「働き方改革」や「ワークライフバランス」という言葉が世の中に浸透し、働き方の重要性だけでなく、休み方の重要性も問われる時代になってきました。
しかし多くの労働者は職場に「気兼ねする」などの理由から、まだまだ「年休を取りたいとは言いづらい」と積極的に取得できないでいるのが実情です。
そこで労働者が気兼ねなく休むことができるように考えられた、計画年休制度について見ていきましょう。
やまもと社会保険労務士事務所 所長 特定社会保険労務士
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大学卒業後、自動車メーカー系システム開発会社に技術職として入社し、プログラマ、SEとして職務に従事。その後、上場の建設会社に転職。
情報システムの開発、運用、管理を経験した後、人事部に異動して給与計算、社会保険手続きから採用・退職など、人事労務管理に約12年従事。
目次
計画的年休は、日本では一般に年休の消化率が低いことが背景に生まれた制度です。年休の取得が個人の判断にゆだねられる結果、職場に気兼ねすることにより、年休を取りにくくなってしまう実情がありました。そのため1987年の労働基準法改正の際、年休の取得を促進する手段として、この計画年休制度が設けられました。
計画年休制度とは、年次有給休暇のうち、5日を超える分について、労使協定を結ぶことで計画的に休暇取得日を割り振りができる制度のことです。すなわち、付与日数のうち、5日を除いた日数が計画的付与の対象です。
具体的な例として、年次有給休暇の付与日数が10日の労働者に対しては5日、20日の労働者に対しては15日までを、計画的付与の対象とすることができます。なぜ5日は計画的付与の対象にならないかというと、労働者が病気やそのほかの個人的な理由による取得ができるよう、指定した時季に与えられる日数を留保しておく必要があるためです。
平成20年の調べでは、年次有給休暇の計画的付与制度を導入している企業は、導入していない企業よりも年次有給休暇の平均取得率が8.6%高くなっており、制度の導入は年次有給休暇の取得促進に有効であると考えられます。
また、アンケート調査によれば、全体の約3分の2の労働者は年次有給休暇の取得にためらいを感じているようですが、この制度は前もって計画的に休暇取得日を割り振るため、労働者はためらいを感じることなく年次有給休暇を取得することができます。
制度の活用方法は主に下記の3つに分けられます。
以下で、計画年休制度の導入例をご紹介します。
日本では盆(8月)、暮(年末年始)に休暇を設ける会社が多いため、これらの休暇に計画的付与の年次有給休暇を組み合わせることで、大型連休とすることができます。この方法は先述した企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方式、班・グループ別の交代制付与方式に多く活用されています。
暦の関係で休日が飛び石となっている場合に、休日の橋渡し(ブリッジ)として計画的付与制度を活用し、連休とする方法があります。
たとえば、土曜日と日曜日を休日とする事業場で、祝日が木曜日にある場合、金曜日に年次有給休暇を計画的に付与すると、その後の土曜日、日曜日の休日と合わせて4連休とすることができます。
また、ゴールデンウィークについても、祝日と土曜日、日曜日の合間に年次有給休暇を計画的に付与することで、10日前後の連続休暇を実現できます。ブリッジホリデーの方式は、事前に年単位で休日や休暇の計画を立てることができるのが利点です。
この方法は、企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方式、班・グループ別の交替制付与方式 に多く活用されています。
計画年休制度の導入には、労使協定の締結が必要です。実際に計画的付与を行う場合には、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表するものとの間で、書面による協定を締結する必要があります。
この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありませんが、以下、5つのことを定めておく必要があります。
依然として取得率が低い年次有給休暇を、労働者がより多く取得するために生まれたのが計画年休制度です。
年休制度は職場に気兼ねなく年休を取得し、ワークライフバランスを確立するために有効な手立てになるでしょう。
会社の業種や業態によって、付与方式を変更し、会社独自の計画年休制度を構築してみてはいかがでしょうか。