平成29年1月施行の育児・介護休業法改正により、派遣労働者の育児休業の取得要件が緩和されました。
また、労働者派遣法第47条の2および第47条の3が新設され、派遣先にも派遣労働者に対して使用者としての責任を負うことになり、より派遣労働者が育児休業を取得しやすく、働き続けやすい職場環境の整備が求められています。
この記事では、派遣労働者の育児休業の取得要件、派遣労働者に対し派遣先にも求められる責任についてご説明します。
目次
派遣労働者は、育児・介護休業法において「期間を定めて雇用される労働者(日雇い労働者を除く)」に該当します。そのなかで育児休業を取れるのは、原則として1歳未満※の子を養育する男女労働者のうち、派遣元との関係で以下の要件を全て満たす人です。
1歳を過ぎても保育園に入れないなどの事情がある場合は1歳6ヶ月まで
これは育児休業申出の直前1年間、雇用関係が「実質的に継続」しているという意味です。契約上、年末年始等の休日を空けて労働契約している場合、形式的には労働日が連続していませんが、労働者は休日を挟んで継続的に働いているため、実質的な雇用関係が継続しているとみなされます。
また、契約満了時に同一の事業主との次の契約が結ばれている場合も同様です。
これは「育児休業の申出日時点で労働契約期間の満了や更新がないかどうか」がその判断基準となります。事業主はこれらに該当する派遣労働者からの育児休業の申し出は拒否できませんが、次の場合は拒むことができます。
ただし、この場合は事前に上記の内容に関する労使協定を結んでおく必要があるため注意しましょう。
平成29年1月に施行された改正後、派遣元のみならず派遣先にも育児・介護休業法が適用され、育児休業の申出・取得を理由とする不利益取扱い禁止が義務付けられました。それに伴い、育児休業の申出等をおこなった派遣労働者に対する不利益取扱いとなるケースは以下のとおりです。
以上のことを行った場合は、原則として法違反となります。また、上記以外でも個別の事例を勘案した結果、法違反となる場合もあります。なお、例外として次の場合は法違反になりません。
(1)業務上の必要性が不利益な取扱いによる影響を上回る特別な事情があり、やむを得ずそのような取扱いにせざるを得ない場合
(2)上記(1)の理由から不利益な取扱いが生じる場合でも、それによるデメリットよりもメリットの方が大きいという旨の説明を事業主が適切に行い、派遣労働者がその取扱いについて同意した場合
ただ、これらの例外については合理的かつ客観的に説明できる理由があるということが前提ですので、事業主は派遣労働者が不利益を被ることがないように配慮する必要があります。
育児・介護休業法では労働者に講ずるべき措置が定められています。次の措置に関し派遣先は派遣労働者に対し、自社で雇用する従業員と同様の措置を講じなければなりません。
(1)妊産婦への保健指導または健康診査を受けるための時間の確保
・妊娠23週まで:4週間に1回
・妊娠24週~35週:2週間に1回
・妊娠36週~出産:1週間に1回
・出産後1年以内:医師の指示に基づく必要な時間
(2)妊娠中に医師による指導事項を守ることができるようにするための措置
・通勤緩和(時差通勤、勤務時間の短縮等)
・休憩に関する対応(休憩時間の延長、休憩回数の増加等)
・妊娠中または出産後の症状等への対応(作業の制限、休業等)
(1)事業主の方針の明確化および労働者への周知・啓発
・職場でのハラスメントの内容、ハラスメント禁止の方針を明確化する
・行為者への対処方針、対処内容を文書に規定する
(2)苦情を含む相談への対応とそのために必要な体制の整備
・相談窓口の設置
・相談窓口担当者による相談と適切な対応
(3)事後の迅速かつ適切な対応
・事実関係の確認
・被害者に対する配慮措置
・行為者に対する措置
・再発防止の措置
(4)上記(1)から(3)までの措置と併せて講じる措置
・相談者や行為者等のプライバシー保護
・相談したこと、事実関係確認に協力したこと等を理由とする不利益取扱いの禁止
事業主は以上の点に留意しながら派遣労働者を守る義務があります。
今回の記事では、派遣労働者の育児休業に関して派遣先の事業主が行うべき措置について解説しました。事業主はご紹介した点に留意しながら育児・介護休業法を遵守し、自社で働く派遣労働者が気兼ねなく育児休業を取れるように配慮しましょう。