この記事でわかること・結論
- 夜勤手当は企業に支給義務はなく、任意で設定する手当のこと
- 一方で深夜手当は割増支給する義務が労働基準法に定められている
- 夜勤手当は主に介護や建設の現場で採用されていることが多く、相場は1回の夜勤で数千円から数万円
この記事でわかること・結論
夜勤手当とは、夜勤帯で働いている従業員のために企業が任意で決められる手当のことであり支給義務はありません。そのため夜勤が発生するような職場でも夜勤手当がない会社もあります。
似たような深夜手当については、企業への割増支給義務が労働基準法で明記されているため遵守する必要があります。深夜手当のほかにも、割増支給となる時間帯があるため一緒に覚えておきたいところです。
そこで本記事では、夜勤手当および深夜手当について相場や計算方法、それぞれの違いや深夜手当における注意点などを解説します。
目次
夜勤手当とは、夜勤が発生する業種などにおいて企業が従業員に任意で設けている手当のことを指します。法律で夜勤手当について明記されているという訳ではないため、手当金額などの設定は企業によって異なります。
一般的に夜勤手当が設けられているような業種は以下となります。もちろん該当職種であっても、夜勤手当がない会社も存在します。
手当金額について実際に採用されているケースは、1回ごとの夜勤手当が設定されているパターンや規定時間以降(たとえば22時など)1時間ごとにいくらと設定されているパターンなどがあります。
また、夜勤手当と似ている言葉に深夜手当(深夜割増賃金)がありますが、こちらは深夜帯に働く場合に割増賃金になるというものです。どちらも「夜勤・深夜で働けばお金が多くもらえる」という内容であるため同じように感じますが、実は明確な違いがあります。
先述したように夜勤手当は企業が任意で設けるものであるため、導入の有無は自由です。しかし深夜手当については労働基準法第37条にて、企業への支払い義務が定められています。
使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
上記内容は、深夜労働による従業員の労働災害リスクが危惧されているために存在します。不規則な時間帯では、危険も増すためその時間での勤務にはそれなりの割増手当をしようということです。
また、労働基準法では深夜を22時〜翌5時と定めており、この時間帯で働く従業員には基本給の25%以上を割増賃金として支払う義務が企業にはあります。
22時〜翌5時で働く従業員へ、基本給の25%以上を割増して支給しない場合は労働基準法違反となります。違反が発覚したら6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。長期的に違反している場合は、労働基準監督署による事業所への調査および是正勧告、送検や起訴などに発展することもあります。
司法処分などになれば企業イメージや採用率などがダウンするなど、存続にもかかわる影響があるため必ず深夜手当のルールは守るようにしましょう。深夜手当は年齢制限などほかにも決まりがあるため、詳しくは以下の記事をチェックしてみてください。
ここでは、夜勤手当や深夜手当(深夜割増賃金)のそれぞれの計算方法を解説します。深夜手当は労働基準法に従っての給与計算ですが、夜勤手当は企業によって異なるため多く採用されているケースなどを紹介します。
介護職や建設業などでよく採用されている夜勤手当は1回数千円〜数万円という相場で導入されていることが多いです。
そのため計算方法はシンプルであり「その月の夜勤回数 × 設定された1回あたりの夜勤手当額」として月間の夜勤手当額を計算することができます。
また、1時間あたりで設定されている企業であれば「夜勤として働いた時間 × 設定された1時間あたりの夜勤手当額」で計算することができます。
深夜手当については「基本給の25%以上の割増支給」をする義務があります。この場合における基本給は主に時給で計算します。日給制や月給制で計算する場合は、まず1時間あたりの賃金を算出してから計算しましょう。
1時間あたりの賃金が1,200円である場合、計算式は「1,200円 × 0.25% × 7時間 = 2,100円」となりその日の深夜手当は2,100円以上を支給する必要があります。
また、日給制や月給制における1時間あたりの賃金の算出方法は以下です。
1時間あたりの賃金が算出できたら、上記の例同様に25%と深夜労働時間を掛け算して深夜手当を計算しましょう。
夜勤手当と似ている深夜手当は支給義務がありますが、企業が覚えておきたい注意点があるため解説します。
深夜手当は25%以上の割増賃金を支給をする義務がありますが、対象となる労働者はパートタイムやアルバイトも該当します。
また、残業や休日労働については概念がないとされる管理職(管理監督者)でも深夜手当については対象となるため覚えておきましょう。
深夜手当以外にも、割増賃金になるケースがあります。それは「時間外労働」と「休日労働」の時です。深夜手当含む、それぞれの割増率は以下となります。
深夜手当 | 基本賃金の25%以上 |
---|---|
時間外手当 | 基本賃金の25%以上※ |
休日手当 | 基本賃金の35%以上 |
1カ月の時間外労働が60時間を超える場合は、超過分については50%以上の割増支給をする必要があります。
また、上記の手当たちは重複して計算するものです。そのため、たとえば深夜勤務であり時間外労働である場合は、基本賃金の50%以上が合計手当として計算されます。
夜勤手当は、法律では決まりがなく企業が任意で採用している手当のことを言います。労働基準法で企業への支給義務が明記されている深夜手当とは別ものであるため誤解しないようにしましょう。
夜勤手当を採用している企業では「1回あたり数千円〜数万円」が相場です。介護職や建設業などでは夜勤手当を導入しているところも多いです。
その他民間企業においては、夜勤手当を導入していなくても深夜手当は支給義務があるため、時間外労働や休日労働の際の手当などと一緒に再度確認しておきましょう。
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