この記事でわかること
- 育児休業制度の概要
- 育児休業の延長申請手続きや期間、必要書類
- 育児休業で取得できる制度
- 育児休業給付金の手続き
この記事でわかること
育児休暇中の従業員は条件を満たせば、育児休暇の延長が認められます。事業主側は従業員の申請に柔軟に対応し、復帰後の人員配置も考慮しなければなりません。
今回は出産の予定がある、また育児休暇中の従業員からの育児休暇延長の要望に対して、事業主がおこなうべき手続きや対応方法、また、給付金や育児休業についての条件を解説します。
目次
育児休業とは、育児休業等取得者申出書を提出することで、子供が1歳(一定の場合、最長2歳)に達するまで、取得できる育児・介護休業法に定められた支援制度です。育児休業期間中に支給される手当を育児休業給付金といいます。
育児休業は、育児をする労働者に対して仕事のくじを両立してもらうための支援制度です。社会復帰後も、残業免除制度や短時間勤務制度などを利用することによって、子供との時間が作れるため育児にも集中できます。
育児休業の目的は、新しい家族のメンバーを迎えた親が、仕事のプレッシャーから一時的に離れて子供の成長と発達をサポートするための重要な時間を確保することです。
また、育児休業は職場における性平等を促進し、母親だけでなく父親も子育てに参加する機会を提供することでジェンダーの役割に対する伝統的な見方を変えることを目指しています。
そして育児休業を経て、社会復帰後でも利用できる制度などは以下があります。
上記の制度には、主に子供の年齢での期限などがあるため注意しましょう。こういった制度などを活用して育児と労働のバランスを取ります。
近年、女性だけでなく、男性の育児休暇取得が促進されていますが、厚生労働省が公表している育児休業取得率では、女性は80%を超えているにもかかわらず、男性の育児休業取得率は5~6%前後にとどまっています。
日本政府は少子化社会対策大綱の施策に関する数値目標:PDFファイル(内閣府)で、2025年までに男性の育児休業取得率を30%までに、男性の配偶者の出産直後の休暇取得率を80%まで引き上げることを目標にしています。
2022年4月1日より育児・介護休業法が改正されました。改正内容は2022年・2023年と段階的に施行されています。改正の概要は以下のとおりです。
育児・介護休業法の改正内容
育児休業期間を延長する場合、まずは延長するための要件を満たすことを確認し、事業主に申請手続きを依頼します。
育児休業は原則として子供が1歳になるまでの1年間取得できますが、最長2歳まで延長ができます。また、延長申請には「延長(1歳6カ月まで)」と「再延長(2歳まで)」があり、それぞれ申請が必要です。
育児休業延長を申請にはケースによって条件が異なるため、それぞれ紹介します。
育児休業を延長できるのは、1歳の誕生日以前の子供が以下の理由などで保育園に入園できなかった場合です。
たとえば、定員超過のため入所できかったという場合は、子供が1歳の誕生日以前であれば延長ができます。延長は、「1歳6カ月まで」と「2歳までの延長」で要件などが異なります。
1歳6カ月までの育児休業延長の要件
2歳までの育児休業延長の要件
上記の要件を満たし、育児延長開始の2週間前までに変更の年月日、変更の申出者氏名、変更後の育児休業最終予定日を申請し、所属する事業主に申請します。
ここからは、「こういう場合って育児休業の延長ができるの?」という実際のケースを解説します。
たとえば、保育園への入所申し込みを忘れている場合や、先述したように定員超過のため入所できかった場合そのまま申し込みをしなかった場合などはどうなるのでしょうか。
答えはその場合「育児休業の延長対象とならない」です。また、保育所への入所希望日や利用開始日が、1歳の誕生日の翌日以降となっている場合も対象外となるため注意しましょう。
「慣らし保育」とは、2週間~1カ月程度に通常の保育時間よりも短時間で保育園に入れることです。パパママの勤務時間などとバランスが取れるメリットがあるため、利用する家庭も多いでしょう。
育児休業の延長は原則、「保育園への入園ができなかった場合」です。慣らし保育は、その点保育園への入園ができているため適用外となるのです。
上記の理由から、慣らし保育をする場合は通常の期間で利用しましょう。通常の期間であれば育児休業給付金がもらえるため、復職までの支援として利用できます。
育休中に2人目の妊娠が発覚した場合も同様に、2人目の出産前・出産後の産休、そして育休を利用できます。
つまり、育児休業の延長というよりは2人目の出産からまた通常の期間育児休業を利用することができるということになります。
契約社員も育休を取得でき、契約社員でも保育施設に入れないなどの場合は最長2歳まで延長可能です。
明らかに育休延長の趣旨ではない申請(条件を満たしていない場合の申請)があった際は、以下の対応になると厚生労働省が公表しています。
上記のような申請があった場合に企業側には、やむを得ない理由があるかどうかを対象労働者へ確認してもらうことがあります。
やむを得ない理由とは、内定辞退について申込み時点と内定時点で住所や勤務場所等に変更があり、内定した保育所などに子供を入所させることが困難であったことなどが該当します。
育児休業に関する制度はいくつかあります。育休を延長する前に、一緒に利用できる制度などについてよく理解しておきましょう。
それぞれの特長を解説します。
2022年の育児介護休業法の改正によって、これまで原則1回の取得まででしたが、男女ともそれぞれ2回まで取得することが可能になりました。
たとえば、妻の育児休業が終わり復職するタイミングで一度、パートナーに育児休業をとってもらうなどの交代が2回できます。経済的な理由があっても2人で子育てをしたいという方も計画的に使えるようになります。
育休の延長前、つまり子供が1歳の誕生日を迎える前までは、体調変化の大きい周期などがあり子育てが大変な時期もあります。そういったタイミングで、パートナーと一緒に子育てできる時間が増やすことが可能です。
育児休業方は、制度内容や給付金など都度改正されます。来年に育児休業を利用予定の方は、今後改正される予定の内容などをチェックしておきましょう。
パパ・ママ育休プラスとは、両親が一緒に育児休業を取得する場合に子供が1歳2カ月になるまで延長できるという制度です。しかし適用には以下の条件があります。
また、1人当たりの育休取得可能最大日数は通常通り「産後休業含め1年間」であることは変わらないため、延長できる2カ月間はどちらかが対応するようになるでしょう。
ただし配偶者とできるだけ長い期間2人で子育てしたいという場合はこの「パパ・ママ育休制度」を利用すると良いでしょう。
育児休業延長の要件を満たした場合、育児休業延長の申し出をおこないます。「育児休業申出書」は事業主が準備します。事業主が準備していない場合、厚生労働省からダウンロードが可能です。
以下の場合に育児休業延長が認められますが、事由によって証明する添付書類が異なります。住民票が必要な場合は、世帯全員が記載されたものを用意しましょう。
事由ごとに必要な証明書(添付書類) | |
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保育園に入園できない場合 | 不承諾通知(自治体が発行した書類) |
配偶者が死亡したとき | 住民票・母子手帳 |
負傷、疾病、障害などで、子供を養育することが難しい場合 | 診断書・母子手帳 |
離婚など事情により配偶者が子供と同居しないこととなったとき | 住民票・母子手帳 |
育児休業の対象の子供の次に子供が生まれる予定、もしくは生まれた場合 | 母子手帳 |
上記の添付書類を「育児休業申請書」と一緒に事業主に提出すれば、人事・労務担当者がハローワークに申請をおこないます。また、申請にも期限がありますので注意しましょう。
そして、育児休業延長期間中は社会保険料も免除になり、育児休業給付金も合わせて申請することができます。ここで注意したいのは、育児休業給付金を延長する場合は別途申請が必要ということです。
育児休業を延長する場合は、育児休業給付金について勝手に延長してくれるわけではありません。事業主を通して市町村への必要書類の提出をして適用となります。
事業主が用意する「育児休業給付金支援申請書」と共に、必要書類が要ります。
自治体によって書類の呼び方に違いがあるのかもしれませんが、1歳誕生日前において保育所に入っていない事実を証明すること書類が必要です。
育児休業は利用中に「育児休業給付金」が一定金額支給されます。育休を延長している場合は、育休手当(給付金)はもらえるのでしょうか?
結論から言えば、育児休業の延長中でも通常期間中にもらえる額と同等の金額が支給されます。具体的には以下支給計算式の50%の方で算出されます。
今後は、育児休業給付金の80%へ引き上げが検討されています。
現在、男性の育児休業の取得率向上や女性活躍推進、働き方改革の実施において、育児休業の取り組みを強化している事業主が増えています。
育児休暇制度は子供が1歳に達するまで子供を養育する必要のある従業員が、事業主に申し出ることによって得られる休暇です。しかし、育児休業制度は休暇だけでなく、ほかにも利用できる制度があります。
現在、男性・女性問わず、従業員が安心して育児休暇を取得できるように、事業主は従業員が育児休暇を取得しやすい職場環境を整備するための配慮が、育児・介護休業法で定められています。
事業主都合での育児休暇延長申請の拒否は違法です。しかし、育児休暇延長の申請に必要な書類が揃わないなど従業員側に問題がある場合は、延長申請を却下してもよい場合があるため注意しましょう。
育児休暇延長の申請には、保育園に申請したが入園できなかった場合の不承諾通知等が必要です。不承諾通知がない場合、育児休暇延長申請された案件を却下したとしても違法ではありません。
ただし「あくまで違法にならない」ということであり、育児休業延長申請をした従業員、また他の従業員の不満の原因になり得えます。
育児休業は従業員の雇用保護の意味合いが強く、事業主に非がないと判断できる場合であっても管轄省庁・部署である都道府県の労働局雇用環境・均等部に相談しましょう。
労働局雇用環境・均等部では、育児休暇延長の不当利益取り扱いにおけるトラブルの対応・相談をしており、従業員とトラブルになる場合は仲裁に入ってもらうことが可能です。
育児休業の延長は要件を満たした場合、事業主は延長申請を拒否できません。しかし申請には期限があるため、保育園に入園できないことを証明する不承諾通知がいつ届くかもしっかりと把握しておきましょう。
やむを得ない理由で、育児休業を延長する際は人事・労務担当者に相談してみてください。
社会保険労務士の中でも、10%に満たないと言われる助成金を専門に手掛ける特定社会保険労務士/ワークスタイルコーディネーター。なんば社会保険労務士事務所の所長。
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