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有給休暇の繰り越しのルールとは?上限日数や計算方法をわかりやすく解説

有給休暇の繰越のルールとは?上限日数や計算方法をわかりやすく解説

監修者:労務SEARCH 編集部
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入社から半年間が経ち、8割以上の出勤していれば雇用形態にかかわらず「年次有給休暇」を取得することができます。有休には1年間という期限があるためなるべく消化したいところですが、実は有休の残りは繰り越しが可能です。

しかし注意も必要であり、いつまでも残せる訳ではありません。有給休暇は無効になってしまうこともあるため、失効期限についても理解しておくと安心です。

この記事では有給休暇の繰越について、基本ルールやいつまでが時効であるのか、最大保有日数はいくつかなどを解説していきます。

有給休暇の繰り越しとは

有給休暇の繰り越しとは

有給休暇の繰り越しとは、その年に消化できなかった有給休暇の残日数を、翌年に引き継ぐことです。

たとえば、10日付与された年に5日しか消化できていなくても、翌年に残りの5日分の有給休暇を繰り越せるということです。

有給休暇は、正社員だけではなくどんな雇用形態でも以下条件を満たしている方であれば取得が可能です。付与される日数は、個人が使用者と契約している所定労働時間などによって異なります。

有給休暇が付与されても忙しい期間が続いたり、有給休暇のことを忘れてしまっていたりで、なかなか消化できないという方も多いのではないでしょうか。

そういった場合には、有給休暇を翌年に繰り越しすることでもう少し有効期間を伸ばすことができます。企業側はこの有給休暇の繰り越しに関しては義務であり、繰り越しをしないと法律違反になってしまいます。

有給休暇の繰り越しの時効はいつ?

有給休暇が取得できるのは「付与されてから2年間」です。この取得期限を過ぎると時効となり、消滅してしまいます。そのため有給休暇が繰り越せるのは翌年までです。

また、一度時効となり消滅してしまった有給休暇は、取得できないものとなってしまうため注意しましょう。退職した場合も同様に消滅となるため、消化し終わってから退職されるパターンが一般的です。

これは労働者側だけでの管理問題ではなく、企業などの使用者にも有給休暇の残日数をしっかりと管理してあげる責任があると言えます。

パートタイム・アルバイトでも繰り越しができる?

有給休暇は、正社員だけでなく契約社員や派遣社員など雇用形態にかかわらず付与されます。同様に、パートタイム・アルバイトの方でも有給休暇の繰り越しが可能です。

また、付与されてから2年以内に消化しなかった有給休暇が消滅してしまうことも同じであるため、繰り越す場合は注意しましょう。

有給休暇の消化は繰り越し分から?

繰り越した後に有給休暇を消化する場合は、前年分と繰り越し分どっちから消化したことになるのか気になるところです。

実は有給休暇の差引消化分に関しては、法律で明確に定められている訳ではなく会社の就業規則雇用契約書にて決められているケースが一般的です。

基本的には企業側も混乱を招かないよう、繰り越し分から消化されるように定めている企業が多いはずです。労務の担当者であればしっかりと明記しておく必要がある部分です。気になる方は、所属している組織の就業規則や自身との雇用契約書などを確認しておくと良いでしょう。

有給休暇の最大保有日数と繰越日数

有給休暇の最大保有日数と繰越日数

有給休暇の繰越日数には、特に上限などはありません。前年分の残日数はすべて翌年に繰り越しすることができます。

しかし、そもそも付与される有給休暇の日数には上限があるためその範囲内になります。所定労働時間に応じて付与日数には個人差があります。

以下の表は「週所定労働時間が30時間以上または週所定労働日数が5日以上」の方が適用される、有給休暇の付与日数基準です。

勤務年数 付与日数
0.5年 10日
1.5年 11日
2.5年 12日
3.5年 14日
4.5年 16日
5.5年 18日
6.5年〜 20日

上記の表で見るとおり、6.5年の継続勤務年数があって一番付与される方で20日が最大です。

つまり、付与された20日をそのまま繰り越して、翌年新たに付与される20日を足した40日が、使用できる範囲での有給休暇の最大保有日数ということになります。

有給休暇の繰り越しの計算例

有給休暇の繰り越しの計算例

実際に有給休暇を繰り越した場合の、残日数の計算例を見てみましょう。今回は入社3年目の正社員の、これまでに付与された有休日数と消化してきた有休日数を例として計算します。

1年目 2年目 3年目
付与日数 10日 11日 12日
年次残日数 10日 17日 22日
消化した日数 4日 7日 7日
繰越日数 6日 10日 15日

3年目が終了する段階で15日余り繰り越しています。4年目は労働基準法明記のとおり14日間付与されるため、合計して29日使えることになります。

このように計算はいたってシンプルであり、「繰り越した日数 + その年次で付与される日数」が保有している有給休暇日数となります。なお有給休暇取得日に支払う給与の計算は「有給休暇の給与金額・賃金」を参考にしてください。

有給休暇の繰り越しの注意点

有給休暇の繰り越しの注意点

有給休暇の付与や、繰り越しについて労使双方での注意点について解説します。

残日数を忘れないようにする

こちらは有給休暇の利用者が注意しければならないことです。最初に付与される日数に関しては、問題なく覚えていられる方も多いでしょう。ですが、有給休暇を繰り越したあとの残日数をうっかり忘れてしまう方が多いです。

特に「合計有休日数は覚えていても繰越日数分を忘れてしまい、翌年数日消滅してしまった」という方もいます。

例)有休を10日繰り越して翌年11日付与された場合

たとえば、2020年4月入社のAさんがいたとします。Aさんは2022年10月の時点で、前年からの繰り越し分10日と当年の新規付与分11日の計21日分の有給休暇がありました。しかし2023年10月までに有給休暇を7日しか取得しなかったため、繰り越し分の3日が消滅してしまいました。

先述のとおり有給休暇は、一般的に繰り越し分から消化されていきます。付与されてから2年以内に消化しなければ消滅しまうため、なんとなく合計の有給休暇日数だけを把握していると、翌年何日か消滅してしまう可能性があります。新年度のタイミングで繰越日数分を確認しておくと良いでしょう。

従業員分の管理は複雑になる

企業側の目線でいうと、有給休暇に関する業務がかなり複雑になるということが挙げられます。そのうえ、少しのミスが労働基準法違反になってしまう可能性もあるため注意が必要です。

2019年より年5日の有休取得が義務

また、2019年の労働基準法改正より、年10日以上付与される労働者に対して年5日は取得させることが義務となりました。

そのため、従業員ごとの勤続年数や所定労働時間などをより正確に管理し、有休付与・繰り越しの計算までしなければなりません。

有給休暇の付与なら勤怠管理システムがおすすめ

有給付与なら勤怠管理システムがおすすめ

有給休暇関連の業務は、授業員数に応じて複雑化していきます。各個人の情報を入力して管理したり、数値をもとに計算して年次有給休暇管理簿などを作成したりなど工数や手間が多くなりがちです。

そんな時は勤怠管理システム」などの業務ソフトを導入することをおすすめします。基本的には、一度従業員情報を入力してしまえばその数値や項目をもとに、さまざまな計算を自動化してくれます。

書類の作成にもミスを減らしながら業務効率化が図れるため、導入後に業績がアップする企業も見受けられます。デジタル化/DX化を目指している企業にはまさに一石二鳥であるとも言えるでしょう。

日々の業務で悩んでいる担当者の方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

有給休暇は対象期間として、基本的には1年間有効とされます。しかし、その1年間に消化しなかった残日は翌年に繰り越すことも可能です。無理して1年間のうちに消化し切る必要もないでしょう。

ですが、最大保有日数があることや有給休暇の取得期限もあるため、注意しなければなりません。消化できなかった分を繰り越したとしても、時効となり消滅してしまったということにならないように、定期的に残日数を確認しておくと安心です。

また、パートタイム・アルバイトの方でも有給休暇の繰り越しが可能です。ライフスタイルに合わせて計画的に有給休暇を消化しましょう。

監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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