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育児休業給付金の賃金の80%(実質10割)へ引き上げはいつから?支給条件から計算方法まで解説

育児休業給付金の80%へ引き上げ(実質10割給付)はいつから?2024年最新

監修者:蓑田 真吾 みのだ社会保険労務士事務所
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この記事でわかること

  • 育児休業給付金の受給条件・申請方法
  • 育児休業給付金引き上げについての最新情報
  • 働き方改革促進に役立つ育児休業に関連する制度

育児休業中には、育児休業給付金が受け取れます。対象となる従業員が育児休業給付金の受給を請求した場合、事業主は必ず対応しなければなりません。

今回は育児休業給付金が受け取れる条件や給付金の計算方法、申請方法のほか、育休・出産に関わる制度を紹介します。

また、段階的に施行される「育児・介護休業法」の改正内容や、政府が検討している育児休業給付金の賃金80%(実質10割)引き上げについても解説していきます。

育児休業給付金とは

2022年度最新:育児休業給付金とは?支給条件から計算方法、新制度(法改正)を解説【社労士監修】

育児休業給付金とは

出産と子育てにより発生する育児休業期間中に対象者へ支給される手当です。

育児休業中は勤務できず、本来の給与が入ってきません。無給状態でも生活に困らないように、条件に当てはまる場合に一定額の給付金を支給します。

育児休業給付金は、育児休暇中の男性も取得が可能です。パパ・ママ育休プラス制度を活用することで、夫婦が同時に育児休暇を取得しやすくなりました。夫婦ともに条件を満たせば取得できます。

育児休業給付金はいくらもらえる?計算方法

育児休業給付金がいくらになるかは、下記の計算式を用いて計算します。

直近6カ月の育児休業給付金の計算方法

6カ月経過後の育児休業給付金の計算方法


育児休業開始時賃金日額とは、休業開始時賃金月額証明書にある金額の休業開始前6カ月の賃金を日割りにした金額です。

育児休業給付金は非課税です。所得税はかからず、翌年度の住民税算定額にも含まれません。また育児休業中の社会保険料は、労使ともに免除されます。給与所得がなければ、雇用保険料も発生しません。

2人目の育児休業給付金はいくら?

2人目の場合であっても、雇用保険に加入していれば育児休業給付金の申請は可能です。

1人目の育児休業給付金と同額になるケースが多い

勤務実績がなければ、育児休業給付金は1人目の育児休業給付金と同額になる可能性があります。育児休業給付金の計算には、産休・育休の期間が免除され、1人目の育児休業に入る前の休業開始時賃金月額証明書で計算することになるためです。

1人目の育児休業から復帰した後、産休・育休前より時短勤務(定時よりも早く帰宅すること)を希望する方が多く、給与額が総支給額よりも減りがちです。

時短勤務のまま2人目を出産した場合、時短勤務の給与より休業開始時賃金月額証明書の金額が減ります。そのため、連続して育児休業を取得し時短勤務に入る前の労働時間での給付を受け取る労働者が多いといえます。

人事・労務担当者は育児休業から復帰した従業員を迎える場合、このような育児休業の取得ケースがあることも念頭においておきましょう。

育児休業給付金の賃金80%(実質手取り10割)への引き上げはいつから?

2023年3月に日本政府は、産後の一定期間に夫婦ともに育休を取得した場合、休業前の賃金とほぼ同額の給付金を受けられるようにする方針を表明しました。

かねてより検討されていた、育児休業給付金を現行の賃金67%から最大80%へ引き上げる案を実施し、給付金には社会保険料がかからないことから、実質育休前と同額の賃金を受け取れるようにする方針です。

育児休業給付金の賃金80%(実質手取り10割)への引き上げはいつから?

男性の育児休暇取得を促進する「産後パパ育休」で一時的に給付金を80%へ引き上げる予定で、女性も同様に手取り10割の給付金を受け取れるよう、給付率の引き上げが検討されています。

なお、給付金引き上げの実施時期については明らかにされていません(2023年12月時点)。

育児休業給付金がもらえる条件

育児休業給付金がもらえる方は、下記の条件を満たしている方です。

育児休業給付金の受給条件

  • 雇用保険に加入している
  • 育休前の2年間に月11日以上働いた月が12カ月以上ある
  • 育休中の就業日数が、月10日以下である
  • 育休中の賃金は休業前の8割以下である

育児休業給付金の受給条件とは?

育児休業給付金を延長できる条件

原則、養育している子供が1歳となった日の前日までである育児休業給付金ですが、一律給付金を停止した場合に困る家庭もあります。
具体的には1歳の誕生日の前々日。民法の規定上、誕生日の前日をもって満年齢に達したとみなされるため。

そのため、一定の条件を満たせば延長が可能です。

育児休業給付金延長の条件

  • 育児休業対象となった子供が、保育園(無認可保育施設は含まれません)に申請したものの、1歳もしくは1歳6カ月に達する期間について、保育園に入園できない場合
  • 育児休業の対象となった子供が、1歳もしくは1歳6カ月に達する日後の期間について、その子供を養育する者(配偶者もしくは本人)が以下のいずれかに該当した場合
    (1)死亡したとき
    (2)負傷、疾病、障害などで、子供を養育することが困難な状態になったとき
    (3)離婚など事情により配偶者が子供と同居しないこととなったとき
    (4)育児休業の対象の子供の次の子供が生まれる予定、もしくは生まれた場合

育児休業給付金延長の条件

育児休業給付金の申請方法・必要書類

育児休業給付金の申請方法

育児休業給付金の申請は対象の従業員に申請書類を記載してもらい、事業主が代わりに申請します。

育児休業給付金の申請に必要な書類

事業主は育児休業を希望する従業員がいる旨をハローワークに伝え、育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書に必要事項を記載し、提出します。

休業開始賃金月証明書も同様にハローワークでもらえます。

休業開始賃金月証明書の記入例|厚生労働省

休業開始時賃金月額証明書(雇用

出勤簿のフォーマットは指定がないので、会社で使用しているもので問題ありません。

母子健康手帳につては、フォーマットが厚生労働省のサイトからダウンロード可能です。

母子健康手帳|厚生労働省

母子健康手帳

その他、マイナンバーの番号や通帳口座の写しが必要になるので、事前に育児休業に入る従業員の方へ依頼しておきましょう。

特定の法人は電子申請が義務

2020年4月より、特定の法人は雇用保険の育児休業給付受給資格確認票・ (初回) 育児休業給付金支給申請書と、育児休業給付金支給申請書は電子申請義務化の対象です。特定の法人とは、下記を指します。

電子申請義務化の特定法人とは

  • 資本金、出資金または銀行等に納付する拠出金額が1億円以上の法人
  • 投資法人
  • 相互会社
  • 特定目的会社

育児休業給付金関連の出産後の育休制度

ここからは働き方改革の推進に役立つ出産後の育児休暇や、時短勤務制度を中心にご紹介します。

1. 産後パパ育休(出生時育児休業)

産後パパ育休(出生時育児休業)とは子の出生後8週間以内に、父親が4週間の育児休業を取得できる制度です。

これまで解説した子が1歳までの育児休業とは別に取得でき、原則、休業の2週間前までに取得申請をおこなえば取得できます。また分割して2回の取得も可能です。

POINT

産後パパ育休(出生時育児休業)とは?

休業対象期間・取得可能日数

子供の出生後8週間以内に4週間まで取得可能

申請期限

原則休業の2週間前まで
雇用環境の整備など、今回の改正で義務づけられている内容以上の取り組みの実施について、労使協定で定められている場合は、1カ月前までとすることが可能

分割取得

分割して2回取得可能

申請期限

原則休業の2週間前まで初めにまとめて申し出ることが必要

休業中の就業

労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能

休業中の就業に関しては、労使協定を締結している場合に限り労働者が合意した範囲で就業できます。具体的な手続きは、以下のような流れで進めます。

休業中の就業についての流れ

  1. 労働者が就業してもよい場合は、事業主にその条件を申し出
  2. 事業主は労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示
  3. 労働者が同意
  4. 事業主が通知

なお、この産後パパ育休は2022年10月より新設された制度です。2022年9月30日まであった「パパ休暇」は、産後パパ育休の新設に伴い廃止されています。

2. パパ・ママ育休プラス

パパ・ママ育休プラス制度とは、対象の子供の年齢が1歳2カ月になるまで、夫婦ともに育児休業を取得することで休業を延長できる制度です。夫婦が同じ職場にいる従業員にとっては最適な制度でしょう。

夫婦ともに育児休業を取得する場合、以下の条件を満たすことで申請が可能です。

パパ・ママ育休プラスの取得条件

  • 配偶者が対象の子供が1歳に達するまでに育児休業を取得していること
  • 本人の育児休業開始予定日が子供の1歳の誕生日以前であること
  • 本人の育児休業開始予定日は配偶者が取得している育児休業の初日以降であること

パパ・ママ育休プラスの取得条件

3. 短時間勤務などの措置(時短勤務制度)

時短勤務とは、3歳未満の子供をもつ労働者が1日の労働時間を短縮する制度です。

対象となる従業員から時短勤務の請求があった場合、事業主は時短勤務もしくは時短勤務に代わる措置の実施が義務づけられています。

4. 産休・育休明けに取得できる「子の看護休暇」とは

育児や介護をおこなうすべての労働者が、子の看護休暇や介護休暇を時間単位で取得できます。

「子の看護休暇」とは、育児・介護休業法に定められている子供の病気やけがなど、看護が必要なときに利用できる休暇です。

小学校就学前までの子供がいれば、事業主に申し出ることで看護休暇を取得申請できます。1人であれば年5日、2人以上であれば10日まで取得可能です。

育児休業における事業主がすべき取り組み

育児休業における事業主の取り組み

事業主は男女ともに仕事と育児を両立できるように、雇用環境整備、個別周知・意向確認の措置の義務化が課せられています。

雇用環境の整備

労働者が育児休業や産後パパ育休を申請しやすくするために、事業主は以下のいずれかの措置を講じ、職場環境の整備に努める必要があります。

また下記の措置に関し、できる限り複数の措置を講じることが望ましいとされています。

具体的な雇用環境の整備とは

  • 育児休業や産後パパ育休に関する研修の実施
  • 育児休業や産後パパ育休に関する相談窓口を設置するなど、相談体制の整備
  • 自社における育児休業・産後パパ育休取得事例の収集や情報提供
  • 自社における育児休業・産後パパ育休制度と育児休業促進法に関する方針の周知

マタニティハラスメント対策

マタニティハラスメント対策は事業主の義務

職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業などに関するハラスメント対策やセクシャルハラスメント対策は事業主の義務です。

男女雇用機会均等法では、女性労働者の妊娠・出産など厚生労働省令で定める事由を理由とする解雇その他不利益取り扱いを禁止しています。また、育児・介護休業法でも育児休業などの申し出・取得を理由とする解雇その他不利益な取り扱いを禁止しています。

育児休業に関して、上司・同僚を含む従業員すべてにマタニティハラスメントを防ぐための研修を実施し、健全な労働環境を構築することが大切です。

労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

事業主は本人または配偶者の妊娠・出産などを申し出た労働者に対し、育児休業制度などに関する事項の周知と、休業取得の意向確認について、個別に対応する必要があります。

なお、育児休業取得を控えさせるような、個別周知と意向確認は認められません。

周知事項

  • 育児休業・産後パパ育休に関する制度
  • 育児休業・産後パパ育休の申し出先
  • 育児休業給付に関すること
  • 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

個別周知および意向確認は、以下のいずれかの方法によりおこないます。

個別周知・意向確認方法

  • 面談
  • 書面交付
  • FAX
  • 電子メールなど

面談はオンライン面談も可能であり、FAXや電子メールなどは、労働者が希望した場合のみ対応します。

2023年4月から!育児・介護休業法の改正ポイント

育児・介護休業法は段階的に施行されています。直近の改正は2023年4月1日に施行されました。

2023年4月から!育児・介護休業法の改正ポイント

育児休業取得状況の公表義務化

常時雇用する従業員が1,000名を超える事業主は育児休業などの取得状況を、年に一度公表することが義務づけられました。

公表内容は、男性の「育児休業などの取得率」または「育児休業などと育児目的休暇の取得率」で、インターネットなど、一般の方が閲覧可能な方法で公表する必要があります。

自社のWebサイトほか、厚生労働省が運営するWebサイト「両立支援のひろば」での公表も推奨されています。

まとめ

従業員が育児休業給付金を請求した場合、事業主は速やかに育児休業給付金の申請を進めなければなりません。近年、育児に関わる法律は頻繁に改正されており、法令違反にならないように、適切な対応が必要です。

育児休暇中の育児休業給付金のポイント

  1. 育児休業給付金とは、出産と子育てにより発生する育児休業期間中に対象者へ支給される手当
  2. 産後パパ育休(出生時育児休業)、パパ・ママ育休プラス、時短勤務制度は職場環境の改善に役立つ
  3. すべての労働者が「子の看護休暇」の時間単位取得が可能
  4. 育児休業給付金の申請は電子申請義務化対象
みのだ社会保険労務士事務所 監修者蓑田 真吾

1984年生まれ。社会保険労務士。
都内医療機関において、約13年間人事労務部門において労働問題の相談(病院側・労働者側双方)や社会保険に関する相談を担ってきた。対応した医療従事者の数は1,000名以上。独立後は年金・医療保険に関する問題や労働法・働き方改革に関する実務相談を多く取り扱い、書籍や雑誌への寄稿を通して、多方面で講演・執筆活動中。
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