この記事でわかること
- 育児休業制度の要件と支給金額
- 産前産後休業との違い
- 復職までの実施できる具体的な制度
法令で定められた育児休業(育児休業給付)と産前産後休業には明確な違いがあります。今回は労働基準法と育児・介護休業法の観点から、それぞれ解説します。
この記事でわかること
さくらHumanPlus 代表 特定社会保険労務士
https://human-plus.sakura.ne.jp/
ワークスタイルコーディネーター。社会保険労務士
卒業後、服飾関係企業にて、事務・販売・営業職を経て、2007年11月に社会保険労務士に合格。
育児休業制度とは、原則として1歳に満たない子どもを養育する労働者が、会社に申し出ることで、養育する期間を休業できる、育児・介護休業法により定められた制度です。
期間を定めて雇用される者は、次の①②いずれにも該当すれば育児休業をすることができます。
育児休業取得条件
ただし、対象外とする労使協定がある場合に限り、以下の要件を満たす労働者は育児休業を取得できません。
また、日々雇用される方も育児休業を取得できません。
育児休業給付金とは、1歳(一定の要件に該当した場合は1歳2カ月。支給対象期間の延長に該当する場合は1歳6カ月または2歳)未満の子供を養育するための育児休業を取得した被保険者に対して、「休業開始前の2年間に賃金支払基礎日数11日以上ある月」(完全月)が12カ月以上あれば、受給資格の確認を受けることができるというものです。そのうえで、育児休業期間中に「育児休業給付金」が支給されます。
休業期間中に賃金が支払われていない場合の支給額は以下の通りです。
育児休業給付金の支給額 | |
育休開始から6カ月以内 | 休業開始時賃金日額×支給日数(30日)×67% |
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育休開始から6カ月経過後 | 休業開始時賃金日額×支給日数(30日)×50% |
育児休業給付金の申請は事業主が手続きをおこないますが、育児休業給付受給資格確認票・ (初回) 育児休業給付金支給申請書と育児休業給付金支給申請書は、電子申請義務化の対象帳票です。
電子申請義務化対象の特定法人は電子申請での手続きが必須となります。
育児休業制度を利用した労働者が復職する場合だけでなく、育児する労働者が状況に応じ利用できる制度づくりは、優秀な人材の確保・定着や企業価値の向上が期待できます。
復職までの利用制度 | |
子どもの状況 | 利用できる復職制度 |
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子どもが1歳に なるまで |
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子どもが3歳に なるまで |
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また、復職のほか、妊娠中の女性に対し、母性健康管理措置や労働基準法による母性保護規定にも配慮する必要があります。
産前産後休業(産休)とは、出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は産前14週間)、産後8週間の休業を意味します。
出産の翌日から8週間は産後休業となりますが、産後6週間を過ぎた後に本人が請求し、医師が認めた場合のみ就労することは差し支えありません。
また、企業は妊娠・出産後も仕事を続けたいかどうかを事前に確認をすることは重要です。また労働者から妊娠健康診査を受けるための時間確保の請求があった場合、妊娠期間に応じた受診回数を確保しなければなりません。
妊婦健康診査に必要な回数 | |
妊娠23週まで | 4週間に1回 |
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妊娠24~35週まで | 2週間に1回 |
妊娠36週~出産まで | 1週間に1回 |
医師等がこれと異なる指示をした場合はその回数が必要
有給・無給は会社の定めによります。
また、企業は妊娠中の職場生活の請求があった場合、対応が必要です。
労働者の妊娠・出産・産前産後休業を取得したことを理由に解雇することは法律で禁止されています。
育児休業制度は取得には一定の条件が必要ですが、産前産後休業は出産予定の女性ならどの労働者でも取得できます。いずれも育児休業・産前産後休業の取得を理由に解雇などの労働者の不利益になる行為は法律で禁止されています。