今の時代、男女共同参画社会で男性の育児休業も盛んにおこなわれています。しかし、どんなに会社が支援しても部署や支店によって、取得できない状態になっている従業員もいることは確かです。
では、男性社員の育児休業の取得率が伸びている企業はどんな取り組みをしているのでしょうか。実際の例を踏まえてみていきましょう。
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2018年6月、内閣府の調査『共同参画』より、男性の育児休業の取得率は現在5.14%にとどまっているとのデータが出されました。一方で、3歳未満の子どもを持つ20~40代の男性正社員のうち、育児休業を利用したかったが利用できなかった人の割合は3割となっており、現状の取得率との差があります。
育児休業の利用が難しい理由として、職場での人手不足、上司のコミュニケーションなど、職場環境が多くあげられています。また、日本生産性本部「新入社員 秋の意識調査」では、男性新入社員の8割が育児休業を取得したいというデータもでています。
男性育児休業取得率は、女性の今後や第二子を検討する上でとても重要であり、政府は少子化対策としても、男女共同参画社会の形成においても、重要視しています。企業にとっても、ワーク・ライフ・バランスが充実する環境を作ることで、よりいい人材の確保と、人材の流出を防ぐことができるというメリットにもなります。
男性の育児休業を取ることが推進されていますが、どんな支援があるのでしょうか。まとめてみました。
育児休業給付金は女性だけと思っている方もいますが、男女とも申請すればもらえます。育児休業を検討する男性社員でも、そのような制度を知らない方も多いです。
申請書類は、女性の場合と同様で、母子手帳の写しも必要です。
この給付金は雇用保険被保険者が対象のため、過
が必要となります。ただし、企業側から8割を超える給料を支給される場合は、対象外となります。
パパ・ママ育休プラスとは、夫婦で育児休業の取得を促すものです。原則、子どもが1歳に達するまでの育児休業の期間を2人で取得すれば、1歳2カ月まで取得可能になるというものです。
この育児休業は2人同時に取得してもいいですし、2人で交互に取得することも可能にしています。1人ずつの休業の上限は1年間となります。
育児休業は1回のみ連続して取得するのが原則ですが、出産後8週間以内に夫が育児休業を取得した場合、妻は再度育児休業を取得することができます。
厚生労働省では、
といった助成金を支給しています。
「出生時両立支援コース」は、男性が育児休業や育児目的休暇を取得しやすい職場風土づくりに取り組み、その取り組みによって男性に育児休業や育児目的休暇を取得させた事業主に助成します。
「育児休業等支援コース」は、「育休復帰支援プラン」を作成し、プランに沿って労働者に育児休業を取得、職場復帰させた中小企業事業主に支給されます。休業時や復職時だけはなく人数にも制限はありますが、育児休業取得者の代替要員確保にも助成される制度もあります。
2人で育児休業を同時に取ることは、男性社員にとって得なのでしょうか、それとも損なのでしょうか。従業員からそういった相談もあるかと思いますし、口には出さないとしても判断しかねている方は少なくないことがリアルな現状です。
2人で育児休業を取ることは、育児の負担を減らすことができ、子どもの成長を見ることができるということで、育児休業を同時に取る方も増えていて、育児の負担が減ることで、第二子を検討する家庭も増えていることから、長い目で見れば得であるといえそうです。
家計のことを考えれば、同時に取るよりも交互に育児休業を取得する方がいいかもしれませんし、短時間勤務制度や時間外労働の制限制度を利用して早く帰宅して育児を相互支援するといった形もあり得ます。
そうした問題を解消するため、企業独自の支援として育児休暇中の手当を支給している企業もありますので、自社の支援制度を確かめてみるのがおすすめです。
どんなに企業が育児休業を取得しやすいようにしても、運営するのは現場です。制度設計も大事ですが、現場レベルでの男性休暇・休業の理解の浸透をすべきでしょう。
現在厚生労働省が進めている「イクメンプロジェクト」。こちらでは、育児休業を取得する対象の社員向けの、仕事と育児の両立についての研修資料だけでなく、企業の取り組み事例や「イクボス」といわれる上司に対しての研修資料も用意しています。
育児休業取得予定の男性以外に、従業員全体に関しても指導が必要です。同僚が育児休業を取ったときに助け合えるように、両立しやすい風土の浸透や、本人にも仕事を効率的に進められるように指導をすること。
また管理職に対しては、育児休業に入る部下に対しての理解や、少ない時間での高パフォーマンスを促せるように研修や指導をすることが期待されます。
男性社員が育児休業を取ろうとすると、上司によっては「育児休業から戻ってきても席はない」「出世はあきらめたんだな」といった言葉から、男性の育児休業取得を断念するケースもたたあります。
ですが、企業側が育児休業を申請してきた場合に、拒否することは育児介護休業法違法になります。また、企業側(上司)が不当な扱いをすることは、マタニティハラスメントとなります。男女雇用機会均等法では、このような扱いを防止するように義務づけられました。
このような扱いをまだする上司もいます。都道府県労働局雇用環境・均等部の相談案件となり、行政指導を無視すると企業名が公表されますので注意しましょう。
厚生労働省が主催する「イクメン企業アワード」と「イクボスアワード」があるのはご存じでしょうか。
「イクメン企業アワード」とは、男性が家事や育児に積極的・日常的に参画することを促す対外的な活動を行う企業を表彰するものです。また「イクボスアワード」とは、部下の育児と仕事の両立を推進するために配慮する管理職(イクボス)を表彰するものです。
ここで、男性の育児休業が進んでいる企業の事例を何社か紹介します。ぜひ人事部や総務部で、男性社員の育児休業の促進を検討されている方は参考になさってください。
管理職の研修には、育児休業についての理解・促進に関しての内容を必須項目にしています。また会社独自の制度として、小学6年生まで短時間勤務制度の利用を可能にしています。
本来は小学生になるまでですので、期間をだいぶ伸ばし社員が育児にも取り組みやすくしています。また休業復職時には、上司と本人だけでなくダイバーシティ推進部の3人で面談をする制度を取っています。
パパ・ママ向けのセミナーを開催しています。それには他社勤務の配偶者も参加できるように、休日に実施。他の家族と情報共有もでき、とても人気です。また、育児休業中に資格取得をした場合は奨励金を支給しています。
子ども送り迎えを営業車で行うことを可能にしました。また、チャイルドシートの設置も導入。育児休業中にキャリアが途切れないように、ミニMBAや語学を学べる機会を作りました。営業職や研究職関係なく、テレワークやフレックス制も利用できるようにしました。
いかがでしたでしょうか。男性社員の育児休業取得率の向上は、まだまだです。しかしながら共働き世帯も増えているなかで、少子化を止める一つの手段としても今後も政府は政策として進めていくと考えます。
そのため、男性社員も今後は育児休業を取りやすい会社も企業選びの選択の基準になっていくだろうと考えます。良い人材に長く勤務してもらうためにも、制度設計を整えることをお勧めします。
ソビア社会保険労務士事務所の創業者兼顧問。税理士事務所勤務時代に社労士事務所を立ち上げ、人事労務設計の改善サポートに取り組む。開業4年で顧問先300社以上、売上2億円超達成。近年では企業の人を軸とした経営改善や働き方改革に取り組んでいる。
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