中途採用等支援助成金とは、中途採用を積極的におこなっている事業主が受けられる助成金です。
受給要件が比較的通りやすいため、必要な書類が用意できれば受給しやすい助成金といえます。
今回は、中途採用等支援助成金の制度の内容から受給条件、申請方法までを解説します。
目次
中途採用等支援助成金とは、中途採用の拡大を図る取り組みをおこなっている事業主に対して支払われる助成金です。
日本では少子化により、新卒の人材確保は年々難しくなっており、中途採用による雇用強化を重視する企業が増えています。
中途採用等支援助成金は、そんな中途採用の雇用を促進する中小企業のために創立された助成金で3つのコースに分類されています。
中途採用等支援助成金には、
の3つのコースがあります。
それぞれ給付額や申請できる要件、手続きの方法が異なります。
中途採用拡大コースは、雇用管理制度を整備したうえで、中途採用の拡大を図ることで助成が受けられる「中途採用拡大助成」です。
中途採用拡大の方法のうち「中途採用の情報を公開し、かつ中途採用者数を増やした」場合、追加で「定着助成」を受けることができます。
また、中途採用拡大助成を受けてから生産性が向上した場合、追加で「生産性向上助成」を受けることもできます。
中途採用拡大助成を申請できる事業主は、以下の2つの条件をどちらも満たしたうえで、「中途採用計画」を管轄の労働局に提出する必要があります。
中途採用拡大助成を受けている事業主は、中途採用企画の計画期間の初日が属する会計年度の前年度に比べて、3年度後の生産性が6%向上した場合、追加で「生産性向上助成」を受けることができます。
たとえば、会計年度が4月開始の会社が、2021年10月1日に開始する中途採用企画を立てたとき、2024年度の生産性が2020年度よりも6%向上していた場合、生産性向上助成の受給が可能です。
中途採用拡大助成
①中途採用率の拡大1事業所あたり50万円または70万円 (中途採用率によって変動) |
|
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②今回初めて中途採用をおこなう事業所 | ①に加えて10万円 |
③45歳以上の方の初採用 | 1事業所あたり60万円または70万円 (雇用時の年齢が60歳以上の対象労働者を雇用すると70万円) |
④情報公表・中途採用者数の拡大(中途採用者数拡大助成) | 1事業所あたり30万円 |
⑤情報公表・中途採用者数の拡大(定着助成) | ④に加えて20万円 |
生産性向上助成
①中途採用率の拡大1事業所あたり25万円 | |
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②45歳以上の方の初採用 | 1事業所あたり30万円 |
③情報公表・中途採用者数の拡大 | 1事業所あたり15万円 |
中途採用率の計算方法については、厚生労働省「中途採用等支援助成金ガイドブック(中途採用拡大コース)」をご覧ください。
受給までは以下の流れをおこないます。
1.中途採用計画の届出
最初に、中途採用計画を作成し、労働局へ提出しましょう。
中途採用計画は、計画初日の前日から6カ月前~計画初日の前日までに提出します。
・中途採用計画(変更)届
・中途採用計画
・採用規定・就業規則・賃金規定・人事評価規定など、中途採用者に適用される雇用管理制度が確認できる書類
・中途採用率算定対象一覧
・中途採用者一覧
・情報公開内容確認票
・中途採用の情報公表が掲載されている、自社Webサイト等の写し等の書類
2.計画内容の実行
中途採用計画に記入した内容を実行しましょう。
計画内容どおりに事業を実施しなければ、助成金は受給できないので注意が必要です。
変更がある場合は、中途採用計画を提出した労働局へ問い合わせてください。
3.中途採用拡大助成の支給申請
計画終了から6カ月経過する日の翌日から2カ月以内に、中途採用拡大助成の支給申請をしましょう。
支給申請には、以下の書類が必要です。
・支給申請書
・支給対象者雇用状況等申立書
・中途採用率算定対象者一覧
・採用規定・就業規則・賃金規定・人事評価規定など、雇用管理制度が確認できる書類
・雇用契約書など、期間の定めのない労働者であることが確認できる書類
・支給対象者の雇用日から支給申請日までに支払われた賃金の詳細がわかる賃金台帳
・支給対象者の雇用開始月の出勤簿
4.生産性向上助成の支給申請
実際に生産性が向上すれば、生産性向上助成の支給申請ができます。
事業を実行した年度の3年後の会計年度末日の翌日から5カ月以内に、生産性向上助成の支給申請をしましょう。
・支給申請書
・支給決定通知書
・採用規定・就業規則・賃金規定・人事評価規定など、雇用管理制度が確認できる書類
・支給申請日までに支払われた賃金の詳細が分かる賃金台帳
・支給対象者一覧
生産性向上助成は申請までに時間がかかるので、申請を忘れないようにスケジュールを立てましょう。
UIJターンコースは、地方創生促進交付金を活用して移住支援制度を利用してUIJターンをおこなった人を採用した事業主に支払われる助成金です。
具体的には、UIJターン者を採用するにあたって掛かる以下の経費が助成されます。
中途採用拡大助成を申請できる事業主は、以下の条件を満たしたうえで、「採用計画書」を管轄の労働局に提出する必要があります。
以下の要件に「すべて当てはまる」労働者を1人以上雇用すること
給付額は以下のとおりです。
中小企業 | 中小企業以外 | |
助成率1/21/3 | ||
---|---|---|
上限額 | 100万円 | 100万円 |
1.採用計画書の提出
まず、労働局に採用計画書を提出します。
計画期間が始まる3カ月以内~前日までに提出する必要があります。
・計画書
・事業所の事業概要がわかるもの(パンフレット、組織図など)
2.採用活動・雇用
提出した計画通りに採用活動を進め、UIJターン者を雇用します。
なお、計画期間は6カ月以上~12カ月以内ですので、計画期間内に対象労働者を雇用しましょう。
3.支給申請
支給申請を、計画期間終了日から2カ月以内におこないましょう。
この時、雇用日から6カ月を経過している必要がありますが、6カ月経っていない場合は6カ月経過後から2カ月以内に提出します。
・支給申請書
・助成額算定書
・対象労働者雇用状況等申立書
・認定通知書
・マッチングサイトに移住支援金対象求人を掲載したことが分かる書類
・対象労働者の雇用契約書または雇入通知書
・対象労働者の雇入れ日から6カ月間の賃金台帳
・対象労働者の雇入れ日から6カ月間の出勤簿
・対象労働者の移住支援金の受給を証する書類
・対象経費の支払の発生原因が確認できる書類(請求書や見積書など)
・対象経費の支払を確認できる書類(振り込み明細など)
・資本の額または出資の総額を記載した書類等(登記簿謄本など)
生涯現役起業支援コースは、40歳以上の中高年齢者が起業し、同じ中高年齢者を雇用した場合に事業主に助成されるものです。
以下のような、雇用創出に掛かった経費が助成対象となる「雇用創出措置助成」があります。
募集・採用に関する費用
また、雇用創出措置助成を受けてから生産性が向上した場合、追加で「生産性向上助成」を受けることができます。
雇用創出措置助成を申請できる事業主は、以下の条件を満たしたうえで、「雇用創出措置に係る計画書」を管轄の労働局に提出する必要があります。
2.計画期間内に、対象労働者を一定数雇用すること
・60歳以上:1名以上
・40歳以上~60歳未満:2名以上
・40歳未満:3名以上
雇用創出措置助成を受けている事業主は、雇用創出措置に係る計画書の計画期間の初日が属する会計年度に比べて、3年度後の生産性が6%向上した場合、追加で「生産性向上助成」を受けることができます。
たとえば、会計年度が4月開始の会社が、2021年10月1日に開始する雇用創出措置に係る計画を立てたとき、2024年度の生産性が2021年度よりも6%向上していた場合、生産性向上助成を受けることができます。
中途採用拡大コースでは「当該年度の前年度」と3年度後を比較しているのに対して、こちらは「当該年度」と3年度後を比較しているので、注意が必要です。
雇用創出措置助成の給付額は以下のとおりです。
起業時の年齢:40歳~59歳 | 起業時の年齢60歳以上 | |
助成率1/22/3 | ||
---|---|---|
上限額 | 150万円 | 200万円 |
生産性向上助成:「雇用創出措置助成」により支給された助成額の1/4
受給の流れは以下のとおりです。
1.雇用創出措置に係る計画書の作成・提出
「雇用創出措置に係る計画書」を作成し、労働局へ提出しましょう。
起業日から11カ月以内に提出する必要があります。
計画期間は12カ月以内で、計画書提出の1カ月後~2カ月以内が計画開始日となります。
2.従業員の採用
提出した雇用創出措置に係る計画書に従って、従業員を雇用しましょう。
なお、従業員の採用人数は、年齢によって必要な人数が違います。
60歳以上 | 1名以上 |
40歳以上~60歳未満 | 2名以上 |
40歳未満 | 3名以上 |
計画的に採用を実行し、確実に受給をするようにしましょう。
3.雇用創出措置助成の支給申請
計画期間終了日の翌日から2カ月以内に、雇用創出措置助成の支給申請をします。
・支給要件確認申立書
・支給申請書
・助成額算定書
・雇用創出措置分に関する申出書
このほかにも書類が必要になる場合もあるので、申請前に労働局へ確認しましょう。
4.生産性向上助成の支給申請
実際に生産性が向上すれば、生産性向上助成の支給申請ができます。
・支給要件確認申立書
・生産性要件算定シート
・支給申請書
・生産性向上分に関する申出書
・支給申請合意書(訓練実施者)
このほかにも書類が必要になる場合もあるので、申請前に労働局へ確認しましょう。
これまで3つのコースをご紹介いたしましたが、たとえば、45歳以上の人を雇うのに加えてUIJターン者も雇った場合、「中途採用拡大コース」「UIJターンコース」をそれぞれ申請できます。
助成金には「併給」という制度があり、複数の制度の条件を満たす場合、それぞれ申請すれば助成金を受給することができます。
中途採用等支援助成金は比較的要件が満たしやすく、申請すれば受給しやすい助成金のひとつです。
助成金を受給するポイントは次の2つです。
計画書の内容が実態とそぐわなければ、助成金を受給することはできません。
計画書を出してから事業に変更があった場合、変更届を提出して内容を修正することはできますが、提出できる回数は限られています。
「申請した計画書の内容どおりに事業を実施すること」が、助成金を受給するための大きなポイントです。
計画書の内容が分からないと、計画書どおりに事業が実行されているのか分かりません。
内容が分かりにくい書き方をしてしまうと、申請が通らない可能性があります。
書き方が分からなければ専門家に聞いてみるなど、第三者にも分かりやすい計画書を作成することを心がけましょう。
・「中途採用等支援助成金」とは、中途採用の拡大を図る取り組みをおこなっている事業主に対して支払われる助成金です。「中途採用拡大コース」「UIJターンコース」「生涯現役起業支援コース」の3つのコースがあります。
・要件を満たした事業主は、計画書を始めとする必要な書類を労働局に提出し、計画に沿って中途採用者の雇用を拡大することで、助成金が受給できます。
・労働局に計画書を提出する際は「事業実態に合った内容の計画書を作成すること」「第三者にも内容が分かりやすい計画書を作成すること」が受給に繋がるポイントです。
中途採用者の雇用を考えている、または中途採用者を積極的に雇用している事業主の方は、ぜひこの「中途採用等支援助成金」を活用しましょう。
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