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アルバイト採用時は雇用契約書や労働条件通知書が必要?記載事項などを解説

アルバイト採用時は雇用契約書や労働条件通知書が必要?記載事項などを解説

監修者:労務SEARCH 編集部
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この記事でわかること・結論

  • 雇用契約書は雇用関係についてまとめた誓約書のこと
  • 法律で作成義務は定められていないため、アルバイトなどを雇用する時は書面でなく口頭で済ませている企業もある
  • しかし労働条件通知書などと合わせてアルバイトなどの雇用時でも雇用契約書を作成することが理想

アルバイトやパートタイムなどの非正規雇用労働者と労働契約を交わす際は、労働条件通知書だけではなく書面の雇用契約書にて合意をいただくのが理想です。

労働基準法では書面での労働条件明示義務がありますが、雇用契約自体は民法上口頭でも特に問題はありません。しかし労働条件通知書と同様に、後々のトラブルを未然に防ぐために雇用契約書を取り交わすことがおすすめでしょう。

本記事ではアルバイトやパートタイムにおける雇用契約書について必要な理由や、労働条件通知書との違いおよび記載事項などを解説します。

アルバイト採用時でも雇用契約書は必要?

アルバイト採用時でも雇用契約書は必要?

雇用契約書とは雇用主である企業と被雇用者である労働者の間で取り交わす誓約書のことを言います。主に労働条件などについて労使双方が合意することが目的とされています。

雇用契約は、基本賃金や昇給、就業場所や労働時間および業務内容や退職などの労働条件についての重要事項をまとめて雇用契約書として書面化したのち、企業側と労働者側がお互いに署名押印(または記名押印)をして締結をします。

POINT
雇用契約書の作成は義務ではない

雇用契約は民法上で、当該者同志での意思合致のみで制約するような諾成契約(だくせいけいやく)とされているため実は口頭のみでも成立します。つまり、雇用契約書として必ずしも書面で取り交わす必要もないのです。

労働契約法でも以下のように明記されており、書面での義務はありません。


労働契約法第6条

労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。


正社員の場合は雇用契約書を交付する企業がほとんどですが、特にパートタイムやアルバイトなどの非正規雇用労働者を雇用する際は、雇用契約書を書面で取り交わさないという企業も見受けられます。

雇用契約書はアルバイトやパートタイム採用時でも必要?

雇用契約書は作成義務がありませんが、アルバイトやパートタイム採用時でも雇用契約書を書面にて取り交わすことが望ましいです。

理由は雇用契約書を交付せずに口頭での雇用契約である場合、万が一あとからトラブルになった際に事実確認として照らし合わせるものがないからです。場合によっては企業側が不利になるケースもあるでしょう。

認識の違いによる訴訟なども可能性としてあり得る

実際の労働環境などに食い違いなどがあった際、万が一訴訟などに発展したのであれば雇用契約書が交付されていないと企業が不利になります。

口頭での雇用契約についても「聞いていない」と労働者が言ってしまえばそれまでです。そのためにも雇用契約書の作成はしておくと安心です。ここからは雇用契約書と並行して作成される『労働条件通知書』について少し解説します。

雇用契約書と労働条件通知書の違い

労働条件通知書(雇入れ通知書とも呼ばれます)とは、使用者が労働者に対して明示する必要がある労働条件をまとめた書面のことを指します。雇用契約とは別で、こちらは労働基準法第15条にて書面での明示義務が定められています。

つまり労働者を雇用するときに雇用契約書の交付義務はありませんが、労働条件通知書については必ず書面で交付する必要があるということです。この労働条件明示を怠る場合は、30万円以下の罰金が科される可能性があります。


労働基準法第15条(労働条件の明示)

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない(以下略)


上記はすべての労働者に対しておこなわなければならないため、労働条件通知書はアルバイトやパートタイムの労働者を雇用する際でも必ず交付します。

▼労働条件通知書テンプレート

労働条件通知書

労働条件通知書のダウンロードはこちら>>

違いは労使双方の合意があるか

一見、労働条件通知書があれば雇用契約書は不要ではないかとも感じますがここには大きな違いがあります。それは「労使双方の合意の有無」です。

POINT
労働条件通知所は企業から労働者への一方的な書面

実は労働条件通知書は使用者から労働者へ明示するだけであって、そこに労働者の合意を得ているわけではありません。その点、雇用契約書は合意のうえ署名押印をするため、トラブル時の主張や判断材料としても有効的に使えます。

会社としての存続にも影響するため、リスクヘッジとしてもアルバイトやパートタイムなどの非正規雇用を採用するときでも雇用契約書を作成しておきましょう。

雇用契約書と労働条件通知書は兼ねることが可能

雇用契約書と労働条件通知書は似ていますが、義務の有無や合意の有無など異なる書面であることがわかりました。

ですが昨今では、書面作成コストの削減および労働者とのスムーズな取り交わし実現のため、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねた「労働条件通知書兼雇用契約書」というものを採用している企業も多く見られます。

POINT
2つの書面は役割や記載事項に共通しているものがある

雇用契約書と労働条件通知書ははっきりと異なる書面ではありますが「労働者に対して雇用関係や労働条件を明確する」という役割は共通しています。また後述していますが記載事項も共通するものが多いため兼用書類として「労働条件通知書兼雇用契約書」でまとめることが可能です。

また、作成した労働条件通知書兼雇用契約書には署名欄を設けることで労働者との合意が取れるため、アルバイトやパートタイムを採用する時でもより一層書面として正式に効果的なものとなるでしょう。

従業員は多くいるような大きな企業であれば、一部作成で済むのは大幅なコストカットになるでしょう。そのうえ書面としての効力もあるため、労働条件通知書兼雇用契約書を作成して取り交わすことはかなりおすすめです。

実際に明示が必要な事項などは、次に解説します。

アルバイト採用時の雇用契約書の記載事項

アルバイト採用時の雇用契約書の記載事項

雇用契約書にはとりわけ決められた記載事項やルールはなく、企業がWebなどにあるテンプレートを使用しているケースが多いです。対して、労働条件通知書は法律で決まっているため、雇用契約書と兼ねて利用する場合は必ず記載しなければならない明示事項を確認しておきましょう。

ここでは雇用契約書や労働条件通知書の記載事項について、多くの企業が記載している事項および労働条件明示の事項をそれぞれ解説します。

雇用契約書の記載事項

雇用契約書はルールなど特にありませんが、アルバイトやパートタイムを雇用する多くの企業では以下のような項目を記載しています。

雇用契約書の記載事項例
  • 雇用形態や雇用期間
  • 就業場所や就業時間
  • 休憩時間および休日
  • 賃金や支払い日
  • 昇給や賞与
  • 退職金
  • 署名欄

正社員などとの雇用契約で使用する書面と、アルバイトやパートタイム用で使う書面を分けている会社が多いです。雇用契約書のテンプレートを公表しているWebサイトも豊富にあるため、記載事項だけでも参考にしてみましょう。

労働条件通知書の記載事項

労働条件通知書には必ず記載しなければならない「絶対的明示事項」があります。雇用契約書と兼用でまとめる際は以下の項目を必ず記載しましょう。

労働条件通知書の絶対的明示事項
  • 労働契約期間
  • 就業場所や業務内容
  • 始業時刻と終業時刻および所定労働時間を超える労働の有無
  • 休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
  • 賃金の決定と計算および支払方法、賃金の締切日と支払日
  • 昇給に関する事項
  • 退職と解雇に関する事項

また、上記に加えてアルバイトやパートタイムの場合は以下項目についての記載義務がパートタイム労働法にて定められています。

短時間労働者などに明示義務のある事項
  • 有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項
  • 昇給、退職手当、賞与の有無
  • 雇用管理の改善など相談窓口に関する事項

パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)にて定められています。また、労働条件明示の絶対的明示事項は2024年4月1日の法改正により、新たに4項目が追加されます。

アルバイト採用時の雇用契約書に関するよくある質問

アルバイト採用時の雇用契約書に関するよくある質問

アルバイトの採用時でも雇用契約書は必要ですか?
雇用契約書は作成の義務がありません。雇用契約は民法上で口頭でも成立するようなものとして扱われています。ですが口頭のみである場合は、雇用契約について労働者との合意が取れていない状態のまま働いてもらうことになるため、万が一なにかトラブルがあった際には雇用契約書が無いことで企業が不利になってしまうこともあります。
雇用契約書と労働条件通知書の違いは?
主な違いは「作成義務の有無」と「合意の有無」です。雇用契約書は労使双方の合意のうえ取り交わしますが義務ではありません。対して労働条件通知書は企業が必ず交付しなければならないものですが、一方的な明示に過ぎず労働者からの合意は得られません。
アルバイトの採用時に雇用契約書を作成する場合は?
雇用契約書は労働条件通知書と合併して作成することが可能です。法律で定められている明示事項をよく確認して作成しましょう。2つの書面を兼ねて作成することによって、作成コストの削減および書面としての効力があるなどのメリットがあります。

まとめ

雇用契約書は労使間での雇用契約内容を明確にする誓約書ですが、企業への作成義務はなく口頭でも問題ありません。実際アルバイトやパートタイムなど、非正規雇用者を雇う際にそうしている企業も多く見受けられます。

しかし、労働環境や雇用関係に対する認識の食い違いなどによってトラブルに発展した場合は、雇用契約書があるとないとでは大きく差があります。口頭で済ませていると企業が不利になることも考えられます。

そのためアルバイトやパートタイムなどの採用時でも雇用契約書の作成はしておくと良いでしょう。書面での交付義務がある労働条件通知書と兼ねて一部で作成することも可能であるため、本記事を参考にぜひ作成コストの削減を検討してみてください。

監修者労務SEARCH 編集部

労務・人事・総務管理者の課題を解決するメディア「労務SEARCH(サーチ)」の編集部です。労働保険(労災保険/雇用保険)、社会保険、人事労務管理、マイナンバーなど皆様へ価値ある情報を発信続けてまいります。
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