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社員の福利厚生の充実と住宅を借り上げ支給する「借上社宅」

バックオフィス部門(人事総務部門)の役割として、従業員が心配なく日々の生活を送れるように労働環境を整えることが挙げられます。なかには、「衣食住」のひとつである「住宅」に焦点を当てて、会社が住宅を借り上げて支給する「借上社宅」の制度をとっているところもあるでしょう。

また、導入する理由としては住宅手当の支給よりも税務上や社会保険、労働保険上の利点が多いということがあります。今回は「借上社宅」について詳しく解説していきます。

福利厚生制度全般と住宅補助について

福利厚生制度とは企業が従業員やその家族に対して、健康や生活の福祉の質を向上させることを目的に行う取り組みを指す言葉です。福利厚生には企業に義務付けられている法定福利厚生(社会保険料の拠出)と、任意で行うことができる法定外福利厚生の2種類があります。

法定外福利厚生に関しては、特にこれが法定外福利厚生であると決められているわけではなく、住宅手当、家賃補助、社宅・独身寮、資格取得や自己啓発の支援、社員食堂などさまざまです。住宅補助はこの法定外福利厚生に該当します。

また、住宅補助は近年減少傾向にありますが、それでも企業が行う福利厚生のなかでは高い金額が割かれているのです。

借上社宅の税務上の取り扱いについて

借上社宅とは、企業が賃貸物件を借り入れて従業員へと貸し出し、社宅とすることをいいます。まずは、借上住宅の税務上の取り扱いについてご紹介しましょう。

従業員に借上社宅を貸し出す場合、1カ月あたりの賃貸料相当額を受け取っていれば、税務上給与として課税されないとしています。また、賃貸料相当額とは次の3つの合計金額です。

  1. その年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
  2. 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3平方メートル)
  3. その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%

ただし、従業員に無償で貸し出す場合は、この一定額の家賃が給与として課税されます。あわせて、従業員から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合も、その受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額が給与として課税されます。

しかし、従業員から賃貸料相当額の50%を家賃として受け取っている場合は、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は給与として課税されません。一方で同じ企業に勤める人でも、役員に借上社宅を貸し出す場合は賃貸料相当額を支払っていれば課税されませんが、賃貸料相当額の求め方が一般の従業員とは少し異なります。

この場合、ポイントとなるのは社宅の規模です。社宅が小規模と見なされる場合は上記の一般社員と同じ条件となりますが、小規模と見なされない場合は自社所有の社宅か、不動産会社などから借りた物件を貸しているのかによって、賃貸料相当額が異なる計算式で求めます。

社会保険上の借上社宅(現物給与)の扱い

次に、借上社宅を現物給与として従業員に提供する場合の社会保険における取り扱いについてご紹介します。通貨以外のもので報酬や賞与が支払われる現物給与においては、その価格は厚生労働大臣によって都道府県ごとに定められているのです。

借上社宅を含む住宅の現物給与に関しては、たたみ1畳につき金額が決められていており、平成29年4月からの「全国現物給与価額一覧表」(http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/hoshu/20150511.html)を見ると、東京都の場合は1畳あたり2,590円となっています。

よって、10畳の部屋を借上社宅として現物給与したとき、25,900円が通貨に換算されて現金の報酬に合算し、保険料額算定の基礎になる標準報酬月額を求めることになります。なお、この価額を算出する際は居間や茶の間といった居住用の部屋を対象としており、玄関や台所などの非居住部屋は対象とはなりません。

労働保険上の借上社宅(現物給与)の扱い

最後に同じ現物給与に関して、労働保険上での取り扱いについてご紹介します。労働保険の保険料算出にあたっては、先ほどの社会保険と同じく現物給与を含んだうえでの金額が求められます。

また、現物給与の金額換算に関しては「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」に基づき、各地方の時価によって定められる決まりとなっています。一方で現物給与に関しては、代金を徴収する場合は原則として賃金扱いにはなりません。

しかし、徴収する場合であってもその金額が実費の3分の1以下である場合は、実費の3分の1に相当する金額と徴収される金額との差額分は賃金として扱われるので、保険料算定の際の対象となります。一方で実費の3分の1以上の代金を徴収する場合は現物給与とはならないので、保険料算定の対象にはなりません。

まとめ

今回は、福利厚生のなかでも借上住宅について紹介してきました。借上住宅の場合、従業員が支払う家賃の金額によっては課税対象となることがあります。

また、現物給与として借上住宅を提供する場合は部屋の大きさが保険料の算定に関わってきます。借上住宅を持っている企業の労務担当者は、借上住宅の利用によって、何が変わってくる可能性があるのかという点をしっかりと確認しておくようにしましょう。

岡 佳伸|社会保険労務士 岡 佳伸 事務所

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