高校生のアルバイトも立派な労働者です。賃金・有給休暇・残業等労働法令は正社員と同様に適用され、法律上の関係は変わるところはありません。またそれに加え、年少者の制限等労働基準法の制限があり、知っておきたいことがたくさんあります。アルバイトを雇う前に、知っておきたいポイントを絞って解説していきます。
高校生アルバイトを雇う場合、気をつけなければならないポイントがたくさんあります。まず雇用が可能になるタイミングですが、中学を卒業してすぐ雇うということはできません。「満15歳に達した日以降の最初の3月31日」、つまり中学を卒業する年度の3月末までは雇用できない期間となります(新聞配達など一定の条件下で例外になるものもある)。
4月になり、高校生になれば雇用することが可能になります。雇用する場合には、氏名・生年月日が確認できる年齢証明書(住民票記載事項証明書)を事務所に保管しておいてください。そして、高校生アルバイトでも労働契約を結ばなければなりません。
このときポイントは2つ、労働契約は必ず労働者本人と契約すること、そして親権者や未成年後見人(以下:親権者等)の方の同意を得ることです。高校生だからといって、親権者等が未成年者に代わって契約することは認められていませんし、親権者等が代わりに給料を受け取ることもできません。
ただし、契約内容が未成年労働者にとって不利であると認められた場合、親権者等または行政官庁は将来に向かって労働契約を解除することができます。こちらは未成年者の将来を保護する、という観点から定められています。一人の労働者として扱われつつも、未成年として保護されるべき部分は保護されている、ということを覚えておきましょう。
満18歳に満たないもの(以下:年少者)は、法定労働時間が非常に厳しく適用されます。まず時間外労働、休日労働、22時から5時までの深夜労働は一切の禁止です。ただし、休日といっても土日に働かせてはいけないということでなく、労働基準法で定める法定休日に労働させてはいけない、ということになります。
また、変形労働時間制の適用は原則としてできないことになっているのですが、1箇月単位・1年単位の変形労働時間制で、1日8時間・1週間48時間を超えないという条件を満たしていれば、変形労働時間制を適用させることは可能です。
そして業務内容についても制限があり、年少者には危険有害業務と見なされる作業をさせることは禁止されています。危険有害業務の例としては、30kg以上の重量物の取り扱い、堕落の恐れのある高所(およそ5m以上が基準)での作業など。非常災害時といった例外を除き、安全が保証されていないなかで作業させてはいけません。
このSNS全盛の時代、年少者に対して不当な扱いをしてしまうと、あっという間にその事実が拡散され、世界中にその行為が知れ渡ってしまうこととなります。そうなると「ブラックバイト」と世間から認識され、信用も一気に地に落ちてまともに事業ができない、などということも、あり得ない話ではないのです。
人手が足りないからといって一方的なシフト変更をしたり、試験期間中にも休ませずにシフトを入れたり、さらには代わりが見つからない限り休ませないなど、こういったトラブルは珍しい話ではありません。
年少者も一人の労働者であり、正社員と同様に法律で保護されており、それを破るのはれっきとした違反行為です。特に気をつけるべきポイントを次のようにまとめてみました。
高校生アルバイトでも社会保険や税金と無縁ではありません。社会保険でいえば、特に覚えておくべきなのは労災保険です。高校生アルバイトでも業務中や通勤中にケガをした場合は労災保険が適用されます。
また、税金では所得税が高校生アルバイトにも大きく関係します。アルバイトの収入も「給与所得」に該当するため、源泉徴収の対象となるのです。もし、給与からあらかじめ源泉徴収分を差し引いているのであれば、確定申告をすることで還付される可能性もあるので、周知しておきましょう。
それ以外の保険も適用されますが、労働時間などに条件があります。たとえば、雇用保険は昼間学生には適用されませんが、夜間学生の場合は週所定労働時間20時間以上、かつ31日以上雇用の見込みがある場合は適用となります。
健康保険・厚生年金についても、1日または1週間の所定労働時間、および1箇月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している通常の就労者の3/4以上にあたるのであれば、アルバイトでも適用されるのです。
高校生アルバイトといえ、やはり一人の労働者として扱わなければなりません。たしかに、未成年として保護されている部分はありますが、正社員と同等に扱わなければならないと法律で定められていることも多く、安易に軽率な扱いをすると違法になってしまうこともあります。
高校生アルバイトを含む、全従業員に真摯な対応が求められている現代。お互いに気持ちよく働くためにも、こういったルールはしっかりと確認しておきましょう。
大学卒業後、地方銀行に勤務。融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得し、退職後にかじ社会保険労務士事務所として独立。
詳しいプロフィールはこちら