社会全体がデジタル化している現代、経済成長を実現するために行政サービスの見直しや行政の在り方の変革が問われています。今回はデジタル社会に対応したデジタル・ガバメントの推進により、企業が受ける影響や意識すべきポイントについて解説します。
デジタル・ガバメントとは、官民協働を軸として、デジタル技術を活用しながら行政サービスの見直しをおこない、行政の在り方そのものを変革することです。利用者視点でサービス全体を簡単かつ便利にすることを目的とし、官民の生産性低下に起因する既存業務をゼロベースで見直します。この結果創出された時間と労力を良質なサービス提供と新たな社会基盤構築につなげ、豊かな社会の実現を目指します。
利用者中心の行政サービスを提供するべく、政府はデジタル・ガバメント実行計画の主な推進方針として「サービス設計12箇条」を掲げています。その趣旨は下記の通りです。
行政手続きの デジタル化 |
利用者中心の行政サービスの実現と手続きの原則オンライン化を通じて、業務改革を実施する |
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ワンストップ サービスの推進 |
利用者の利便性向上を目的とし、関連する行政手続きと民間手続きを含めたワンストップ化を推進する |
行政サービスとの連携 | 多様なサービスとデータを行政間で連携させ、相互運用性を高めながら、連携基盤の整備および活用を推進する |
デジタル技術の活用 | 国民・企業に関わりが深い分野を中心に、AI・RPAなどデジタル技術の活用により業務効率化を推進する |
デジタル・ガバメントの推進により、今後の企業活動では業務改革(BPR)やデジタル化の推進をさらに加速させる準備が必要です。過去の行政手続きオンライン化の際は利用件数が0件など、利用者視点のデジタル化とはいえないものでした。こうした観点から、「利用者中心の行政サービス」の業務改革が推進されるため、企業としても従業員を含む利用者視点でのクラウドサービス化などの取組が必要となります。
ワンストップサービスとは、一度の手続きで複数の行政手続きが完了できるサービスです。利用者の利便性向上の実感を目的とし、個人・民間企業が行政手続きの負担を大幅に軽減できます。社会保険関連の申請手続きが多い企業はクラウド型システムを導入することで、労務担当者と全従業員の業務効率化と、手続きのワンストップ化が実現します。
【参考】ワンストップサービス│内閣府
2020年4⽉以降に開始される各特定の法⼈の事業年度から電子申請義務化がスタートします。電子証明書の取得後、行政のポータルサイトであるe-Gov(イーガブ)より直接申請をおこなうか、APIソフトを利用し、企業が保有する人事・給与などのデータから申請をおこないます。
【参考】2020年4⽉から特定の法人について 電子申請が義務化されます。│厚生労働省
間接部門と呼ばれる人事・総務・経理など労務管理部門の業務改革が必要です。クラウドサービスやBPO・アウトソーシングの導入による業務改革は、社内業務の効率化とデジタル化のほか、固定コストや人員削減による時間創出につながり、本来注力すべき人事制度の立案や職場環境の改善、従業員の健康チェックといったコア業務に時間を割り振ることができます。
社会保険労務士の中でも、10%に満たないと言われる助成金を専門に手掛ける特定社会保険労務士/ワークスタイルコーディネーター。なんば社会保険労務士事務所の所長。
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