この記事でわかること
- GビズIDの基本知識と取得方法
- GビズIDで利用できる行政システム一覧
- GビズID対応の社会保険手続きの現状
この記事でわかること
近年、社会保険手続きなどは電子申請の義務化が進んでいます。そんな電子申請をする際に必要になる「GビズID」をご存じでしょうか?
GビズIDを取得すると、社会保険手続きの電子申請だけでなく、補助金の申請や複数の行政サービスを手軽に利用できるようになります。
今回はGビズIDの基礎知識や取得方法・GビスIDでできることを中心に、労務担当者が知っておくべき情報をお伝えします。
目次
GビズIDとは、企業から国への申請に関わる複数の行政サービスをひとつのアカウントで利用できるようにする認証システムです。デジタル庁が運営しています。
従来のjGrants(補助金申請システム)や保安ネットに加えて、社会保険手続きの電子申請などといった複数の行政サービスに、インターネットを介して簡単にログインできるようになることです。
特定の法人は、社会保険の一部手続きの電子申請が義務となっています。これまでは企業の確認手段として電子証明書の取得(有料)が必要でしたが、GビズIDを取得すること(無料)で、電子証明書がなくても電子申請が可能です。
GビズIDは3種類のアカウントがあり、各行政システムで利用するアカウントの種別が異なります。
アカウントの種類 | 特徴 |
gBizIDエントリー | 即日発行が可能で、GビジネスIDマイページや行政システムへのログインが可能となります。 |
---|---|
gBizIDプライム | 印鑑証明書を利用し、厳格な確認がおこなわれます。顧問先の代表者が書類と共に申請をします。 |
gBizIDメンバー | 組織の従業員用のアカウントです。gBizIDプライムの利用者が作成します。 |
審査を要する「gBizIDプライム」の場合、原則として約2週間を要するため余裕を持った対応がおすすめです。
アカウントの種類により作成方法が異なり、それぞれデジタル庁によりマニュアルが用意されています。
gBizIDとe-Govは、ともに電子申請に関係する点が共通しています。
一方で、gBizIDが行政手続きの電子申請をおこなう共通認証システムであるのに対し、e-Govは「電子申請の総合窓口」とよばれる行政情報のポータルサイトである点が大きく異なります。
また、gBizIDとe-Govでおこなう電子申請には、以下のような違いもあります。
gBizID | e-Gov | |
---|---|---|
料金 | 無料 | 有料(電子証明書の発行費用) |
電子証明書 | 不要 | 必要 |
必要機器 | PCまたはスマホ | PC |
利用可能な手続き | 少ない | 多い |
GビズIDが利用できる複数の行政サービスとは、特定の法人においては電子申請が義務になっている一部の社会保険手続きだけでなく、補助金申請を含むシステムも含まれます。
行政サービス | 詳細 |
---|---|
jGrants | 公募から事後手続きまでワンストップで全プロセスをデジタル化した申請システム |
社会保険手続きの電子申請 | 厚生年金保険の申請手続きが可能。特定の法人を対象に一部手続きは電子申請が義務 |
保安ネット | 産業保安・製品安全分野の一部手続きをインターネットで提出するサービス |
農林水産省共通申請サービス | 農林水産省の電子申請手続きサービス |
ミラサポplus | 中小企業向け補助金・支援に関する電子申請サイト |
省エネ法定期報告書情報提供システム | 特定事業者等向けに省エネ取組みに有用となる情報を提供するシステム |
鉱業原簿登録更新サイト | 鉱業原簿登録更新が電子申請できるサービス |
経営力向上計画申請プラットフォーム | 経営力向上計画の申請・報告手続きのサポートシステム |
IT導入補助金2021 | ITツールを導入する経費の一部を申請するサービス |
情報処理支援機関【スマートSMEサポーター】認定制度 | ITベンダー等のIT導入支援者を「情報処理支援機関」として認定する制度 |
認定経営革新等支援機関電子申請システム | 経営革新等支援機関としての認定を受けるための申請手続きをオンラインでおこなえるサービス |
食品衛生申請等システム | 食品リコール情報の公開、営業許可申請・届出を電子申請ができるサービス |
DX推進ポータル | 企業のDX推進のための各種支援の電子申請手続きができるサービス |
TeCOT(海外渡航者新型コロナウイルス検査センター) | オンライン上でPCR等検査可能な医療機関を検索・予約できるサービス |
e-Gov | 府省に対するオンライン申請・届出等の手続きの窓口サービスを手掛けるポータルサイト |
事業継続力強化計画電子申請システム | 業継続力強化計画の申請・届出をする為の電子申請システム |
Gビズフォーム | デジタル庁が受け付ける各種電子申請が可能なポータルサイト |
2021年3月時点
特定の法人(大企業)は、社会保険の一部手続きを電子申請でおこなわなければなりません。電子申請義務化対象の帳票は、以下のとおりです。
社会保険の種類 | 対象帳票 |
---|---|
健康保険・厚生年金保険 | 被保険者賞与支払届 被保険者報酬月額算定基礎届 健康保険被保険者報酬月額変更届 厚生年金被保険者報酬月額変更届 70歳以上被用者 算定基礎・月額変更・賞与支払届(厚生年金保険のみ) |
労働保険 | 概算保険料申告書 確定保険料申告書 一般拠出⾦申告書 ※年度更新に関する申告書 増加概算保険料申告書 |
雇用保険 | 被保険者資格取得届 被保険者資格喪失届 被保険者転勤届 ⾼年齢雇用継続給付支給申請 育児休業給付支給申請 |
社会保険関連の電子申請はGビズIDを取得し、申請データ(CSV)を作成、届書作成プログラムから申請できます。
現在、GビズIDを利用した行政申請システムが幅広く展開されており、電子申請や情報収集が可能です。代表的な行政申請システムをご紹介します。
e-Govのリニューアルに伴い、協会けんぽ・日本年金機構(年金事務所)への社会保険手続きの電子申請が可能です。
健保組合への電子申請は、e-Govが非対応のため、社会保険システム連絡協議会に登録されたマイナポータルとの連携が可能なソフトウェアが必要です。健保組合の電子申請に対応したソフトウェアを選びましょう。
e-Govは、行政サービス・施策に関する情報収集や電子申請、法令検索、パブリック・コメント、文書管理、個人情報ファイル簿の検索が可能なポータルサイトです。
2020年11月24日にリニューアルされ、GビズIDやオープンIDでのログインが可能となりました。Mac用のソフトウェアが加わり、スマホから処理状況も確認できるため、行政への申請手続きを効率化できます。申請のための準備も、
の3つのステップで完了します。
e-Govで利用できる申請数※ | |
省庁 | 利用できる申請数 |
---|---|
厚生労働省 ※中央労働委員会含む |
5,235 |
国土交通省 | 203 |
経済産業省 ※資源エネルギー庁、特許庁、中小企業庁を含む |
131 |
総務省 | 95 |
2024年2月22日時点
GビズIDはe-Govと同様にマイナポータルと連携することで、各種社会保険申請が可能です。ひとつのIDとパスワードで申請手続きができ、ワンスオンリーの実現に向けた、官民双方における手続き時間とコスト削減が期待されています。
jGrantsとは、デジタル庁が運営する公募から事後手続きまでの全プロセスをデジタル化した補助金申請システムです。インターネットを経由することで、窓口への移動時間の削減を可能とし、場所に縛られることなく、補助金の申請・届出ができます。
jGrantsから補助金を申請するためにはGビズIDを取得し、トップページの「補助金一覧」から申請可能な補助金を選択します。対象の補助金は公募などの期間開始時に「補助金一覧」に掲載され、順次拡充予定です。
GビズID利用の対象手続きは順次拡大し、電子申請は広がる見込みです。申請手続きのシステム化により、効率性・セキュリティ水準・技術革新対応力・柔軟性・可用性の向上が期待できます。
GビズIDの展開により、特定の法人を対象に社会保険の一部手続きが電子申請義務化され、そのほかの手続きもGビズID(無料)を利用して電子申請がおこなえます。
e-Govもリニューアルされ、健康保険の電子申請手続きも可能です。人事労務クラウドソフトの導入により、電子申請への対応や労務担当者・従業員双方の業務効率化を実現できます。
政府主導の行政システム改革の原則は、クラウドサービスの利用を第一候補とする「クラウド・バイ・デフォルト」を具体化することです。利用者視点でのシステム化を実現するべく、行政システムの刷新が順次おこなわれる予定です。
企業から国への申請に関わる複数の行政サービスを、ひとつのアカウントで利用できるGビズIDは、社会保険手続き(健康保険・厚生年金保険被保険者の報酬月額算定基礎届や報酬月額変更届の申請)の電子申請や、補助金申請などに利用できます。
GビズIDのアカウント(gBizIDエントリー、gBizIDプライム、gBizIDメンバー)を使い分けて効率的に各行政システムを利用するには、クラウド管理ソフトがおすすめです。
1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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