この記事の結論
- 生理休暇とは労働基準法第68条で定められたすべての女性に認められる休暇制度
- 生理休暇の付与日数に上限を設けてはならない
- 従業員から当日の申し出があった場合、事業者は承諾する必要がある
この記事の結論
生理に伴う腹痛や頭痛、肩こり、倦怠感など、さまざまな症状によって業務に著しい支障をきたしている場合は、生理休暇を取得させることが法律で義務づけられています。
生理に伴うさまざまな不調は外見からはわかりにくいものの、従業員から申し出があった場合は生理休暇の取得を拒否することはできません。
本記事では、生理休暇の内容や付与の条件、期間、注意点などについて詳しく解説します。また、生理休暇を申請する際に活用できる申請書の無料テンプレートも公開しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
生理休暇とは、生理によって業務の遂行が困難な状態にある女性の従業員が取得できる休暇です。労働基準法の第68条で法定休日として規定されているため、企業の判断で休暇を取得させないことは違法となります。
使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
業務の性質上、生理休暇を取得させることが難しいポジションであっても、取得を拒否することはできません。
厚生労働省の統計によると、令和2年度において生理休暇を請求した者の割合は0.9%でした。ごく一部の女性労働者しか利用していないことがわかります。
さらに女性労働者がいる事業所のうち、令和2年度中に生理休暇の請求者がいた事業所の割合は3.3%でした。生理休暇制度が存在するにもかかわらず、女性労働者が積極的にその利用をしていない可能性が考えられます。
事業者は生理休暇の周知や取得しやすい環境づくりに取り組むことが大切です。
生理休暇の取得における有給・無給の扱いについては、法律において具体的な規定がないため、企業ごとに取り決める必要があります。一般的には、生理休暇は無給です。女性の健康を重視し、生理休暇を有給休暇として取得できるようにしている場合もあります。
生理休暇を無給と有給のどちらにするかは、事前に通達しておく必要があります。また、従業員のポジションや年齢、勤続年数などに応じて運用を変えることは認められません。不平等な扱いと見なされる恐れがあります。
生理休暇の付与日数は具体的には定められていません。生理休暇は女性が生理に伴う不快な症状や痛みに対処するための特別な休暇のため、業務遂行が困難な状態でなくなれば出社が必要となります。
生理の症状や持続期間には個人差があるため、明確に日数を示すことはできません。しかし、日本産婦人科医会によると、正常な生理の持続日数は3~7日以内とされているため、1週間以上も休むことは通常はないでしょう。
また、症状が強いのは最初の数日で、あとは次第に治まっていったり我慢できる程度まで休息に改善したりすることが一般的です。
月経前症候群(PMS)は、生理が始まる3~10日前に現れる心身の症状のことです。生理開始とともに症状が軽くなるか消失します。なかには月経前症候群の症状が強く、業務遂行が困難な状態になる女性もいます。
そのため、生理休暇の付与日数は数日におよぶことを想定しておきましょう
生理休暇は、従業員から「生理に伴う不調により業務遂行が困難なため、休暇を取得したい」と申告があれば、付与しなければなりません。申告の方法は、電話や対面など口頭が一般的です。
たとえ当日に生理休暇を取得したい旨を申告されたとしても、事業者は生理休暇を与えなければなりません。そもそも、生理は始まった日に強い症状が現れるケースも多いため、当日の申告になるのはやむを得ないことと言えるでしょう。
なお、生理休暇を取得する際に診断書の提出は不要であることが厚生労働省が指針として発表しています。
弊サイトでは、生理休暇を取得する際に使える「特別申請書」の無料テンプレートを公開しています。
Word形式なのでご自由に編集ができ、どなた様でも無料でご利用できます。また、生理休暇以外にも、アニバーサリー休暇やリフレッシュ休暇、忌引き休暇などを取得する際にも使用可能です。下記から無料ダウンロードのうえ、ぜひご活用ください。
正当な事由なく生理休暇を取得させなかった場合は、罰金30万円に科せられる可能性があります。
また、女性従業員に対する理解に乏しい企業と従業員から認識され、離職率が上がったり不満の声が出たりする可能性があります。女性躍進を政府主導で進めている現代においては、女性特有の休暇を取得させない行為は企業の社会的信用性を損ねる原因となるでしょう。
生理休暇は、適切に運用すれば業務に大きな支障をきたすことはないため、労働問題への発展を防ぐためにも適切に運用することが大切です。
生理休暇は就業規則に規定していなかった場合でも、従業員の申告があれば取得させる必要があります。しかし、ルールを統一し、法令を遵守していることをアピールするためにも、就業規則に生理休暇を定めることが重要です。
生理休暇を導入する際は、次の流れで対応しましょう。
各段階における対応方法について、詳しく解説します。
まずは、企業の就業規則に生理休暇に関する規定を設けましょう。
休暇の項目に「生理休暇」を追加し、具体的な取得条件や手続き方法、取得可能な期間などを明示します。なお、生理休暇は法定休暇にあたるため、取得可能な期間を企業が独断で決めることはできません。あくまでも、なるべく避けてほしい時期として示す必要があります。
生理休暇の取得単位は、企業によって柔軟に設定できます。
ただし、従業員に応じて取得させる単位を企業が独断で決めることはできません。たとえば、急激な腹痛により1日しっかりと休みたい旨を申告された場合は、1日の生理休暇を取得させる必要があります。
生理休暇の利用を円滑に進めるためには、申請手続きの方法を整備し、従業員が簡単に利用できるようにすることが不可欠です。デリケートな性に関する問題であるため、手続きが煩雑だと申請のハードルが上がり、生理休暇の利用率が低下する可能性があります。
生理休暇の申請手続きを、メールや口頭で簡単におこなえるようにします。また、従業員が直接上司や人事部に連絡することなく申請できるようなシステムにすることで、生理休暇の申請をストレスなくおこなえるようになるでしょう。
ただし、欠員が出たことは現場の従業員や管理者に知らされるべきであるため、生理休暇を取得した旨をシステムで通知できることが望ましいでしょう。
生理休暇制度の存在と利用条件について、全従業員に周知しましょう。社内広報を活用し、社内メールやWebサイトを通じて生理休暇制度に関する情報をわかりやすく提供します。
次に、従業員向けのミーティングや研修を通じて、生理休暇制度の詳細や目的について説明します。具体的な利用例や女性が安心して働くための施策についても伝え、理解を深めることが重要です。
このような対応により、全従業員が生理休暇制度を理解できるようになり、積極的に活用できる環境が整うでしょう。
生理は女性特有のものであるからこそ、特別扱いのように捉える従業員が出てくる可能性があります。個別に面談して理解を求めるなど、可能な範囲で対応しましょう。
従業員が生理休暇や関連するトラブルについて気軽に相談できる窓口を設置しましょう。心理カウンセラーや産業医が担当することで、生理休暇について安心して相談できます。
産業医とのメール相談システムを導入することで、従業員は個別に生理休暇に関する疑問や悩みを気軽に打ち明けることができます。これにより、生理休暇の取得に対する懸念がなくなり、取得率が高まるでしょう。
生理休暇は、女性従業員が生理による不調によって業務遂行が困難な状態にある場合に取得できる休暇制度です。企業が生理休暇制度を導入する際には、就業規則への明確な規定や利用条件の設定、従業員への周知と理解促進、相談窓口の設置などが求められます。
生理休暇は法定休暇のため、労働問題を防ぐためにも制度について理解することが大切です。