この記事でわかること
- 育児休業制度の概要
- 育児休業の延長申請手続きや期間、必要書類
- 育児休業で取得できる制度
- 育児休業給付金の手続き
育児休暇中の従業員は条件を満たせば、育児休暇の延長が認められます。事業主側は従業員の申請に柔軟に対応し、復帰後の人員配置も考慮しなければなりません。
今回は出産の予定がある、また育児休暇中の従業員からの育児休暇延長の要望に対して、事業主がおこなうべき手続きや対応方法、また、給付金や育児休業についての条件を解説します。
この記事でわかること
なんば社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士
https://www.namba-office.osaka.jp/
ワークスタイルコーディネーター。社会保険労務士
社会保険労務士の中でも10%に満たないと言われる助成金を専門に手掛けるの社会保険労務士。
目次
育児休業とは、事業主に申し出をおこなうことで子どもが1歳(一定の場合、最長2歳)に達するまで、取得できる育児・介護休業法に定められた支援制度です。
また、育児休業期間中に支給される手当を育児休業給付金といいます。
近年、女性だけでなく、男性の育児休暇取得が促進されていますが、厚生労働省が公表している育児休業取得率では、女性は80%を超えているにも関わらず、男性の育児休業取得率は5~6%前後にとどまっています。
日本政府は少子化社会対策大綱の施策に関する数値目標:PDFファイル(内閣府)で、2025年までに男性の育児休業取得率を30%までに、男性の配偶者の出産直後の休暇取得率を80%まで引き上げることを目標にしています。
令和4年4月1日より育児・介護休業法が改正されます。改正内容は令和4年、令和5年と段階的に施行されます。改正の概要は以下の通りです。
育児・介護休業法の改正内容
育児休業期間を延長する場合、まずは延長するための要件を満たすことを確認し、事業主に申請手続きを依頼します。
育児休業は原則として子どもが1歳になるまでの1年間取得できますが、最長2歳まで延長ができます。
また、延長申請には「延長(1歳6カ月まで)」と「再延長(2歳まで)」があり、それぞれ申請が必要です。
育児休業延長を申請するには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
1歳6カ月までの育児休業延長の要件
2歳までの育児休業延長の要件
上記の要件を満たし、育児延長開始の2週間前までに変更の年月日、変更の申出者氏名、変更後の育児休業最終予定日を申請し、所属する事業主に申請します。
育児休業延長の要件を満たした場合、育児休業延長の申し出をおこないます。
また、育児休業延長期間中は社会保険料も免除になり、育児休業給付金も合わせて申請することができます。
以下の場合に育児休業延長が認められますが、事由によって、証明する添付書類が異なります。
住民票は世帯全員が記載されたものを用意します。
事由ごとに必要な証明書(添付書類) | |
保育園に入園できない場合 | 不承諾通知(自治体が発行した書類) |
配偶者が死亡したとき | 住民票・母子手帳 |
負傷、疾病、障害などで、子どもを養育することが難しい場合 | 診断書・母子手帳 |
離婚など事情により配偶者が子どもと同居しないこととなったとき | 住民票・母子手帳 |
育児休業の対象の子どもの次に子どもが生まれる予定、もしくは生まれた場合 | 母子手帳 |
上記の添付書類を事業主に提出すれば、人事・労務担当者がハローワークに申請をおこないます。
また、申請にも期限がありますので注意しましょう。
育児休業期間の延長が認められた場合、育児休業給付金も延長した分が支給されます。しかし、育児休業期間を延長したとしても自動的に育児休業給付金も延長されるわけではなく、別途申請が必要です。
育児休業給付金延長の要件、必要書類は育児休業期間延長と基本的に同じです。
申請手続きも事業主がおこないます。育児休業給付金を延長する際の申請期限は以下の通りです。
育児休業給付金延長の申請期限 | |
延長期間 | 申請期限 |
---|---|
1歳6カ月まで延長 | 子どもが1歳になる日以後、最初に育児休業給付金の支給申請をするとき |
2歳まで延長 | 子どもが1歳6カ月になる日以後、最初に育児休業給付金の支給申請をするとき |
育児休業を延長した際の給付金額は以下の通りです。
現在、男性の育児休業の取得率向上や女性活躍推進、働き方改革の実施において、育児休業の取り組みを強化している事業主が増えています。
育児休暇制度は子どもが1歳に達するまで子どもを養育する必要のある従業員が、事業主に申し出ることによって得られる休暇です。
しかし、育児休業制度は休暇だけでなく、ほかにも利用できる制度があります。
育児休業中に利用できる制度
現在、男性・女性問わず、従業員が安心して育児休暇を取得できるように、事業主は従業員が育児休暇を取得しやすい職場環境を整備するための配慮が育児・介護休業法で定められています。
事業主都合での育児休暇延長申請の拒否は違法です。
しかし、育児休暇延長の申請に必要な書類が揃わない等、従業員側に問題がある場合は、延長申請を却下してもよい場合があるため、注意しましょう。
育児休暇延長の申請には、保育園に申請したが、入園できなかった場合の不承諾通知等が必要です。不承諾通知がない場合、育児休暇延長申請された案件を却下したとしても、違法ではありません。
ただし、「あくまで違法にならない」ということであり、育児休業延長申請をした従業員、また他の従業員の不満の原因になり得えます。
育児休業は、従業員の雇用保護の意味合いが強く、事業主に非がないと判断できる場合であっても管轄省庁・部署である都道府県の労働局雇用環境・均等部に相談しましょう。
労働局雇用環境・均等部では、育児休暇延長の不当利益取り扱いにおけるトラブルの対応・相談をしており、従業員とトラブルになる場合は仲裁に入ってもらうことが可能です。
育児休業の延長は、要件を満たした場合、事業主は延長申請を拒否できません。しかし、申請には期限があるため、保育園に入園できないことを証明する不承諾通知がいつ届くかもしっかりと把握しておきましょう。
やむを得ない理由で、育児休業を延長する際は人事・労務担当者に相談してみてください。