「育児休業給付金」は女性の社会進出と共に認知度を上げているように感じます。ただし、その内容について従業員はもちろん、会社側の担当者も特に手続き経験が少ないと、勘違いや誤解しているケースが非常に多くあります。ここでは、育児休業給付金の重要ポイントを整理してご説明します。
日本大学卒業後、医療用医薬品メーカーにて営業(MR)を担当。 その後人事・労務コンサルタント会社を経て食品メーカーにて労務担当者として勤務。
冒頭でも述べました「育児休業給付金」とは、出産と子育てにより発生する育児休業期間中に対象者へ支給される手当です。
この育児休業給付金の受給対象者は、
これらに該当するものとされています。加えて、
こちらも受給対象者の条件とされています。事業主はその詳細をきちんと把握する必要があることを留意しましょう。
育児休業給付金の支給額については、1ヶ月あたり原則として【休業開始時賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6ヶ月経過後は50%)相当額】と定められています。
支給日数については、基本的には30日となっており、休業終了日の属する支給対象期間では、支給対象期間の日数が該当します。ちなみに、ここで定められる賃金日額は、事業主が提出する「休業開始時賃金月額証明書(票)」により、原則育児休業開始前6ヶ月の賃金を180で除した額となります。
たとえば、【育児休業前の1ヶ月の賃金が30万円であった場合、育児休業給付金として休業期間中の1ヶ月あたり30万円の67%相当額である、20万1千円が支給されることになります。ちなみに、育児休業の開始から6ヶ月経過後は50%になるため、15万円が育児休業給付金として支給されます(支給日数が30日であるとき)。】
近年の核家族化や保育園不足などは、子育てにおける問題として挙げられます。その打開策として、また男性の育児参加への促進を目的として、育児休業の期間に「パパママ育休プラス制度」という特例が設けられています。
この制度は父母の双方が育児休業を取得する場合、子が育児休業の原則1歳になるまでから1歳2ヶ月になるまでに期間を延長することができるというものです。また、パパママ育休プラス制度の利用についても育児休業給付金が適用されており、要件を満たす場合は子が1歳2ヶ月に達する日の前日までの間、1年まで育児休業給付金が支給されます。
この要件とは、
これら3つをいい、いずれも満たしていなければなりません。また、定められている配偶者には、国家公務員、地方公務員等の公務員である場合も含まれています。
育児休業給付金を受ける場合には申請が必要となります。あわせて、この申請は一度限りではなく、原則として2ヶ月に1度行う必要があることに留意しましょう。
この申請手続きとして事業主は、事業所の所在地管轄のハローワークへ
同時に
これらを提出する必要があります。また、初回支給申請の場合は
支給申請書の記載内容を確認できる添付書類も必要となります。提出は初回の支給申請(休業開始日の初日から起算して4ヶ月を経過する日の属する月末)を除く、指定された期間に行いましょう。
また、「パパママ育休プラス制度」の申請手続き方法については、ハローワークインターネットサービスより「雇用継続給付」ページ内の「育児休業給付について」で、ご確認ください。
ちなみに労働者が自らこの申請手続きを希望している場合、事業主ではなく本人が申請を行うことも可能です。
最後に育児休業の延長についても押さえておきましょう。休業期間中に子供を預ける保育所が見つからない等といった、特別な理由がある場合には、子が1歳6ヶ月に達する日前までの期間に育児休業を延長することが可能となります。
ちなみに、「パパママ育休プラス制度」では、育児休業終了予定日とされた日が子の1歳に達する日以降である場合、休業終了予定日の翌日から1歳6ヶ月までの間で延長可能となります。延長していても、前述の育児休業給付金の支給対象となりますので、よく確認しておきましょう。
【内部リンク:育児休暇の期間について。今年の10月から最大2年に延長されます!】
今回は育児休業中の手当である育児休業給付について、給付に該当する労働者の条件や支給額、その申請の流れについて解説しました。出産や育児は特別な事情が生まれることも多いイベントなので、規定や申請については複雑になりがちです。
しかし、労働者の重要なライフイベントであるとともに、現代では企業側のサポート体制も社会的信用等においては大変重要であることに変わりはありません。そのため、事業主は労働者の出産や育児が発生する場合には柔軟に対応するとともに、誠実な対応がもとめられている部分であるといえます。