019年に策定した「働き方改革実行計画」で、年率3%程度を目途として全国加重平均が1,000円になることを目指しています。
今回は最低賃金の概要や企業が遵守すべき事項、また最低賃金に関わる助成金を中心に解説します。

この記事でわかること

  • 最低賃金、最低賃金制度の概要
  • 最低賃金の適用賃金・対象者(対象外の賃金)
  • 最低賃金の確認方法
  • 最低賃金引き上げに活用できる助成金

最低賃金とは

最低賃金とは

最低賃金とは、企業が労働者に支払わなければならない賃金の最低額を定めた制度です。

日本政府は働き方改革実行計画で「年率3%程度を目途に最低賃金を引き上げ、全国加重平均が1,000円になることを目指す」としており、現在も最低賃金の引き上げがおこなわれています。

最低賃金の種類と罰則

最低賃金の種類は2種類あります。

最低賃金の種類 説明 最低賃金以下による罰金
地域別最低賃金 都道府県ごとに定められた最低賃金 最低賃金法により50万円以下の罰金
特定(産業別)最低賃金 特定の産業を対象に定められた最低賃金 労働基準法により30万円以下の罰金

「特定(産業別)最低賃金」は「地域別最低賃金」よりも高い金額水準で定められています。
「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の両方の最低賃金が同時に適用される労働者には、企業は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。

最低賃金額より低い賃金を企業と労働者の合意により定めたとしても、法律によって無効とされます。最低賃金額未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。

適用される賃金・対象者

最低賃金の対象は毎月支払われる基本的な賃金が該当し、時間割増賃金(残業代)やボーナスは対象外となります。

最低賃金はパート、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、すべての労働者に適用されます。
「特定(産業別)最低賃金」は、特定の産業の基幹的労働者とその企業に対して適用されます(18歳未満又は65歳以上の方、雇入れ後一定期間未満の技能習得中の方、その他当該産業に特有の軽易な業務に従事する方などには適用されません。

派遣社員の最低賃金の扱い

派遣労働者の最低賃金は派遣元ではなく、派遣先の最低賃金が適用されます。

「地域別最低賃金」の決め方は、最低賃金審議会が労働者の生計費や賃金、通常の事業の賃金支払能力を総合的に判断して最低賃金審議会が決定します。詳しい最低賃金の決定フローは「厚生労働省の最低賃金の決め方は?」をご確認ください。

最低賃金の確認方法とは

最低賃金の確認方法とは

企業が支払うべき賃金が最低賃金に達しているかどうかは、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を以下の方法で比較して確認します。

確認方法は「厚生労働省の最低賃金のチェック方法は?」をご確認ください。

時間給の場合

時間給は以下の計算式で確認します。

時間給≧最低賃金額(時間額)

日給の場合

日給は以下の計算式で確認します。

日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、日給≧最低賃金額(日額)で確認します。

月給の場合

月給は以下の計算式で確認します。

    月給÷1カ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

出来高制の場合

出来高払制やその他の請負制の場合は、上記計算式によって時間当たりの賃金額に換算し、最低賃金額と比較します。

    総賃金額÷当該賃金計算期間の総労働時間数≧最低賃金額(時間額)

2021年(令和3年)の最低賃金引き上げ幅は過去最大

中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は2021年(令和3年)の最低賃金を、全国平均で28円を目安に引き上げ、時給930円としています。上げ幅は過去最大(2002 年の時給方式から)の3.1%となりました。

一方で、主要先進国の中では引き続き、低い水準となっています。

最低賃金引き上げによる企業の課題と対応

最低賃金の引き上げは企業の利益率を下げるため、急激な最低賃金の引き上げは雇用悪化や企業の成長阻害にもつながります。一方で、業務効率化による生産性向上が求められる中、企業は最低賃金の引き上げに対して、柔軟に対応しなければなりません。

最低賃金引き上げによる企業の課題
課題 対応策
人件費の高騰 非正規雇用を中心に最低賃金額を下回らないように再設定が必要です。
正規雇用のモチベーション維持 正社員の給与カットなど特段の事由がない労働者の不利益につながる賃下げは禁止されています。人事評価制度や福利厚生の改定が必要
設備投資の検討 利益率確保のための業務効率化・生産性向上に効果がある設備投資の検討が必要
助成金の活用を検討
時間外労働の削減 2020年以降、大企業・中小企業関わらず、時間外労働の上限規制が始まり、時間外労働ありきのビジネスモデルからの脱却が必要
退職一時金の取り扱い 退職一時金の年金化による財務負担の軽減を検討

業務改善助成金が活用できます

業務改善助成金が活用できます

業務改善助成金とは、中小企業・小規模事業者の業務の改善を国が支援し、従業員の賃金引き上げを図るために設けられた制度です。

生産性向上のための設備投資(機械設備、POSシステム等の導入)などをおこない、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げた中小企業・小規模事業者に対して、設備投資などにかかった経費の一部を助成してくれます。

▼助成金コースと助成金額

コース区分 引上げ額 引き上げる労働者数 助成金上限額 助成対象事業場 助成率
20円コース 20円以上 1人 20万円 以下の2つの要件を満たす事業場
・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内
・事業場規模100人以下
【事業場内最低賃金900円未満】4/5
生産性を要した場合は9/10
【事業場内最低賃金900円以上】3/4
※生産性を要した場合は4/5
2~3人 30万円
4~6人 50万円
7人以上 70万円
10人以上 80万円
30円コース 30円以上 1人 30万円
2~3人 50万円
4~6人 70万円
7人以上 100万円
10人以上 180万円
60円コース 60円以上 1人 60万円
2~3人 90万円
4~6人 150万円
7人以上 230万円
10人以上 300万円
90円コース 90円以上 1人 90万円
2~3人 150万円
4~6人 270万円
7人以上 450万円
10人以上 600万円

申請コースごとに定める引上げ額以上、事業場内最低賃金を引き上げた場合、生産性向上のための設備投資等にかかった費用に助成率を乗じて算出した額を助成します。

10人以上の上限額区分は事業場内最低賃金900円未満の事業場や売上高や生産量などの事業活動を示す指標の直近3カ月間の月平均値が前年又は前々年の同じ月に比べて、30%以上減少している事業者の2つの要件が必要です。

支給の要件・助成額・手続きについて

業務改善助成金の支給に必要な要件は以下となります。

その他、申請に当たって必要な書類があります。

生産性を向上させた企業は労働関係助成金が割増されます。詳細は厚生労働省の業務改善助成金をご確認ください。

業務改善助成金は電子申請での申請も可能です。

業務改善助成金は以下の手続きで申請・実施し、支給を受けられます。

業務改善助成金の手続き・実施

  1. 助成金交付申請書 の提出(業務改善計画と賃金引上計画を記載)
  2. 助成金交付決定通知を受けた後、業務改善計画と賃金引上計画の実施
  3. 事業実績報告書を都道府県労働局に提出(業務改善計画の実施結果と賃金引上げ状況を記載)
  4. 審査後、助成金の額の確定通知があり次第、支払請求書(様式第13号) を提出
  5. 助成金の支払い

働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)とは、中小企業事業主の団体や、その連合団体(以下「事業主団体等」)が、その傘下の事業主のうち、労働者を雇用する事業主(以下、構成事業主)の労働者の労働条件の改善のために、時間外労働の削減や賃金引上げに向けた取組みを実施した場合に、その事業主団体等に対して助成する制度です。

給対象の事業主団体等・対象取り組み

支給対象の事業主団体等とは、3事業主以上(共同事業主においては10事業主以上)で構成する、次のいずれかに該当する事業主団体等です。

事業主団体等 要件
事業主団体 ・法律で規定する団体等(事業協同組合、事業協同小組合、信用協同組合、協同組合連合会、企業組合、協業組合、商工組合、商工組合連合会、都道府県中小企業団体中央会、全国中小企業団体中央会、商店街振興組合、商店街振興組合連合会、商工会議所、商工会、生活衛生同業組合、一般社団法人及び一般財団法人)
・上記以外の事業主団体(一定の要件あり)
共同事業主 共同するすべての事業主の合意に基づく協定書を作成している等の要件を満たしていること

事業主団体等が労働者災害補償保険の適用事業主であり、中小企業事業主の占める割合が、構成事業主全体の2分の1を超えている必要があります。
中小企業事業主とは、以下のAまたはBの要件を満たす中小企業になります。

中小企業事業主とは、以下のAまたはBの要件を満たす中小企業になります。

業種 A.資本又は出資額 B.常時雇用する労働者
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

成果目標・支給額

成果目標は、支給対象となる取組内容について、事業主団体等が事業実施計画で定める時間外労働の削減又は賃金引上げに向けた改善事業の取組をおこない、構成事業主の2分の1以上に対してその取組み又は取組結果を活用することと定められています。

成果目標の達成に向けて取り組んだ場合に、支給対象となる取組みの実施に要した経費が支給されます。

支給金額

1対象経費の合計額
2総事業費から収入額を控除した額
3上限額500万円
都道府県単位又は複数の都道府県単位で構成する事業主団体等(構成事業主が10以上)に該当する場合は、上限額1,000万円

最低賃金:まとめ

企業・労働者ともに社会的影響が高い最低賃金は、引き上げに応じて、適切に対応しなければなりません。

最低賃金の引き上げへの対応だけでなく、業務効率化や生産性向上を目的とした助成金を積極的に活用しましょう。