労働基準法第39条で定められた年次有給休暇以外にもいろいろな法定休暇があります。労働基準法で定められた生理休暇や公民権行使のための休暇(裁判員選任等)、育児介護休業法で定められた子の看護休暇や介護休暇制度などです。
この記事では法定休暇の種類をご紹介するのとともに、有給休暇と無給休暇の違いについても解説していきます。
目次
1週間の労働日数が5日以上、または1週間の労働時間が30時間以上を超える労働者を採用した場合、6か月継続勤務した中で休日を除く労働日の8割以上の出勤を達成した労働者に対して、有給休暇を10日付与することが労働基準法で定められています。
その後、1年を経過する毎に付与日数を増やしていき、6年6か月以上継続して働いている場合は、20日の有給休暇を付与する必要があります。なお、年次有給休暇という制度は、パートやアルバイト、嘱託といった短時間労働者についても付与が義務付けられています。有給休暇の時効は2年です。1年間で使い切れなかった有給休暇は翌年に繰り越されます。
また、有給休暇の使用は事業主の許可が必要なものではありませんので、不当に拒否することはできません。有給休暇以外の休暇については、給与の支払いを法律で義務付けられていないので、無給休暇にすることが可能です。無給休暇にすることが可能な休暇については、次の項目から紹介、解説していきます。
公民権の行使というのは、さまざまなものがありますが、一般的な労働者において最も起こりうるものが、裁判員として裁判に出席しなければならない場合です。平成21年度から施行された裁判員制度により、労働者が裁判員やその候補者になり出席しなければならないといった場合には、これを拒否することができません。
また、労働者が裁判員として休暇を取ることによって、その労働者の不利益になるような扱いをしてはいけないと定められています。もし、公民権の行使のための休暇について細かく規定していない場合は、対処する必要があるでしょう。
女性特有の生理現象である生理は、健康的な女性であれば定期的に引き起こされるものです。症状の重さには個人差があり、酷い場合には日常生活に支障をきたしてしまう場合があります。生理の症状が重い女性の場合、生理になってしまうと起き上がるのさえ困難になり、就業に影響が出ることもあります。
生理によって就業が著しく困難になると判断した女性労働者から生理休暇についての請求があった場合は、請求を拒否することはできないと法律上制定されています。また、この生理休暇というのは、半日単位や時間単位で女性の体調に合わせて申請をすることができるようになっています。
小学校に入学前の幼児を養育している労働者の場合、子供が負傷したり病気にかかったりしたときに、子の看護休暇を事業主に申請することができると法律で定められています。子の看護休暇は、1年に5日、小学校入学前の幼児が2人の場合は10日を限度に付与する必要があります。
また、事業主は、労働者が子の看護休暇を取得する際には、怪我や病気の事実を証明する書類を提出させることが可能とされています。ただし、労働者の子供の怪我や病気の内容で判断して、休暇の申請を拒否することはできません。
労働者の家族内に、要介護者が1人いる場合は1年に10日、2人いる場合は1年に20日の介護休暇を付与することが法律で定められています。介護休暇における家族の範囲というのは、介護休業制度と同じであり、配偶者、配偶者を含む父母と子が対象範囲となっています。
休暇の取得は、1日単位もしくは半日単位で、事業主はこれを拒否することができません。労働者から介護休暇の取得を求められた場合、事業主は労働者に以下の項目を申請してもらう必要があります。
申請は口頭でも書面でもどちらでも問題ありません。
法定で定められている休暇というのは有給休暇だけでなく、多くの種類があります。事業主側は、拒否することができない休暇申請についてしっかり認識しておかなければなりません。また、労働者自身もこれらの休暇について知識が足りていないことが多いです。
事業主側、労働者側双方のためにも、もし就業規則に細かく制定していないのであれば、これを機会に休暇制度についての見直しをしてみてはいかがでしょうか。
社会保険労務士法人|岡佳伸事務所の代表、開業社会保険労務士として活躍。各種講演会の講師および各種WEB記事執筆。日本経済新聞、女性セブン等に取材記事掲載。2020年12月21日、2021年3月10日にあさイチ(NHK)にも出演。
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