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産業医の重要性とは?働き方改革関連法での変更点や選任方法、役割を解説

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人事労務管理福利厚生

労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業所において、事業者は産業医を選任し、労働者の健康管理等を行うことを義務付けています。また、2019年4月施行の働き方改革関連法では「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されました。

今回は働き方改革における産業医の在り方や選任義務、事業場における役割から活用方法を解説します。

安全衛生管理体制における産業医とは

安全衛生管理体制のなかでも産業医制度の重要性が増しています。産業医は労働安全衛生法に基づき、事業者が選任し、事業所の労働者の健康管理を行う業務を担います。

産業医の選任は事業場の規模により、人数が規定されており、職務にあたります。

  • 常時使用する労働者が50人以上3,000人以下の事業所:1名以上
  • 常時使用する労働者が3,001人以上の事業所:2名以上

また、次の場合は事業所ごとに専属の産業医を選任する義務が発生します。

  • 常時使用する労働者が1,000人以上の事業所
  • 健康に悪影響を及ぼす環境下で行う業務(労働安全衛生規則13条1項2号参照)において、常時使用する労働者が500人以上の事業所

労働安全衛生法では、産業医の選任義務がない常時50人未満の労働者を使用する事業所においても、医師等に労働者の健康管理等の全部または一部を行わせるように努力義務が課されています。この努力義務には国が必要な援助を行うことについても定められています。

【参考】厚生労働省 安全衛生管理体制のあらまし
https://jsite.mhlw.go.jp/niigata-roudoukyoku/library/niigata-roudoukyoku/jigyounushi/anzen/pdf/251007kanritaisei_aramashi_.pdf

2019年4月の働き方改革関連法による改正

2019年4月に施行された働き方改革関連法では、「産業医・産業保健機能の強化」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されました。

産業医・産業保健機能の強化

産業医・産業保健機能の強化では、以下の2つに分類され、機能面の強化が求められます。

産業医の活動環境の整備

産業医の活動環境の整備では、産業医の独立性・中立性を強化し、必要な医学の知識に基づいた労働者の健康管理が求められます。また、産業医には労働者の健康管理を行うための知識・能力の向上に努めなければいけません。事業主は産業医の辞任・解任時に衛生委員会へ遅延なく報告する義務が発生します。

また、事業者には産業医の権限を具体化する必要があります。産業医に付与される権限には以下の項目が含まれます。

  • 事業者または総括安全衛生管理者に対して意見を述べる
  • 労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集する
  • 労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合において、労働者に対して必要な措置をとるべきことを指示する

その他、産業医の活動と衛生委員会等との関係も強化されています。

事業主は産業医から勧告を受けた際は速やかに衛生委員会等に報告しなければいけません。

その他の産業医の活動環境の整備に関する項目は参考URLをご確認ください。

健康相談の体制整備、健康情報の適正な取り扱い

今回の法改正では、労働者が安心して産業医に相談できる体制整備も求められています。そのため、面接指導や健康診断の結果といった健康情報を適正に取り扱い、労働者からの健康相談に適切に対応できる体制を構築しなければいけません。

また、事業主は産業医の業務内容を労働者に周知するように努める必要があります。

長時間労働者に対する面接指導等

残業時間の上限規制により、長時間労働者に対する面接指導等も強化されています。労働時間の状況把握や労働者への労働時間に関する情報の通知、医師による面接指導の対象となる労働者の要件(時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた場合)などが細かく規定されています。

また、働き方改革関連法で新設された高度プロフェッショナル制度対象労働者に対する医師による面接指導(1月当たり100時間を超える場合、申し出なしに面接指導を行うなど)も規定されています。

【関連】産業医の機能強化!働き方改革による変更点や企業の対処方法を紹介

その他の長時間労働者に対する面接指導等に関する項目は参考URLをご確認ください。

【参考】厚生労働省 「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」
https://www.mhlw.go.jp/content/000497962.pdf

【関連】残業時間(時間外労働)とは?上限規制や労働時間の概要、働き方改革法施行後の注意点をご紹介

【関連】高度プロフェッショナル制度とは?対象者やメリット・デメリット、裁量労働制との違いとは?

産業医の要件

選任する産業医について事業主は、医師の資格を持った以下のいずれかの要件を備える者を選任しなければなりません。

  • 厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者
  • 産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
  • 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
  • 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師またはこれらの経験者

また、産業医の主な役割は医学的な観点から職場の安全衛生を管理し、労働者の健康状態を良好に保つことです。そのため、産業医には医学知識のみならず、労働衛生に関する専門知識を有している者を選定しなければいけません。

【参考】厚生労働省 産業医について
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/080123-1.html

産業医の職務は「労働者の健康管理のために」

産業医は、労働者の健康管理のために次の医学的な専門知識を必要とする職務を行います。

  • 健康診断、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェック、高ストレス者への面接指導を行い、各結果に基づき適切な措置を行う
  • 作業管理、作業環境の維持管理
  • 衛生教育、健康教育、健康相談など労働者の健康を維持するための働きかけを行う
  • 労働者の健康障害の原因を調査、再発防止に努める

また、法に基づく権限により、以下の職務も行います。

  • 労働者の健康管理等について、事業者、総括安全衛生管理者に必要な勧告を行う
  • 事業場に設置された衛生管理委員会において労働者の健康障害防止対策等の調査審議を行う
  • 衛生管理者に指導、助言を行う
  • 決められた間隔で職場を巡視し、労働者の健康障害を防止するための必要な措置を行う
  • 労働者の健康障害防止のため・長時間労働等に関する情報を把握する

産業医は事業所の安全衛生管理を日常的に行い、必要に応じて適切な措置を行う義務があります。

産業医の役割について

事業所での産業医の役割は多岐に渡ります。今回は産業医の主な役割について、ご紹介します。

衛生委員会の出席・衛生講和

従業員50人以上の事業省は、必ず衛生委員会を設置しなければならず、同時に産業医は衛生委員会への出席が求められます。衛生委員会は毎月1回程度開催することが望ましく、産業医は構成員として意見を述べます。

また、産業医は健康管理や衛生管理を目的とした社員向けの講習である衛生講話を行います。衛生講話では従業員の健康管理・衛生管理における職場の課題に応じた内容が講習内容となります。

職場巡視

産業医は毎月1回職場を巡回し、従業員が働く職場環境の安全性が確保されているかを確認する職場巡視を行います。企業の事業によって、内容は異なりますが、主に「整理・整頓・清掃・清潔」の環境の維持、適切な温熱環境、照度、トイレの衛生環境、休憩室の確保、AED・消火器の場所、室温などがチェック項目となります。

健康診断結果のチェック

産業医は実施された健康診断結果に基づいて、就業判定を行い、就業制限・休職が必要な社員への意見書を作成します。また、事業主は産業医の押印がされた「健康診断結果報告書」を管轄する労働基準監督署に速やかに提出しなければいけません。

健康相談、休職・復職面談の実施

産業医は健康相談を希望する社員への健康相談や、休職希望または欠勤・遅刻・早退が続く社員への休職面談、職場復帰を希望する社員への復職面談を実施します。復職面談では病状の回復程度を把握し、職場復帰の判断を行います。

ストレスチェック制度の実施・高ストレス者への面接指導

ストレスチェック制度とは、2015年12月から対象の事業所において義務付けられた制度です。産業医は労働者に自分が抱えているストレスの度合いを知るテストを実施します。

また、ストレステストの回収や、任意で「医師による面接指導が必要」とされた労働者に対する面接指導を行います。面接指導後は必要に応じて事業者に就業上の措置に関する意見を述べ、労働環境の改善を促します。

長時間労働者への産業医等による面接指導とは

2019年4月の働き方改革関連法では、長時間労働者に対する面接指導等が強化されています。

今回の法改正により、医師による面接指導の対象となる労働者は以下の内容に変更されています。

  • 時間外、休日労働時間が1カ月当たり80時間を超えた労働者
  • 高度プロフェッショナル制度対象労働者(1月当たり100時間を超える場合)

上記に該当する労働者は、産業医による面接指導を実施します。

まとめ

  • 2019年4月に施行された働き方改革関連法では「産業医・産業保健機能の強化」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されている。
  • 事業者には産業医を選任する義務がある。
  • 産業医の職務は「労働者の健康管理」を目的としており、主に「衛生委員会の出席・衛生講和」、「職場巡視」、「健康診断結果のチェック」、「健康相談、休職・復職面談の実施」、「ストレスチェック制度の実施・高ストレス者への面接指導」、「長時間労働者への産業医等による面接指導」の6つの役割を担う。
岡 佳伸|社会保険労務士 岡 佳伸 事務所

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