労働基準法において、深夜労働とは午後10時から午前5時まで(場合によっては午後11時から午前6時まで)の労働をいいます。
この深夜労働時間帯の労働に対しては、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金の支払義務が発生し、実際はそれ以外にも深夜労働に関して、さまざまな規制や制限が規定されています。
どういったものがあるのか確認していきましょう。深夜労働者の方はもちろん、従業員の勤怠に関わる方は参考にしてみてください。
目次
まずは、年少者に関する規定についてです。年少者とは労働基準法で18歳未満の者を指します。その就業に関しては健康や福祉の確保の観点から、さまざまな制限が設けられているのです。
まず、午後10時から午前5時の深夜労働は原則としておこなってはいけないと定められています。しかし交替制による労働の場合は、満16歳以上の男性に限り認められています。
また例外として、災害などによる緊急事態により働く必要がある場合においては、地域または期間を限って午後11時および午前6時とすることが可能です。
次に、女性の深夜労働について解説します。当然ではありますが、女性も深夜残業を行うことができます。これは雇用における男女の均等な機会や待遇を確保するためであり、男女での違いはありません。
ただし、労働基準法には女性の深夜残業に関して、深夜の通勤や人気のない場所で業務を行うことがあるため、防犯の観点から安全確保のための措置をおこなう必要がある旨が記載されています。
これは送迎バスを用意したり、公共交通機関が運行している時間に配慮した勤務時間を設定したり、防犯ベルを用意したりといった、女性労働者の通勤の際における安全を確保する取り組みを言います。また防犯上、女性が1人で作業することは基本的に避けるようにすることも安全確保のための取り組みです。
各家庭の事情を考慮して、深夜残業をお願いする必要があります。子供の養育や要介護の家族がいるなど、一定範囲の女性労働者が請求した場合は、深夜労働をさせてはいけません。
安全確保や事情を考慮するのは特別なことではありません。深夜労働に従事する社員が、快適に働ける環境を整備することを忘れないようにしましょう。
会社は小学校就学前の子供の育児を行う労働者に関して、事業に支障の出ない場合に限り、労働者の請求に応じて深夜労働(残業も含む)を制限しなければいけません。深夜労働の制限として、次に該当する労働者には請求できないと定められています。
また、
など雇用形態によって異なる部分もあります。この深夜労働の制限の請求は何回もおこなえますが、その効力は1回の請求につき6カ月間で、制限が開始する1カ月前までの申請が必要です。
この申請には、次の情報を記入した書面の提出を労働者に求めます。
労務担当者としては、誰が請求できるのか、請求にあたっての書面の内容や制限の期限などしっかりと把握しておきましょう。
育児と同様に、要介護状態の家族の介護をおこなう労働者に関しても事業に支障の出ない場合に限り、労働者の請求に応じて深夜労働(残業も含む)を制限する必要があります。
請求の条件、請求できない人の条件は育児による申請の場合と同様で、申請回数に制限がない点、1回の請求の効力が6カ月である点と1カ月前までの申請が必要な点も同じです。ここでは要介護状態について説明します。
深夜労働の制限申請ができる要介護状態に関しては、次のように法律で定められています。
なお申請の対象となる家族は、
であり、祖父母・兄弟姉妹・孫は一部条件がついているので注意してください。
従業員が深夜労働する際は、深夜労働申請書を提出してもらうようにしましょう。深夜労働申請書の提出は法律上の義務ではありませんが、適切な労務管理などのために重要です。
もし深夜労働申請書のフォーマットが社内にない場合は、テンプレートの活用がおすすめです。弊サイトでも下記のような無料テンプレートを公開しているので、必要な方は無料ダウンロードのうえ、ご活用ください。
今回は深夜労働の規制や制限についてご紹介しました。労務担当者としては、深夜労働を行う社員に対してどのような配慮が必要なのか、しっかりと把握しておきたいものです。
また、社員のなかには深夜労働の制限を申請できることを知らない人もいることを踏まえて、情報の周知徹底が必要となります。労働環境を整備することは会社にとって非常に重要なことです。
労務担当の皆さんは、社員が気持ち良く働ける環境の整備に努めましょう。
上場の建設会社にて情報システムの開発、運用、管理を経験した後、人事部に異動して給与計算、社会保険手続きから採用・退職など、人事労務管理に約12年従事。やまもと社会保険労務士事務所の所長、特定社会保険労務士。
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