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育児休業給付金とは?いつもらえる?計算方法や申請方法についても徹底解説

育児休業給付金とは?いつもらえる?計算方法や申請方法についても徹底解説

監修者:蓑田 真吾 みのだ社会保険労務士事務所
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育児休業中には、育児休業給付金が受け取れます。対象となる従業員が育児休業給付金の受給を希望した場合、企業は必ず対応しなければなりません。しかし、そもそもどのような方が受給対象となるのでしょうか?

今回は、育児休業給付金がもらえる条件・申請方法のほか、育休・出産に関する複数の制度の紹介、支給額の計算方法を解説します。

2人目の子供を出産した場合、育児休業給付金はいくらもらえるのか。育児休業給付金の延長申請ができる条件など、具体的な例も確認していきましょう。

育児休業給付金とは?

育児休業給付金とは、出産と子育てにより発生する育児休業期間中に対象者へ支給される手当です。育児休業中は就業が難しく、本来の給与が入ってきません。そのような状態でも生活に困らないよう、受給条件に当てはまる場合は一定の給付金をもらえます。

育児休業給付金はいつ支給される?

育児休業給付金の支給日は、出産から4〜5カ月後が目安となります。育児休業給付金は申請後の審査に2週間前後かかり、支給が決定されれば1週間ほどで口座に振り込まれる流れです。

ただし、育休は産後8週間後から始まるうえ2カ月分をまとめて支給する仕組みのため、出産から入金までにおおよそ4〜5カ月かかります。育児休業開始直後にもらえるわけではなく、しばらくは貯蓄や夫婦どちらか一方の収入などで生活費をまかなわなければいけないため、注意が必要です。

育児休業給付金の受給条件

育児休業給付金をもらえる方は、以下の条件を満たす方です。

雇用保険に加入している

育児休業給付金は、育児休業を取得する雇用保険の被保険者が対象です。そのため雇用保険に加入できない自営業や個人事業主(フリーランス)は、育児休業給付金を受け取れません。

なお、男性が育児休業を取得した場合も育児休業給付金は受け取れます。最近では、パパ・ママ育休プラスが施行され、夫婦が同時に育児休暇を取りやすくなりました。夫婦が同時に育児休暇を取得していても、条件を満たせば夫婦ともに育児休業給付金の受け取りが可能です。

1歳未満の子供がいる

育児休業給付金は1歳未満の子供がいる場合に申請が可能です。また、育児休業の期間同様、一定の条件で延長もできます。

育児休業給付金の延長申請ができる条件

原則、養育している子供が1歳となった日の前日までである育児休業給付金ですが、一律給付金を停止した場合に困る家庭もあります。そのため一定の条件を満たせば、延長が可能です。
具体的には1歳の誕生日の前々日。民法の規定上、誕生日の前日をもって満年齢に達したとみなされるため。

育児休業給付金延長の条件

  • 保育園に申請したものの、1歳もしくは1歳6カ月に達する期間について、子供が保育園に入園できない場合
    無認可保育施設は含まれません
  • 子供が、1歳もしくは1歳6カ月に達する日後の期間について、その子供を養育する者(配偶者もしくは本人)が以下のいずれかに該当した場合
    (1)死亡したとき
    (2)負傷・疾病・障害などで、子供を養育することが困難な状態になったとき
    (3)離婚など事情により配偶者が子供と同居しないこととなったとき
    (4)次の子供が6週間以内に生まれる予定がある、もしくは生まれてから8週間経過していない場合
    双子の場合は14週間以内

育休開始前の2年間に規定の期間、勤務した実績がある

育児休業給付金を受け取るには、育児休業を開始する前の過去2年間に1カ月に11日以上働いた月が12カ月以上なければなりません。この期間を満たせば、正社員や契約従業員・パートタイムなどの雇用形態を問わず、育児休業給付金の受給対象となります。
ない場合は、1カ月の合計勤務時間が80時間以上の月

育休中の就業日数が一定以下である

育児休業給付金の支給対象者は、育児休業期間中、1カ月に10日以下しか働いていない、または1カ月の合計勤務時間が80時間以下である方です。反対に言えば、育児休業中に就業しても、就業日数が10日以下もしくは就業時間が80時間以下であれば、給付金は支給されます。

11日以上就業すると支給対象外に

ただし、育児休業中に11日以上(80時間以上)就業した場合は支給要件から外れてしまうため、育児休業給付金は支給されません。

育休中に事業主から支払われる賃金が、休業開始時の賃金の80%未満

もし育児休業期間中に勤務している場合は、支払われた賃金が休業前の80%以下でなければなりません。80%以下でも、再度育児休業を取得した際の育児休業給付金の支給額算定に影響を与え、減額となる可能性があります。

育児休業給付金はいくらもらえる?計算方法

育児休業給付金として受け取れる金額は、下記の計算式で算出されます。

直近6カ月の育児休業給付金の計算方法
6カ月経過後の育児休業給付金の計算方法

育児休業開始時賃金日額とは、休業開始時賃金月額証明書にある金額の休業開始前の6カ月の賃金を日割りにした金額です。このように育児休業給付金の支給額は、育休開始から6カ月(180日)までと、6カ月(181日)以降で異なります。

例)給与が月30万円だった場合の計算方法

たとえば、休業開始前の6カ月で合計180万円(1カ月30万円)の賃金を得ていた場合、育児休業開始時賃金日額は1万円(180万円÷180日)となります。それぞれの期間の1カ月あたりの支給額は以下のとおりです。
休業開始前の就業日数は1カ月30日で計算

育休開始から6カ月までの1カ月あたりの支給額

1万円×30日×0.67=20万1,000円

 

6カ月以降の1カ月あたりの支給額

1万円×30日×0.50=15万円

育児休業給付金は非課税です。所得税はかからず(翌年の住民税算定額にも含まれません)、育児休業中の社会保険料は労使ともに免除されます。給与所得がなければ、雇用保険料も発生しません。そのため育児休業給付金の支給額は、休業前の手取り収入の実質8割となります。

育児休業給付金の支給額を調べるなら計算ツールがおすすめ

育児休業給付金の支給額は知りたい方は、以下の育児休業給付金シミュレーターをご活用ください。毎月の額面給与(手取り額)・育休取得期間などを入力するだけで、育休開始から180日までと181日以降のおおよその1カ月の支給額がわかります。

なお、育児休業給付金は原則2カ月に1回、2か月分がまとめて支給されます。

2人目の育児休業給付金の計算方法は?

2人目の場合であっても、雇用保険に加入していれば、育児休業給付金の申請は可能です。

勤務実績がなければ1人目の給付金と同額に

人目の育児休暇明けすぐに2人目を妊娠・出産した場合、勤務実績がなければ、育児休業給付金は1人目の育児休業給付金と同額になる可能性があります。育児休業給付金の計算には、産休・育休の期間が免除され、1人目の育児休業に入る前の休業開始時賃金月額証明書で計算することになるためです。

1人目の育児休業から復帰した後は、産休・育休前より時短勤務を希望する方が多く、給与額が総支給額より減少する傾向にあります。

時短勤務のまま2人目を出産した場合、1人目の育児休業取得時よりも休業開始時賃金月額証明書の金額が減ります。その理由は、フルタイム勤務から時短勤務へと変更した場合、支払われる給与が減少するからです。そのため連続して育児休業を取得し、フルタイム勤務時の労働時間での給付額を受け取る従業員も多くいます。

人事・労務担当者は育児休業から復帰した従業員を迎える場合、このような育児休業の取得ケースがあることも念頭においておきましょう。

育児休業給付金の申請方法

ここからは、育児休業給付金を申請する際に必要な書類と申請の流れについて解説します。育児休業給付金の申請をおこなうタイミングなどは注意が必要なため、よく確認しておきましょう。

育児休業給付金の申請に必要な書類と手続きの流れ

育児休業給付金の申請は、対象の従業員に申請書類を記載してもらい、企業が従業員の代わりに申請します。育児休業給付金の申請に必要な書類と手続きの流れは、以下のとおりです。

育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書はハローワークから取得します。

なお、育児休業給付金は原則2カ月ごとに支給申請をおこなう必要があります。2回目以降も育児休業給付金を申請する場合は、育児休業給付受給資格確認票以外の初回提出時と同様の必要書類を用意して、ハローワークで申請してください。

育児休業給付金の申請は電子申請義務化の対象

2020年4月より、特定の法人においては雇用保険の育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書と育児休業給付金支給申請書は、電子申請義務化の対象となりました。

育児休業給付金関連の育休・出産制度

育児休業給付金以外にも、育児休業を補助する制度は存在します。休業制度や給付金制度をうまく活用して、育児休業に役立てましょう。

① 産後パパ育休(出生時育児休業)

産後パパ育休(出生時育児休業)」とは、2022年10月より新設された父親のための産後休業制度です。

「パパ休暇」が廃止に

これまで「パパ休暇」という、妻が出産後8週間の期間内に夫が育児休業を取得した場合、再度育児休業を取得できる特例制度がありました。しかし法改正によってパパ休暇は廃止となり、変わりに施行されたのが産後パパ育休です。

産後パパ育休は、子供が誕生後8週間以内に父親が4週間まで休業を取得できる制度です。子供が1歳(最長2歳)になるまで取得できる育児休業制度とは別に取得できます。

② 出生時育児休業給付金

出生時育児休業給付金とは、出生時育児休業中に支給される給付金のことです。以下の支給要件を満たす場合に申請が可能となります。

上記の要件を満たすと、以下の計算方法によって算出された金額を受給できます。

出生時育児休業給付金の計算方法

労働者の出生育児休業開始時賃金日額×休業期間の日数(28日が上限)×67%

出生育児休業開始時賃金日額とは、育児休業給付金同様、休業開始時賃金月額証明書にある金額の休業開始前の6カ月の賃金を日割りにした金額です。ただし、出生育児休業開始時賃金日額は15,190円の上限額が定められており、出生時育児休業給付金の支給上限額は28万4,964円(=15,190円×28日×67%)となります。

③ パパ・ママ育休プラス

パパ・ママ育休プラスとは、対象の子供の年齢が1歳2カ月になるまで育児休業を延長できる制度です。同時に育休を取得、もしくは交代で取得ができるため、夫婦で同じ職場に勤めている従業員にとって最適な制度です。パパ・ママ育休プラスは、以下の条件を満たすことで申請が可能です。

パパ・ママ育休プラスの取得条件

④ 短時間勤務などの措置(時短勤務制度)

時短勤務制度とは、3歳未満の子供をもつ労働者が1日の労働時間を短縮する制度です。対象となる従業員から時短勤務の請求があった場合、事業主は時短勤務、もしくは時短勤務に代わる措置の実施が義務づけられています。

⑤ 子の看護休暇

子どもの看護休暇とは

子の看護休暇とは、育児や介護をおこなう労働者が、育児・介護休業法に定められている子供の病気やけがなど、看護が必要なときに利用できる休暇です。小学校就学前までの子供がいれば、事業主に申し出ることで、看護休暇の取得申請が可能です。1名であれば年5日、2名以上であれば10日まで取得できます。

また、改正前は半日単位での取得、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は取得できませんでしたが、2021年の改正後はすべての労働者が取得できるようになりました。

新育児・介護休業法のポイント

2021年6月に育児・介護休業法が改正され、男性もより積極的に育児休業を取得できるような育休法が新たに追加されるなど、いくつかの変更点が追加されました。新育児・介護休業法は、2022年4月より段階的に施行されています。企業側は改正ポイントをしっかりと把握し、適切に対応できるようにしておきましょう。

2022年4月からの3つの改正点

2022年4月1日より、以下の項目が施行されています。

1. 雇用環境の整備

労働者が、育児休業や産後パパ育休の申請がしやすくなるように、事業主は以下のいずれかの措置を講じ、職場環境の整備に努める必要があります。また下記の措置に関し、できる限り複数の措置を講じることが望ましいとされています。

2. 労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

事業主は、本人または配偶者の妊娠・出産などを申し出た労働者に対し、育児休業制度などに関する事項の周知と、休業取得の意向確認について、個別に対応する必要があります。なお、育児休業取得を控えさせるような、個別周知と意向確認は認められません。

周知事項

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する制度
  2. 育児休業・産後パパ育休の申し出先
  3. 育児休業給付に関すること
  4. 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

個別周知および意向確認は、以下のいずれかの方法によりおこないます。

個別周知・意向確認方法

  1. 面談
  2. 書面交付
  3. FAX
  4. 電子メール など

面談はオンライン面談も可能であり、FAXや電子メールなどは、労働者が希望した場合のみ対応します。

3. 有期雇用労働者の育児・介護休業取得条件の緩和

2021年6月の改正前までは、有期雇用労働者に対する育休および介護休業取得要件は「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」でしたが、新しい改正法より、本要件が撤廃されました

有期雇用労働者に対する育休取得要件は「1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでない」のみとなり、無期雇用労働者と同様の取り扱いになります。

2022年10月からの2つの改正点

2022年10月1日より、以下の項目が施行されています。

1. 産後パパ育休(出生時育児休業)の新設・育児休業の分割取得

新たな改正法により、男性従業員の育休取得を促進するため、通称「男性版育休」ともいわれる「産後パパ育休(出生時育児休業)」が新設されました。

また、これまでの育休法では育児休業を分割して取得することは原則不可能でしたが、今回の改正法により育児休業を2回に分割して取得できるようになりました。そのためより一層、男性も育児休業が取得しやすくなることが期待されます。

休業対象期間 子の出生後8週間以内
取得可能日数 4週間まで
申請期限 原則休業の2週間前まで
雇用環境の整備など、今回の改正で義義務づけられている内容以上の
取り組みの実施について、労使協定で定められている場合は、
1カ月前までとすることが可能
分割取得 分割して2回取得可能
初回にまとめて申し出ることが必要
休業中の就業 労使協定を締結している場合に限り、
労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能
 

育児休業中の就業について、具体的な手続きの流れは以下の場合が想定されます。

育児休業中の就業における
具体的な手続きの流れ

  1. 労働者が就業してもよい場合は、事業主にその条件を申し出
  2. 事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示
  3. 労働者が同意
  4. 事業主が通知

2. パパ休暇の廃止

今回の改正により「パパ休暇」制度は廃止されます。パパ休暇では、出生後8週間以内であれば取得日数に制限はありませんでしたが、産後パパ育休(出生時育児休業)より4週間以内と定められました。なお「パパ・ママ育休プラス」については、従来どおり継続されます。

2023年4月からの改正点

2023年4月1日より、以下の項目が施行されています。

育児休業取得状況の公表義務化

常時雇用する従業員が1,000名を超える事業主は、育児休業などの取得状況を年に一度公表することが義務づけられました。

公表内容は、男性の育児休業などの取得率または育児休業などと育児目的休暇の取得率で、インターネットなど一般の方が閲覧可能な方法で公表する必要があります。自社のWebサイトほか、厚生労働省が運営するWebサイト「両立支援のひろば」での公表も推奨されています。

2025年4月から育児休業給付金が賃金80%(実質手取り10割)に引き上げ

厚生労働省は、産後の一定期間に夫婦ともに育休を取得した場合、休業前の賃金とほぼ同額の給付金を受けられるようにする方針を決定しました。給付日数は最大28日間で、産後に14日以上の育休を取得した夫婦が対象です。

詳しくは以下の記事で解説しています。

まとめ

従業員が育児休業給付金を請求した場合、企業は速やかに育児休業給付金の申請を進めなければなりません。また育休中は年末調整も必要です。近年、育児休業関連の法律は頻繁に改正されています。法令違反にならないよう、常に新しい情報を確認し、適切な対応を取りましょう。

みのだ社会保険労務士事務所 監修者蓑田 真吾

1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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