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給与計算の基礎知識について初心者向けにわかりやすく解説

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毎月定例の業務である給与計算は、細かい計算に加えて、毎年のように変わる税制度や社会保険制度への改正など、気を抜けない業務です。
従業員からみると、給料は会社での最大の感心事のひとつでもあります。
本記事では、単純なミスでもトラブルになる可能性がある給与計算について、初心者にもわかりやすく説明します。

監修者
労務 SEARCH

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給与計算の事務は難しい?

給与計算の事務は難しい?

給与計算は「プロの仕事」「難しい、複雑」「ミスが許されない」といわれます。
特に初心者はなじみが浅く、複雑である印象をもつことが多いようです。
給与計算としておこなう業務の範囲は、

  • 給与および賞与など、従業員に支給する給与の計算
  • 社会保険に関する手続き
  • 年末調整

などで、会社によって業務の範囲が異なります。

給与計算事務が難しいといわれる理由

給与計算事務が難しい、特に初心者にとっては難解であるといわれる理由は次のとおりです。

いずれも税金と社会保険の分野において、複雑さと各制度を熟知することが大変であることが理由となっており、特に初心者や業務経験が少ない人には、「給与計算事務は難しい」といわれています。

給与計算は難しくない

給与計算は、どの職場でも必要な業務であると同時に、資格不要で従事できます。
毎月決まった時期に、定型的な作業が多い業務です。
専門用語が多いなどの課題はありますが、一度慣れると、スムーズに業務がおこなえます。

初心者の給与計算の覚え方

給与計算をはじめておこなう初心者でも、ポイントを押さえることで早く覚えることができます。
まったくの初心者の場合は、簡単な入門書や解説書を参考に業務をおこなうこともおすすめです。

給与計算のやり方

給与計算のやり方

給与計算の流れについて、一般的な月給制を例として確認します。

給与計算の流れは次のとおりです。

基本給 + 残業手当などの課税手当 = 課税支給額

課税支給額 + 通勤手当などの非課税の手当 = 総支給額

総支給額 - 控除 = 差引支給額

給与計算の流れ

具体的な給与計算の流れは次のとおりです。

勤怠情報の把握

タイムカードや勤怠管理システムの情報をもとに、従業員ごとに勤務時間を集計します。

  • 集計する項目は、出勤日数、休暇日数、労働時間、残業時間です。
  • 残業時間には「法定時間内残業」と「法定時間外残業」があります。法定時間内残業は、残業手当を支給する会社と支給しない会社があるため、自社の就業規則を確認しましょう。
  • 残業時間は時間数や時間帯などによって「法定割増賃金率」が異なるため、注意が必要です。

課税支給額を計算

基本給に加えて、残業手当や休日出勤手当などを計算します。

  • 残業手当や休日出勤手当の金額は、
    残業時間 × 1時間あたりの賃金 × 割増率
    です。計算する際、割増率の違いに注意します。
  • 欠勤や遅刻、早退などがあるときは減額します。
  • 所得税や住民税が課税される手当はさまざまで、残業手当・役職手当・資格手当・住宅手当などで、現物支給も含みます。
    社内での呼称にかかわらず、課税対象となる手当であるかを確認しておきましょう。

非課税手当を確認

会社が支給する手当のうち、所得税や住民税が非課税にならない手当を加算します。

  • 通勤手当や出張手当、宿直手当などが該当します。実費精算のかわりに支給する手当は非課税になることがあります。
  • 非課税の限度額が定められている手当もあります。通勤手当であれば月15万円までです。
  • 通勤手当であっても課税されることがあります。たとえば新幹線通勤時のグリーン車料金などです。
  • 会社によってさまざまな手当や呼称があるため、非課税となる手当であるか、確認しておきましょう。

控除額の計算

控除額とは、給与支給時に会社が天引きする金額です。
会社が天引きする税金などは、所得税・住民税などの税金、健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料です。

  • 所得税
    毎年1月から12月までの所得の年額に対応した所得税を天引きします。
    所得税額の確認は、「給与所得の源泉徴収税額票」を用います。

    総支給額 ― 非課税支給額 ― 社会保険料控除額

    により求めた金額と、扶養親族の人数とを照らし合わせた税額です。

    源泉徴収税額表は毎年変わります。また、源泉徴収の計算のための控除額なども変わるため、税制度改正にあわせた計算が必要です。
    給与所得の源泉徴収税額表

    具体的な手続きについても、最新の公式な情報源を確認しましょう。

  • 住民税
    住民税は給与支給時に会社が天引きし、都道府県への税金と市区町村への税金をまとめて、市区町村に支払います。
    住民税の金額は毎年変更されます。毎年5月末日までに会社へ通知された金額にもとづいて、翌月6月の給与支給分から天引きする金額を変更します。
    なお、賞与については住民税がかからないことに注意します。
  • 介護保険料
    40歳以上の従業員は介護保険料の納付が発生します。従業員負担額である介護保険料の半額を給与支給額から天引きします。
  • 雇用保険料
    毎年、保険料が変わります。従業員負担分のみを給与支給時に天引きし、会社負担分とあわせて納付します。

    当月の給与支給額 × 保険料率 = 雇用保険料

    となります。
    雇用保険料は毎月天引きしますが、実際に会社が納付する時期は7月のみです。

総支給額 ― 控除額 = 差引支給額を計算

総支給額から税金などの控除額を差し引いた金額が従業員へ支払う金額です。「手取り」と呼ばれます。
社内預金の積立や従業員への貸付金の返済を天引きでおこなう場合は、差引支給額から控除して支給します。

給与計算をエクセルで

給与計算を手計算でおこなうと計算ミスが発生しやすいです。
給与計算システムが導入されていない場合は、エクセルなどのツールを用いて計算します。エクセルのテンプレートなどもインターネット上で公開されているため、参考にすると良いでしょう。
エクセルで給与計算をおこなう場合は、入力ミス、社会保険制度の改正による控除額の変更に注意します。

給与計算のシミュレーション

給与計算があっているか、簡易にシミュレーションすることができます。
インターネット上には、給与や手当を入力することで簡単に給与明細の作成や差引支給額の確認ができるサイトが多くあります。
ただし、最新の税制度などの改正に対応しているかどうか、慎重に確認しましょう。

給与計算の効率化

給与計算の効率化

給与計算業務は大切なバックオフィス業務のひとつですが、次のとおり多くの労力が必要です。

  • 法律で定められた帳簿の作成と保管が必要
  • 従業員ごとに膨大な情報を取り扱うこととなる
  • 従業員のプライバシーにかかわる情報が多い
  • 税制度や社会保険制度の改正が頻繁におこなわれる
  • 税制度や社会保険制度の改正ごとに、自社のシステムの変更作業が発生する
  • 税金や社会保険料の計算に間違いがあると、追徴や還付が発生する
  • 給与計算にミスがあると、労使トラブルに発展する可能性がある
  • 紙で保管している場合は、保管スペースの負担と紛失リスクがある

給与計算業務の負担を軽くするためには、給与計算システムの導入が効果的です。
特に毎年のように改正される税制・社会保険制度へ適切に対応するためには、システム更新費用の負担が少ないクラウド型のシステム導入がおすすめです。

今後、政府の方針として税や社会保険手続きを電子化すると示されていることに加えて、パートタイムやアルバイトなどへの社会保険制度の適用範囲の拡大も予定されています。
業務が複雑化するとともに電子化がすすむ給与計算業務は、電子化で対応することで、自社における給与計算、年末調整などのコスト削減ができます。

自社の勤怠管理や給与計算の業務をクラウド化して、バックオフィス業務の効率化を検討してはいかがでしょうか。

まとめ

給与計算は気をつかう業務であると同時に、毎年改正される税制度や社会保険制度に適切に対応する必要があります。
また、勤怠管理などと密接につながる業務であり、紙による管理では限界があります。
給与計算や勤怠管理をクラウド化することでバックオフィス業務を効率化ができ、今後の税制度と社会保険制度についての電子化にも対応することができます。
自社でのバックオフィス業務を見直すとともに効率化を図ってはいかかでしょうか。

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